◆耳鼻咽喉科 編
子どもと高齢者がターゲットの中心となる従来からの耳鼻咽喉科に加え、対象者がまったく異なる「めまい」や「声(声帯)」に専門性を発揮する診療所が都市部のターミナル駅周辺を中心に増えつつあります。前者の場合も、内視鏡検査を実施する先生が増えましたが、それによって診療単価も大幅に上昇します。
≪ポイント≫
・医療費の一部公費負担により、子どもの受診のハードルが下がってきている
・一般的な耳鼻咽喉科の場合、駐車スペースの確保やスマホでの簡単な診療予約、丁寧な接遇等、安心して受信できる小児科と同様のサービスが求められる
・事業計画(収入予測)では、季節変動係数と内視鏡導入の有無が大きく影響
②事業計画
耳鼻咽喉科の事業計画のポイントは、収入の季節変動をどう開業時期と事業計画に反映させるかという点と、内視鏡を導入するかどうかという2点です。
私どもの開業支援事例から、開業後の経営支援を通じて耳鼻咽喉科の収入の季節変動に注視すると、花粉症の流行で繁忙する2~3月を100とした場合に、患者数がもっとも減少する8月は約58と非常に差が大きいことから、開業月の設定によって、立ち上がりの収入計画が大きく変わってくることになります。
一般的に、診療所の新規開業では地域の認知度が向上するのと比例して、ほぼ右肩上がりに患者数が積み上がっていきますが、耳鼻咽喉科のように季節変動が大きい診療科の場合は、季節変動係数を考慮した収入予測(患者数予測)を行わなければなりません。1年間のなかで、もっとも開業が多い5月は、花粉症が落ち着き始め、夏季の患者数の落ち込みから診療収入が上がらず、最悪の場合運転資金が不足する事態を招きかねません。そのため、可能な限り、開業月は盛況が見込まれる花粉症時期に照準を合わせたいものです。
また、内視鏡の導入で診療単価に大きな差が出てくるのも耳鼻咽喉科の特徴です。最近では、内視鏡検査を実施される先生が多くなってきましたので、一昔前の耳鼻咽喉科のように1回当たりの診療単価が低く、沢山の患者数を診なければならないということはなくなってきました。私どもの開業支援事例では、内視鏡を導入されている耳鼻咽喉科の1回当たりの診療単価は6,000円から7,000円、導入されていない耳鼻咽喉科の1回当たりの診療単価は3,000円から5,000円となっていますので、事業計画上の診療単価の設定の参考にしていただければと思います。
人員配置は、受付は常時2名、診療助手を常時1~2名の体制での人件費計画で問題ありません。看護師の配置は先生の診療方針によりますので、看護師を配置する場合は高めの人件費を考慮する必要があります。
経費内容については、経営戦略、立地選定で述べたように、小児科と同様インターネットで来院予約(順番、診療時間)を取ることが一般的になっているので、ネットでの広告予算を多めに確保する必要があります。特に開院当初は積極的に新患数を確保したいことから、インターネット広告に力点を置く場合、広告予算の上限を設定しその範囲内でメリハリの効いた配分を心がけてください。
資金計画(開業時の貸借対照表を参照)に関しては、医療機器については、レントゲンの設置に加え、内視鏡やCTを設置するケースでは画像ファイリングシステムの導入も必要になってきます。
また、運転資金をどれだけ確保するかという点については、地域ニーズに対して耳鼻咽喉科診療所が少ない場合は、比較的早期に事業が立ち上がるケースもありますが、最低でも開業後1年間分の月次の収支計画を立てて、損益分岐点を超えるまで事業資金が枯渇しないように、慎重に開業準備を進めていただくことが重要です。
~株式会社日本医業総研 発行 診療所開業 ここで差がつく診療科別開業成功のポイント より~
★次回は 耳鼻咽喉科の職員配置・採用計画 を掲載予定です
<過去のブログ>
消化器内科 ①経営戦略・立地選定 2023/6月更新分
消化器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2023/8月更新分
循環器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2023/11月更新分
呼吸器内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/2月更新分
糖尿病内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/5月更新分
小児科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/8月更新分
整形外科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2024/11月更新分
皮膚科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2025/2月更新分
眼科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2025/5月更新分
心療内科 ③職員配置・採用計画 ④プロモーション戦略 2025/8月更新分
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