◆眼科 編
白内障や硝子体の日帰りオペを実施する診療所が増えました。白内障は加齢とともに誰もが罹りうる疾患だけに、受診のハードルが高く、順番待ち期間の長い病院より、身近な診療所で専門治療を受けたいというニーズが高まるのは当然といえます。眼科の開業では、この日帰りオペを実施するか否かで、事業計画・資金計画・人員確保等が大きく変わることになります。高齢患者さんが多いことから、バリアフリーも必須要件となります。
≪ポイント≫
・競合過多な診療科だけに、診療に対する考え方や治療方針、特徴(薬物処方、精神療法)をできるだけ多く広報し、ネット上のマッチングを図る
・保険診療では電子カルテ以外の医療機器を用いず、広い面積も必要としないことから初期の設備投資は低く抑えられるが、内装費はやや多めの予算を計上
・ターミナル駅周辺での開業が有利だが、大通りに面したビルの1Fなどの目立つ場所である必要はない
③職員配置・採用計画
眼科の職員配置、採用計画で検討しなければならないポイントは、日帰り手術を実施するかどうか、実施の開始時期に合わせて、採用スタッフの職種及び人員配置数が変わってくるという点です。
日帰り手術を行わない場合は、開院当初は、受付は常時2名体制、検査担当として、開業当初は週2日程度、曜日を設定して視能訓練士を配置することが安全で、増悪状況に合わせてOMAなどの検査員を配置できれば問題なく運営できます。視能訓練士の採用に関しては、資格保有者自体が少ないため、以前職場をともにしたことのある視能訓練士などへの声掛けや紹介で確保することが考えられます。一般公募する場合は、視能訓練士協会が運営する求人サイトに広告を掲載することが効果的です。
先生が思うような人材が集まらない場合は、開院前の医療機器メーカーによる説明トレーニングで、未経験者を教育することになります。
受付スタッフは、常時2名体制を確保すれば、患者さん対応や電話応対は十分です。医療機関での勤務経験者を1人は確保したい場合は、病院勤務中に、医療事務能力や接遇能力に長けた人がいれば、開業後の採用を打診することも検討手段の一つです。また、眼科の特徴として、受付スタッフが受付業務に専念するというよりは、視力検査や眼圧検査など、検査業務も兼務していただき、開業後の診療所の運営(受付と検査室の人員配置)をスムーズに進めるための体制づくりが有効となりますので、採用面接において、そうした検査業務を行うことに対して抵抗がないかを確認しておくことが大切です。
日帰り手術を行う場合は、看護師の採用が必須条件となります。手術の開始時期、実施曜日、時間帯に合わせて、看護師が都合よく採用できれば良いのですが、診療所の都合に合わせて採用できるわけではありませんし、看護師には眼科特有の検査も対応できるようにスキルを磨いていただく必要がありますので、受付スタッフ同様、採用面接において、そうした検査業務を行うことに対して抵抗がないかを確認しておくことが必要です。看護師採用は、どの診療科でも困難なことから、病院勤務中に、開業後に採用したい看護師の目途を立てておくことも有効な手段となります。
そのほか、眼科の場合も、ターゲットとなる患者さんの年齢層が比較的高いので、どの職種についても年齢に見合うコミュニケーション能力が求められます。
④プロモーション戦略
眼科のプロモーション戦略は、地域の口コミへの積極的な働きかけになります。
(1)開業前のプロモーション
診療所開業を地域に知っていただくための一番の手段は、住民の皆様にお越しいただき、診療所の雰囲気や院長、スタッフの人柄などを直接感じていただくことです。その場での好印象から、すでに地域への口コミがスタートします。そのお披露目の機会となるのが、開業直前の週末、原則的に土曜日・日曜日の2日間を利用して実施する内覧会です。
開業直前の内覧会の実施は、多くの診療科で浸透していますが、内覧会の告知のために、一次診療圏(徒歩通院圏内、半径約500m)には、診療所のリーフレットのポスティングを、二次診療圏(開業エリアの競合環境や人口により変動。概ね半径1kmから2km圏内)には新聞折込みチラシによる告知を行うことが一般的です。
日帰り手術や高度な検査機器などを特徴とする場合は、競合の配置状況を考慮し、バッティングを避け、かつ通院が十分可能なエリアに、相応の予算を確保した上で積極的に広告を展開します。
医療機関には広告規制があることから、開業の告知は最大の広告機会といえます。認知度を一気に高めるためにも、開業時に積極的なアピールをしたいところです。
(2)開業後のプロモーション
眼科診療所における最大の広告は、患者さんの口コミであることから、1人ひとりの患者さんに対して満足度を高める対応が地味ながらもっとも効果的といえます。効果測定として、初診時の問診表に、「当院受診のきっかけ」を質問項目として入れておき、「家族や知人の紹介(口コミ)」という来院動機の開院後の増減を定期的にチェックすることが重要になります。
また、眼科を受診する患者さんは、検査を受ける頻度が高いなどスタッフと接する機会が多く、滞在時間も長くなる傾向があることから、スタッフの接遇能力が、口コミに直結することを意識して、スタッフの育成に力を入れることが診療所のプロモーション活動に特に効果的だと思われます。
日帰り手術を実施している眼科診療所においては、月1回程度の健康教室などの場を設けて情報提供を行い、患者さんの手術への不安を取り除く工夫や、予防医療への取り組みを啓蒙することで、かかりつけ医として気軽に相談を受けられる環境を整え、必要な時期になれば日帰り手術を受けていただける信頼関係を構築することが大切な取り組みとなります。
そのほか、糖尿病内科など、眼科受診の紹介が期待できる連携先診療所などへの祝事や季節の進物も重要な営業活動となります。
~株式会社日本医業総研 発行 診療所開業 ここで差がつく診療科別開業成功のポイント より~
★次回は 心療内科の経営戦略・立地選定 を掲載予定です
<過去のブログ>
消化器内科 ①経営戦略・立地選定 2023/6月更新分
消化器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2023/8月更新分
循環器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2023/11月更新分
呼吸器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/2月更新分
糖尿病内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/5月更新分
小児科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/8月更新分
整形外科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/11月更新分
皮膚科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2025/2月分
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