働きぶりが悪いので、試用期間後に給料を下げたいが可能か?

石川 恵
石川 恵 社会保険労務士

院長のためのクリニック労務 Q&A

 

~採用・労働契約編7~

 

Q:働きぶりが悪いので、試用期間後に給料を下げたいが可能か?

A:通常はできませんが、あらかじめ労働条件の変更を視野に入れた労働契約を締結していれば可能です。

 

 

期間を定めた契約をし、契約更新時は契約内容を見直す

  労働契約の途中で、事業主側が一方的に条件を変更することは原則としてできません。労働条件を変更するときは、労契法第8条に基づき、労働者との合意が必要となります。

 一方、期間を定めた契約であれば、契約の更新時に契約内容の変更を説明し、「新たな契約を締結し直す」ということになります。従って、相手が合意すれば変更は可能ということになります。いわゆる契約職員といわれる雇用形態です。

 クリニックで多いのは、試用期間相当期間を、「期間の定めあり」*で契約し、その後は期間の定めなしの契約に転換するという流れです。つまり、試用期間を3か月と設定しているクリニックでは、採用時に通常は「期間の定めなし」の契約を結ぶところを、あえて3か月間の有期契約を結ぶということになります。そうして3か月後、想定していたよりも働きぶりが悪かったということであれば、新たにそのスキルに見合った条件を提示し、本人がその条件に合意した場合は契約を更新するということです。

 

*期間の定めとは?

「期間の定め」とは、労働契約の期間を「いつからいつまで」と決めることです。この期間の定めがない場合は、解雇されたり自ら退職したりしない限りは、定年までずっと働くことができます。反対に、期間の定めがある場合は、あらかじめ契約期間の終わりの時期が決められているので、その時期が来れば自動的に労働契約は終了します。原則として、契約期間の終わりの時期が来るまではお互いに労働契約を解除できません。

 

*期間の定めありの契約時の注意点

①期間は専門的な職種を除き、3年を超えて設定することはできません。

②期間の定めありの契約を結ぶ場合、使用者は労働者に対し、契約更新の有無と、契約更新の場合の判断基準を明示しなければなりません。

③期間の定めありの雇用で、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた場合(改正労働契約法が施行された平成25(2013)年4月1日以降に締結した契約に限る)、労働者が希望すれば、期限を定めない無期契約に転換する必要があります。

 

 

 

辞退されるリスクも

 ただし、期間を定めた契約は、「スタッフ側からの入職辞退につながる可能性もある」ということに注意しておく必要があります。当然ながら、3か月間という期間限定の雇用契約を不安定だと感じるスタッフもいます。優秀な人材は複数のクリニックの内定をもらっていることが多いので、「そういう雇用形態であれば、3か月後に辞めてほしいといわれたら困るから、もう1つのクリニックにしようか」と天秤にかけられるリスクもあります。そのため、通常であれば「期間の定めなしの契約」とし、「期間の定めありの契約」は面接で人柄に不安が残る場合やスキルが未知数である場合など特別な事情がある場合の1つの方法という程度に認識しておくことが必要です。

 

 

 

経験・能力のレベルは、面接で慎重に判断を!

  本人の能力・スキルが、面接時に期待していたレベルに大きく及ばないことがあります。これまでの業務経験などを本人が面接で少々過大に伝えてしまい、院長も「これだけ経験があれば大丈夫」と思って採用したものの、蓋を開けてみると全くスキルが身についていなかったというような場合です。

 明確な経歴詐称などがあれば内定取り消しや懲戒解雇の対象となり得ますが、本人にはあまり悪気がなく、それが実は2、3日の経験だったとしても、「~の経験があります」「~に携わっていました」と申告するのです。例えば、事務職の応募者が、「レセプトのチェックもしていました」といっても、院長から修正を指示されて作業だけ行っていた場合もあれば、「この疾患でこの点数は取れない」など、診療報酬をしっかり理解してチェックしていた場合もあり、そのレベル差には大きなものがあります。

 抽象的な回答であった場合や疑わしさが残る場合は、掘り下げて質問をすることが大切です。「○○の検査は少しなら経験があります」という回答であれば、「少し」という表現が「疑わしさ」のセンサーに引っ掛かるところです。より掘り下げて、「○○の機械操作はどのような手順でされていましたか?」「検査結果の処理はどうされていましたか?」など、具体的な実務の質問を投げかけてみてください。その結果、スムーズに回答が出る人と、「それは経験したことがありません」と回答する人に分かれるはずです。

 

まとめ

1.原則的に、労働者の合意なしに労働条件の変更はできない。

2.面接で人柄や能力に不安が残る場合は、試用期間相当期間だけ「期間の定めあり」の契約を締結するという選択肢もある。ただし、内定辞退につながるリスクもある。

3.経験や能力のレベルは、面接でしっかりと確認を!

 

書籍「院長のためのクリニック労務Q&A」(小社刊)より

 

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