診療所開業 ~ 診療科別開業成功のポイント ~

◆心療内科 編

 

他科以上に、「信頼できる先生に頼る」心理が特に強いのが心療内科の患者さんです。抑うつや気分障害などで通院されている患者さんでも、突発的な増悪症状を訴えることが少なくありませんので利便性高い立地が優位といえます。精神療法やカウンセリングに力を入れる場合、先生それぞれの治療メソッドを最大化できる空間演出なども有効です。待合室からすでに治療が始まっているとされる心療内科の所以でもあります。

 

≪ポイント≫

・競合過多な診療科だけに、診療に対する考え方や治療方針、特徴(薬物処方、精神療法)をできるだけ多く広報し、ネット上のマッチングを図る

・保険診療では電子カルテ以外の医療機器を用いず、広い面積も必要としないことから初期の設備投資は低く抑えられるが、内装費はやや多めの予算を計上

・ターミナル駅周辺での開業が有利だが、大通りに面したビルの1Fなどの目立つ場所である必要はない

 

 

③職員配置・採用計画

 

 

 心療内科の職員配置、採用計画については、診療所の事業コンセプトや提供するサービスによって、専門職の採用の方針が決まってきます。
 事業コンセプトの中で、カウンセリングやリワークプログラム、家族支援などを強みとする場合は、臨床心理士や精神保健福祉士の採用が有効です。また、多機能化を目指しデイケアも行う場合はOTが運営の中心を担うことになります。
 臨床心理士はカウンセリングの実施日に合わせて非常勤で勤務とするケースが多くなりますが、臨床心理士の実施する精神療法を患者さんが受け入れられないことも想定されますので、なるべく一般公募ではなく先生の診療方針を理解している関係者や、人づての紹介による採用が望まれます。
 精神保健福祉士は、一般公募でも比較的応募数が見込まれる職種ですが、心療内科診療所においては、資格を活かした業務を行える範囲があまり広くなく、受付医療事務と兼務する場合が多数となります。先生が精神保健福祉士の業務に何を期待するかが明確でないと、離職を招くことになりますので注意が必要です。
 受付スタッフは、常時1~2名体制で十分な運営が可能です。精神疾患患者さんのなかには、他者とのコミュニケーションが苦手な方や、ごくまれに急性増悪を引き起こすケースもありますので、先生から開業前にスタッフへの患者さん対応のレクチャーを実施し、基本ルールとして意思統一を図ることが必要と考えます。同時に、電話での問い合わせや診療予約を受け付けることが多いので、電話応対に長けた人の採用、あるいは院内での教育が望まれます。
 患者さんの全身状態の把握や、治療薬の血中濃度の確認を目的に採血を行う先生もいます。看護師は、精神科診療所内で資格がないとできない仕事がこの採血しかないことから、開院当初は採用せずにスタートすることが一般的です。この場合、採血は先生自らが行うことになりますので、採血が苦手という先生の場合は、曜日と時間を決めて看護師を採用し、その時間帯に血液検査が必要な患者さんに来院いただく方法を取るなどの工夫が必要となります。
 また、心療内科の求人に応募してくるスタッフのなかには、以前自らが心療内科に通院していた人や、家族や友人など身近な人に通院歴のある人がいるといった理由で応募してくる人も少なくありません。そうした人が実務についた際に、実際に来院される患者さんに接し、適材適所として力を発揮できるかには個人差があります。採用にあたっては慎重に検討することが必要です。

 

 

 

④プロモーション戦略

 心療内科は、広域からの集患が必要となりますので、プロモーション戦略はホームページでの情報提供やインターネット機能を最大限に活用した広告が必要となります。

(1)開業前のプロモーション
 他の診療科と異なり、都市部の精神科・心療内科では開院前の内覧会を実施しないことが一般的です。これは、患者さんの受療率が低く、ポスティングや折込みチラシなどの告知広告費に見合った集患が得られないことに合わせ、そもそもメンタル面に不調のある方が、わざわざ内覧会のために外出することが期待できないという考えによるものです。
 心療内科は、完全予約診療体制とすることが多いことから、プロモーション活動は開業を告知するホームページを立ち上げる以外は、予約を受け付ける開業時からスタートするケースが多くみられます。
(2)開業後のプロモーション
 開業後については、自院ホームページでの情報配信が主なプロモーション活動となります。心療内科における弊社の調査では、新患の来院動機の90%以上がインターネット検索によるものとなっています。心療内科のターゲットとなる患者さんやその家族は、インターネットで自身の症状に的確に対応してくれそうな医療機関を探す傾向があるため、インターネット検索で自院ホームページが上位に露出できるような対策が効果的です。私どもの開業支援事例においても、開院当初からインターネットの専門広告代理店に依頼して「Google」や「Yahoo」検索エンジンに対する「リスティング広告」を実施。来院につながると思われる「抑うつ」「気分障害」「適応障害」などの病名検索キーワード、「心が晴れない」「イライラする」「ストレス」といった症状での検索キーワードを数百個設定して自院のホームページへの動線をネット上に作ることで一定の成果を上げています。心療内科の場合、患者さんは自身の辛さを深く理解し、もっとも有効な治療を施してくれる先生を探す傾向が強くありますので、ホームページでは通り一遍の疾患説明ではなく、ブログやコラムなど、先生の診療への考え方や人となりがわかるツールを活用することがより効果的だと思われます。特に、都心部では精神科・心療内科診療所が、同じ駅に複数存在する過密な競争環境にあることから、他院との違い、先生が得意とする治療技術や、カウンセリングなどの提供サービスをアピールすることが、新患獲得のために重要となってきています。
 そのほか、患者さんは当日に急な不調に陥ることがあり、予約だけで診療を埋めてしまったために患者さんが他の診療所に流れてしまうケースがあります。基本的に予約制としても、一定数の当日診察予約枠を残しておくことが望まれます。

 

~株式会社日本医業総研 発行 診療所開業 ここで差がつく診療科別開業成功のポイント より~

 

★次回は 耳鼻咽喉科の経営戦略・立地選定 を掲載予定です

 

<過去のブログ>
消化器内科 ①経営戦略・立地選定   2023/6月更新分

消化器内科 ②事業計画        2023/7月更新分

消化器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2023/8月更新分

循環器内科 ①経営戦略・立地選定   2023/9月更新分

循環器内科 ②事業計画        2023/10月更新分

循環器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2023/11月更新分

呼吸器内科 ①経営戦略・立地選定   2023/12月更新分

呼吸器内科 ②事業計画        2024/1月更新分

呼吸器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/2月更新分

糖尿病内科 ①経営戦略・立地選定   2024/3月更新分

糖尿病内科 ②事業計画        2024/4月更新分

糖尿病内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/5月更新分

小児科   ①経営戦略・立地選定   2024/6月更新分

小児科   ②事業計画        2024/7月更新分

小児科   ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/8月更新分

整形外科  ①経営戦略・立地選定   2024/9月更新分 

整形外科  ②事業計画        2024/10月更新分

整形外科  ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/11月更新分

皮膚科   ①経営戦略・立地選定   2024/12月更新分

皮膚科   ②事業計画        2025/1月更新分

皮膚科   ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2025/2月更新分

眼科    ①経営戦略・立地選定   2025/3月更新分

眼科    ②事業計画        2025/4月更新分

眼科    ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2025/5月更新分

心療内科  ①経営戦略・立地選定   2025/6月更新分

心療内科  ②事業計画        2025/7月更新分

 


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