診療所開業 ~ 診療科別開業成功のポイント ~

◆耳鼻咽喉科 編

 

子どもと高齢者がターゲットの中心となる従来からの耳鼻咽喉科に加え、対象者がまったく異なる「めまい」や「声(声帯)」に専門性を発揮する診療所が都市部のターミナル駅周辺を中心に増えつつあります。前者の場合も、内視鏡検査を実施する先生が増えましたが、それによって診療単価も大幅に上昇します。

 

≪ポイント≫

・医療費の一部公費負担により、子どもの受診のハードルが下がってきている

・一般的な耳鼻咽喉科の場合、駐車スペースの確保やスマホでの簡単な診療予約、丁寧な接遇等、安心して受信できる小児科と同様のサービスが求められる

・事業計画(収入予測)では、季節変動係数と内視鏡導入の有無が大きく影響

 

 

③職員配置・採用計画

 

 耳鼻咽喉科の職員配置、採用計画については、受付は常時2名で問題なく、検討すべきは看護師を採用するか無資格の診療補助者で運営するかどうかということになります。

 耳鼻咽喉科の場合、採血や注射など主に看護師が担う業務が少なく、看護師を配置しない先生も数多くいらっしゃいます。これには、看護師の採用自体が難しいこともありますが、資格や技術を活かした業務が少ないため、入職しても定着しないといった点もあげられます。もし、看護師がどうしても必要ということであれば、病院勤務中に、開業後に採用したい看護師の目途を立てておくことも検討手段の一つです。

 受付スタッフは、常時2名体制を確保すれば、患者さん対応や電話応対は十分です。医療機関での勤務経験者を確保したい場合は、看護師と同様に勤務先病院で医療事務能力、接遇能力に長けた人への打診も要検討です。また、眼科などと同様、耳鼻咽喉科も看護師を採用しない場合は、受付スタッフが聴力検査や診察補助業務も兼務し開業後の診療所の運営をスムーズに進めるための体制づくりが有効となります。採用面接において、そうした検査業務を行うことに対して抵抗がないかを確認しておくことが必要です。現実的には、受付スタッフ兼診療助手スタッフで診療所を運営しているケースは多く、受付と診療助手の兼務は、ご家族の都合などスタッフに急な休みが必要になった場合に、臨機応変に代替が効くというメリットがあります。

 

 

 また、耳鼻咽喉科の場合は、診療単価が低い分だけ、多くの患者数を獲得する傾向にあるため、医療クラークなど電子カルテの入力作業を専門に行うスタッフを配置するケースも弊社の開業支援事例で見受けられるようになっています。つまり、先生の言葉をその場で的確に入力する必要があり、専門用語への理解とPCの入力作業に高いスキルを発揮する人材が求められることになります。

 看護師、受付、診療助手に共通するものとしては、耳鼻咽喉科も小児科同様、子どもの受診が多く、診察でぐずついたり、診察椅子で落ち着けないケースも多いので、診療助手スタッフは子育て経験があり、しっかり子どもをケアできる年配のスタッフが望まれます。また、診療に使う備品類の準備や洗浄作業の頻度も高いことから、家事を苦にしないスタッフが力を発揮する傾向があります。

 そのほか、小児科同様、診療の窓口負担を公費で担う地域が多くなってきており、気楽に受診する親御さんが多くなってきています。受診機会が多い分、求められる接遇サービス水準が総じて高く、接遇能力の高いスタッフの確保や育成が望まれます。

 

④プロモーション戦略

 耳鼻咽喉科で患者層の中心に子どもを置く場合は、小児科のプロモーション戦略と同様に、診療所を選択するご両親に向け、いかに安心してお子さんを受診させられるかを正しく伝えることがポイントになります。

(1)開院前のプロモーション

 診療所開業を地域に知っていただくための一番の手段は、住民の皆様にお越しいただき、診療所の雰囲気や院長、スタッフの人柄などを直接感じていただくことです。その場での好印象から、すでに地域への口コミがスタートします。そのお披露目の機会となるのが、開業直前の週末、原則的に土曜日・日曜日の2日間を利用して実施する内覧会です。

 開業直前の内覧会の実施は、多くの診療科で浸透していますが、内覧会の告知のために、一次診療圏(徒歩通院圏内、半径約500m)には、診療所のリーフレットのポスティングを、二次診療圏(開業エリアの競合環境や人口により変動。概ね半径1kmから2km圏内)には新聞折込みチラシによる告知を行うことが一般的です。

 子どもを意識した内覧会では、子どもたちが喜ぶノベルティグッズを準備したり、子どもと同じ目線の高さを意識し笑顔で接するなど、医療機関に対する潜在的な苦手意識を軽減させる工夫が有効と思われます。

 めまいや難聴、声帯など、やや専門的な診療内容に力を入れる場合は、リーフレットや新聞折込みチラシに高い専門性や先生の強みを的確にアピールできる内容になっているかを広告制作会社任せにすることなく、細かく擦り合わせすることが大切です。

 医療機関には広告規制があることから、開業の告知は最大の広告機会といえます。認知度を一気に高めるためにも、開業時に積極的なアピールをしたいところです。

 

 

(2)開業後のプロモーション

 開業後については、自院ホームページでの情報配信が主なプロモーション活動となります。耳鼻咽喉科の場合、予約システムを導入している診療所が大半になってきていますが、付き添い者の都合を優先した待ち時間の少ない受診は大きな差別化要素になります。予約システムの運用のあり方を研究し、スマートフォンに最適化した簡単な操作手順で予約が取れるように工夫することが重要です。

 また最大の広告は、地域の口コミであることから、1人ひとりの患者さんに対して満足度を高める対応が地味ながらもっとも効果的といえます。効果測定として、初診時の問診表に、「当院受診のきっかけ」を質問項目として入れておき、「家族や知人の紹介(口コミ)」という来院動機の開院後の増減を定期的にチェックすることが重要になります。患者満足度を上げて口コミの来院を増やすための施策としては、地道なことではありますが、診療のちょっとした不安を丁寧に取り除くことです。子どもと付き添い者に対して、検査結果や治療方針についての分かりやすく丁寧な説明が必要で、服薬指導についても、処方に対する先生の考え方や、どの段階で服薬を止めるのかなどの説明が、治療への理解を深め、先生への信頼感へと導きます。

 ご家族は、インターネットで子どもの症状に的確に対応してくれそうな診療所を探す傾向があるため、インターネット検索で自院ホームページが上位に露出できるような対策も効果的です。私どもの開業支援事例においても、開院当初からインターネットの専門広告代理店に依頼して「Google」や「Yahoo」検索エンジンに対する「リスティング広告」を実施。来院につながると思われるキーワードを数百個設定し、そのキーワードで検索した方に自院のホームページを見てもらえる動線をネット上に作ることで、一定の成果を上げています。

 最近では、先生自身がホームページの更新を簡単にできるシステムを特徴にした商品もあり、私どもが開業をご支援した先生のなかにも、定期的にブログを更新しておられる方がいらっしゃいます。また、自院のホームページ管理画面をこまめにチェックされ、コンテンツ別の閲覧数の変化などから、掲載情報の深堀りなどコンテンツの充実を図っておられる先生もいらっしゃいますが、「Google」などでの検索順位を上位に押し上げることは、広報活動としてのホームページ運用の費用対効果を高める意味においてもとても有効な取り組みです。

 そのほか、「めまい」や「難聴」、「声帯」など特殊な治療内容に力を入れる場合の最大の広告は、患者さんの口コミであることから、1人ひとりの患者さんに対して満足度を高める対応が地味ながらもっとも効果的といえます。効果測定として、初診時の問診表に、「当院受診のきっかけ」を質問項目として入れておき、「家族や知人の紹介(口コミ)」という来院動機の開院後の増減を定期的にチェックすることが重要になります。

 

~株式会社日本医業総研 発行 診療所開業 ここで差がつく診療科別開業成功のポイント より~

 

★次回は 泌尿器科の経営戦略・立地選定 を掲載予定です

 

<過去のブログ>
消化器内科 ①経営戦略・立地選定   2023/6月更新分

消化器内科 ②事業計画        2023/7月更新分

消化器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2023/8月更新分

循環器内科 ①経営戦略・立地選定   2023/9月更新分

循環器内科 ②事業計画        2023/10月更新分

循環器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2023/11月更新分

呼吸器内科 ①経営戦略・立地選定   2023/12月更新分

呼吸器内科 ②事業計画        2024/1月更新分

呼吸器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/2月更新分

糖尿病内科 ①経営戦略・立地選定   2024/3月更新分

糖尿病内科 ②事業計画        2024/4月更新分

糖尿病内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/5月更新分

小児科   ①経営戦略・立地選定   2024/6月更新分

小児科   ②事業計画        2024/7月更新分

小児科   ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/8月更新分

整形外科  ①経営戦略・立地選定   2024/9月更新分 

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整形外科  ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/11月更新分

皮膚科   ①経営戦略・立地選定   2024/12月更新分

皮膚科   ②事業計画        2025/1月更新分

皮膚科   ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2025/2月更新分

眼科    ①経営戦略・立地選定   2025/3月更新分

眼科    ②事業計画        2025/4月更新分

眼科    ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2025/5月更新分

心療内科  ①経営戦略・立地選定   2025/6月更新分

心療内科  ②事業計画        2025/7月更新分

心療内科  ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2025/8月更新分

耳鼻咽喉科 ①経営戦略・立地選定   2025/9月更新分

耳鼻咽喉科 ②事業計画        2025/10月更新分

 


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