医療事務の基礎知識(12)

皆さん こんにちは。今回も、引き続き「処置料」について解説します。

処置の項目は多いので、今回は主に整形外科で算定される処置料の消炎鎮痛等処置と、それに関連するリハビリテーション料などについてです。

 

整形外科へ行くとリハビリ室があり、たくさんの器械が並んでいるのを目にすることがあると思います。そこでは痛みを和らげるための治療や、機能回復を目指している患者さんへの訓練が行われます。治療や訓練を続けることで、段々と痛みが和らいだり、痛みを感じないように日常生活が送れるようになるそうです。では、そのときの点数算定について書いていきます。

 

■消炎鎮痛等処置

消炎鎮痛等処置とは、その名の通り炎症を抑えて痛みを和らげるという処置になりますが、どのようにして炎症を抑え、痛みを和らげるかという方法は3通りあります。1つは手技による療法で、マッサージなど施術者の手によって炎症を抑え、痛みを和らげる方法です。もう1つは器具等による療法で、赤外線治療や超音波療法などの器具を使って炎症を抑え、痛みを和らげます。そして湿布を貼ることで炎症を抑え、痛みを和らげることもあります。

点数表では、以下のように記載されています。

 

J119 消炎鎮痛等処置(1日につき) 35点

 

  1.   マッサージ等の手技による療法 … あんま、マッサージ及び指圧による療法をいう
  2.   器具等による療法 … 電気療法、赤外線治療、熱気浴、ホットパック、超音波療法、マイクロレーダー等による療法をいう  
  3.   湿布処置(診療所の外来に限る) … 半肢の大部又は頭部、頸部及び顔面の大部以上にわたる範囲のものについて算定するものであり、それ以外の狭い範囲の湿布処置は、第1章基本診療料に含まれるものであり、湿布処置を算定することはできない。

 

この湿布処置の範囲が分かりにくいかもしれませんね。例えば腕の場合だと、半肢とは肩から肘まで、または肘から手首までのように、片側の腕(一肢)の半分(半肢)のことを指しますので、その大部分または同等の広さに湿布を貼った場合ということになります。これは患者さんが大人か子どもかによってもかわってきますが、目安の1つとして、通常の白い湿布(10㎝×14㎝)1~2枚以上でないと認められないということです。

 

また、湿布処置の通知には、「患者自ら又は家人等に行わせて差し支えないと認められる湿布については、あらかじめ予見される当該湿布薬の必要量を外用薬として投与するものとし、湿布処置は算定できない。」とありますのでご留意ください。

 

 

 

■薬剤料

処置に使用した湿布薬は、15円を超えて2点以上になる場合、処置薬剤として算定できます。処置料が算定できない場合でも、薬剤料のみ算定することは可能です。

 

■算定のルールです

「消炎鎮痛等処置は、疾病、部位又は部位数にかかわらず1日につき所定点数により算定する。」とのルールがあります。この「1日につき」と記載されている処置は、1日に何回おこなっても、算定できる点数は1日に1回だけという決まりです。ですからこの場合も、同じ部位にマッサージと電気療法を両方行ったり、異なる部位にそれぞれ処置を行ったとしても点数は1日に35点の算定になります。

 

■介達牽引

リハビリ室にある器具の中に、首や腰を引っ張る牽引療法器があります。これは単独で項目が設けられていますが、点数はこちらも1日につき35点です。                                             

J118 介達牽引(1日につき) 35点

 

■リハビリテーション料

リハビリテーションとは機能回復訓練です。理学療法士(PT)や作業療法士(OT)が、患者に対して個別で20分以上の訓練を行った場合に算定できます。20分につき1単位として点数が定められていますので、20分行うと1単位、40分行うと2単位算定できますが、20分に満たない時間は算定できないとされていますので30分だった場合は1単位になります。

 

リハビリテーション料には以下の疾患別リハビリテーション料という5つの項目があります。

 

・H000 心大血管疾患リハビリテーション料

・H001 脳血管疾患等リハビリテーション料

・H001‐2 廃用症候群リハビリテーション料

・H002 運動器リハビリテーション料

・H003 呼吸器リハビリテーション料

 

それぞれに対象疾患名や算定可能な期間など、算定できる要件が定められていますが、これらについてはまた改めて解説したいと思います。

 

■同日は併用算定不可

同日に消炎鎮痛等処置と介達牽引、それ以外にも矯正固定又は変形機械矯正術に腰部又は胸部固定帯固定、低出力レーザー照射又は肛門処置を併せて行った場合は、主たるものいずれかの所定点数を1つだけ算定するという決まりになっています。ここにリハビリテーション料も含まれますので、リハビリテーションを行った場合には(点数が一番高いので)リハビリテーション料だけの算定になります。

(簡易コルセット代にあたる J200 腰部、胸部又は頸部固定帯加算 170点は別に算定できます)

 

 

■慢性疼痛疾患管理料

慢性疼痛疾患管理料は、診療所の外来でのみ算定できる項目です。変形性膝関節症、筋筋膜性腰痛症等の疼痛を主病とし、疼痛による運動制限を改善する等の目的でマッサージ又は器具等による療法、リハビリテーションなどを行った場合に月1回に限り130点を算定することができます。ただし、この管理料の中には介達牽引、消炎鎮痛等処置、腰部又は胸部固定帯固定、リハビリテーション料などの所定点数が含まれてしまいますので、慢性疼痛疾患管理料を算定した同じ月にはこれらの点数は算定できません。(処置に係る薬剤料は、別途算定できます)

 

日々、処置やリハビリに通って来られた場合、毎回処置料などを算定するか、または慢性疼痛疾患管理料を1回だけ算定するかは、患者ごとに決めることができますし、一人の患者でも月ごとに変更することも可能です。管理料を算定する場合は、慢性疼痛に対して療養上必要な指導を行うことも必要であり、カルテへの記載も大切です。

 

■損をしないように要注意

慢性疼痛疾患管理料を算定する場合、同一月内において、消炎鎮痛等処置やリハビリテーション料以外に、外来管理加算も併せて算定できないことになっています。しかし、月の途中で慢性疼痛疾患管理料を算定する対象疾患が発症し、本管理料を算定した場合には、算定初月(慢性疼痛疾患管理料を初めて算定する月)に限って、本管理料を算定する以前に算定済みの外来管理加算、または消炎鎮痛等処置やリハビリテーション料はそのまま併せて算定できることになっていますので、損をしないように確認してください。ただし、同一患者に対して一度でも慢性疼痛疾患管理料を算定したことがある場合はこの限りではないのでご留意ください。

 

■減点されないように注意して

慢性疼痛疾患管理料が算定できる傷病名はたくさんありますが、長期間かけて悪くなったような疼痛を伴う疾患に対して、長期的にマッサージ又は器具等による療法などが必要な場合が対象になりますので、打撲や捻挫などの外傷性疾患や、急性腰痛症では算定できません。また、下肢痛や筋肉痛なども認められませんのでご留意ください。

 

■まとめ

診療所の外来で行われるような処置について、それぞれの算定に関連することや注意点などを3回にわたって書いてみました。実際に点数表を見て解釈することはなかなか難しいと思いますので、これでポイントだけでも押さえてください。以前にも6回目にギプス料8回目には関節腔内注射といった処置の項目について書いていますので、良かったら見てください。お役に立てれば幸いです。

 


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