医療事務の基礎知識(22)

皆さんこんにちは。今回は、在宅療養指導管理料の概要と、在宅療養指導管理料のうちの1つである在宅自己注射指導管理料について解説いたします。

 

■在宅療養指導管理料

まずは、在宅療養指導管理料についてです。在宅療養指導管理料は、療養中の患者が在宅で自らまたは家族等によって特定の医療行為を行いながら日常生活を送られている方々に、必要な指導や管理を行った場合に算定できる項目です。医療行為の内容により複数の管理料がありますが、算定はどれでも暦月1回であり、複数の医療行為を行っている患者で、2つ以上の管理料が算定できる要件を満たしている場合には、主たる管理料(点数が高い管理料)を1つだけ算定する決まりになっています。

 

在宅療養指導管理料は、入院中の患者には算定できませんが、入院中の患者でも退院の日に行った指導や管理については算定可能です。これは、退院後に在宅等で必要となる医療行為に対しての指導や管理の費用として算定が認められています。

 

同一患者に、同じ管理料を同一月に複数の医療機関で算定することは原則認められていませんが、次の場合はそれぞれの医療機関で算定することができます。

 

① 在宅自己注射指導管理料は、対象となる疾患名が異なる場合にはそれぞれの医療機関で算定することができます。

例えば、糖尿病でインスリン製剤に対しての在宅自己注射指導管理料と、リウマチでエタネルセプト製剤に対しての在宅自己注射指導管理料は、それぞれの医療機関で算定することが認められています。ただし、この場合にあっては、相互の保険医療機関において処方されている注射薬等を把握することも定められています。

 

② 外来診療のクリニックに患者が月の途中で転院してきた場合、

A.前医でも外来にて通院していた場合と、

B.入院していて退院後に転院してきた場合とでは、算定が異なります。

例えば、どちらも同一月に前医で在宅自己注射指導管理料を算定済みとします。(Aは外来にて、Bは退院時に)

このとき転院先のクリニックでも同一月に在宅自己注射指導管理料が算定できるのはBの場合であり、Aの場合には算定できません。 Bの場合は、診療報酬明細書の摘要欄に当該算定理由を記載することとなっています。このため、在宅療養指導管理料を算定する場合は、患者に対して当該月の入院の有無を確認することも大切です。  

                                                              

 

■在宅自己注射の算定時に気をつけて!

糖尿病の患者さんにインスリン製剤や、リウマチの患者さんにエタネルセプト製剤、骨粗鬆症の患者さんに骨粗鬆症治療薬など、在宅で自己注射を行う患者さんは多くいらっしゃると思います。その算定時に気をつけるポイントは、「在宅自己注射の導入前に、入院又は2回以上の外来、往診若しくは訪問診療により、医師による十分な教育期間をとり、十分な指導を行った場合に限り算定する。(ただし、アドレナリン製剤については、この限りではない)」とありますので、外来では自己注射を導入する前に2回以上の診察が行われていないと算定できないということになります。従って初診の日に算定することは基本的にはできませんし、診療実日数が1日では算定不可となり減点されてしまいます。

実際には、医師の判断にて初診の日に自己注射を開始するということもあるようですが、審査上では減点または返戻されてしまうと思われますのでご留意ください。

 

■他院より転院してきた場合

他院にて自己注射を行っていた患者が、転院してきて引き続き自己注射を行う場合は、コメントを入れることが大切です。

例えば、「(紹介により)転院の患者であり、前医にて自己注射を開始していた。今月からは当院で自己注射の指導、管理を行うこととなる」など、他院からの継続管理であることが分かるような内容の詳記があれば、初診の日から算定することも可能であり審査でも認められます。

 

■算定する点数は

1 複雑な場合 1230点

2 1以外の場合

イ)月27回以下の場合650点

ロ)月28回以上の場合750点

 

在宅自己注射指導管理料1の「複雑な場合」は、間歇注入シリンジポンプを用いて在宅自己注射を行っている患者について、診察を行った上で、ポンプの状態、投与量等について確認・調整等を行った場合に算定できます。

 

在宅自己注射指導管理料2については、医師が当該月に在宅で実施するよう指示した注射の総回数に応じて点数を選択します。

 

■注射の回数について

ここでのポイントは、在宅自己注射指導管理料を算定した日から、その月内(その月の月末まで)に実際に自己注射を行う回数が27回以下か、28回以上かで判断することです。在宅自己注射指導管理料の算定日から次の算定日までの注射回数ではありませんのでご留意ください。従って、月末近くに管理料を算定する場合には、ほとんどが「イ 月27回以下の場合 650点」になると思われます。

また、残薬があり薬剤の支給をしない場合であっても、自己注射の回数に応じて管理料は算定できますので、その際はレセプトの摘要欄に「残薬あり」と、その旨の記載をしてください。

 

■エピペン

アドレナリン製剤(エピペン)は、在宅自己注射の導入前に入院又は外来等で2回以上の教育期間が必要の対象外になりますので、1回の診察であっても医師による十分な指導が行われた場合には、在宅自己注射指導管理料(月27回以下 650点)を算定することができます。ただし、薬剤を処方した場合に限られますので、残薬があり薬剤の支給をしない場合には自己注射の管理料を算定することはできません。

 

 

導入初期加算

初回の導入月から3ヶ月間は、導入初期加算として毎月1回580点ずつの加算ができますので、忘れずに加算してください。ただし他院からの転院の場合は、前医から通算しての3ヶ月間になりますので、新規導入から3ヶ月を超えている場合は加算できません。新規導入から3ヶ月以内の場合は、導入した年月をコメント入力して加算できます。

 

また、処方の内容に変更があった場合には、さらに1ヶ月に1回限り加算ができますが、1年以内に使用した「*別表第9」に掲げる注射薬に変更した場合には加算はできません。

処方内容に変更があった場合に算定できる取扱いについては、点数表等で「*別表第9」に掲げる注射薬の製剤名に変更があった場合のみ算定できることとなっていますので、単に薬剤の商品名が変更になったからといって算定できるわけではありません。一般名が異なるインスリン製剤の変更など、同じ製剤名の中で一般名が変更しただけでは算定できませんので注意が必要です。

 

例えば、ランタスからトレシーバに変更した場合は、インスリン製剤の中での変更のため算定はできません。しかし、ランタスからビクトーザに変更した場合は、インスリン製剤からGLP-1受容体作動薬への変更のため算定することができます。

 

注意:薬剤の変更が導入後3ヶ月以内で、要件が重なった場合でも、580点を月に2回算定することはできませんので、解釈を間違えないようにしてください

 

■他にも算定要件があります

算定に当たっては、「指導内容を詳細に記載した文書を作成し患者に交付すること。なお、第2節第1款の在宅療養指導管理料の通則の留意事項に従い、衛生材料等については、必要かつ十分な量を支給すること。」とも記載されていますので、患者に指導内容を記載した文書を渡すことと、自己注射の使用する衛生材料等については、必要かつ十分な量を支給することも大切です。

 

この続きは、また次回書こうと思います。

 

*別表第9

在宅自己注射指導管理料、間歇注入シリンジポンプ加算、持続血糖測定器加算及び注入器用注射針加算に規定する注射薬
 
インスリン製剤
性腺刺激ホルモン製剤
ヒト成長ホルモン剤
遺伝子組換え活性型血液凝固第Ⅶ因子製剤
遺伝子組換え型血液凝固第Ⅷ因子製剤
遺伝子組換え型血液凝固第Ⅸ因子製剤
乾燥濃縮人血液凝固第Ⅹ因子加活性化第Ⅶ因子製剤
乾燥人血液凝固第Ⅷ因子製剤
乾燥人血液凝固第Ⅸ因子製剤
顆粒球コロニー形成刺激因子製剤
性腺刺激ホルモン放出ホルモン剤
ソマトスタチンアナログ
ゴナドトロピン放出ホルモン誘導体
グルカゴン製剤
グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト
ヒトソマトメジンC製剤
インターフェロンアルファ製剤
インターフェロンベータ製剤
エタネルセプト製剤
ペグビソマント製剤
スマトリプタン製剤
グリチルリチン酸モノアンモニウム・グリシン・L-システイン塩酸塩配合剤
アダリムマブ製剤
テリパラチド製剤
アドレナリン製剤
ヘパリンカルシウム製剤
アポモルヒネ塩酸塩製剤
セルトリズマブペゴル製剤
トシリズマブ製剤
メトレレプチン製剤
アバタセプト製剤
pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注射)製剤
アスホターゼ アルファ製剤
グラチラマー酢酸塩製剤
セクキヌマブ製剤
エボロクマブ製剤
アリロクマブ製剤
ベリムマブ製剤
イキセキズマブ製剤
ゴリムマブ製剤
エミシズマブ製剤
イカチバント製剤
サリルマブ製剤
デュピルマブ製剤
インスリン・グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト配合剤
ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム製剤
遺伝子組換えヒトvon Willebrand因子製剤
ブロスマブ製剤
メポリズマブ製剤
オマリズマブ製剤
テデュグルチド製剤
サトラリズマブ製剤

 


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