2011年8月12日

January  2011

Prefatory Note
(社)日本医療法人協会 会長 特定・特別医療法人 頌徳会 理事長 日野 頌三 氏
超高齢化社会における連携の重要性を改めて問う

■四半世紀前の指摘と現状の類似点
少し古い話ですが、昭和62年の厚生省(当時)の国民医療総合対策本部・中間報告の第二部「良質で効率的な国民医療をめざして」で、以下の提言がなされています。(1)老人医療の今後の在り方(老人にふさわしい施設ケアの確立と在宅ケアの充実、老人医療のガイドラインづくり、脳卒中リハビリテーション・マニュアルの作成等)、(2)長期入院の是正(入退院判定委員会の設置、病床過剰地域における病床の規制等)、(3)大学病院等における医療と研修の見直し、(4)患者サービス等の向上-等です。

既に四半世紀前の記述ですが、基本的な課題はそう変質していません。特に、入院患者の7割弱が65歳以上となっている現在、高齢者医療の問題は入院医療そのものの課題ともなっています。

■居宅を医療提供の場として

頌徳会グループが展開するサービスは、病院、老健、特養といった施設系と訪問看護といった居宅系の組み合わせとなっています。訪問看護サービスについては、平成6年の健康保険法改正で老人以外の者にも訪問看護が開始された前後にスタートしており、介護保険施行の遥か以前となります。介護保険がスタートした平成12年以降は、高齢者医療の相当分が介護サービスに移行していきましたが、比較的早い時期から高齢者医療・介護に軸足を移していた私たちにとっての課題の一つが機能連携でした。急性期病院の課題は、平均在院日数の問題もあり、急性期治療を終えた患者さんをどうスムーズに次の機能に送っていくかですが、回復期や老健にとっても変わりはありません。また、亜急性期病床を持つ私たちにとっては、療養・介護・在宅との連携は必須でもあります。

高齢化が更に進んでいく地域において、住民にとって望ましいサービス提供のあり方に関する視点の一つは、施設系のサービスと居宅系のそれとのバランスの取れた組み合わせに求められると考えています。当然、居宅も当然、医療サービスの提供の場であるべきです。

■互いの役割と責任を重視
もう一つは、病院と診療所の役割分担です。20年来、この指摘がなされてはいますが、牛歩のごとく中々進展していません。入院と外来の切り分け、同時に一次救急とそれ以上の救急医療が一つの施設に混在する状況なども改善しなければ、医療費を支え医療サービスを享受する国民にとっての不幸と言わざるを得ません。この状況を変えるためには、国民への受療教育と共に、国は思い切った施策-例えば診療報酬を診療所が入院外医療を担当し、病院は入院医療に特化できるようにする、といったような大胆な改定-などに取り組むべき時期にきていると思います。超高齢社会における医療及び介護関連サービスを十全なものにするためには、間違いなく機能連携がキーワードであり、診療所の先生方の役割も極めて大きいものであることを申し添えておきます。

(文責 編集部)

コンサルタントの独り言

この夏の猛暑は我が家のベランダの植木を全て枯らすという被害をもたらしました。普段は忙しさにかまけ、朝夕の水くらいであまり手も掛けず、内心面倒だと思ってましたが、いざ枯れてしまうと悲しくなりました。あんなに生命力と繁殖力の強かった成金草さえこんな姿になってしまうなんて!

普段の不義理に言い訳するようにカラカラの植木達にせっせと水をやり続け、枯れた枝先はポキポキと折ってやりました。そうしているうちに枝が黄緑色に色付き始め、小さな赤ちゃんの芽が折った先からどんどん出て来たんです。それを見つけた時、「ポッ…」と小さな幸せを感じました。ただ相手(植木)を思う気持だけで、手を掛けていたら答えてくれた・・・、こんな何でもない日常からとても大切なことを改めて教えてもらった気がします。今赤ちゃんの葉は生き生きと大人の葉になっていってます。

大阪本社
コンサルティング部
石橋薫

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Directors Interview
さかうえクリニック 院長 阪上 学 氏
患者さんの個別な傷みにオーダーメードで応える医療を

さかうえクリニックは、阪神西宮駅からほど近い、国道2号線沿いに面したビルの1Fで、この11月1日にオープンしたばかり。診療所としては稀なペインクリニック科、リハビリテーション科、麻酔科を標榜する。

■姉の死が医学の道を選択させた

-小さい頃、どんな少年時代を過ごされました?

田舎は兵庫県の川西市。周囲は自然たっぷりの環境で、物心がついたら虫や魚に囲まれていて遊んでました。何となく自然科学を学び興味が持てる環境にあったんですね。

-それで医学部に。

ええ。それと我々の世代までは手塚治虫の影響を強く受けている若者が多く、私もブラックジャックなどは何度も読み返しました。しかし、医学部を選択した直接的なきっかけは、姉の死でした。私が高校1年のときでした。仲の良かった姉が喘息が原因で亡くなった。まだ高校3年生、早すぎる死でした。

■先輩が教えてくれたペインクリニックの面白さ

-麻酔科を選択されたのは。

外科医を目指し外科医局を覗きに行ったりしていましたが、卒業前にたまたま冷やかしで参加した麻酔科の医局説明会で、ストレスや痛みから身体を守る麻酔科医の業務に興味を持ちました。

-ペインもその流れで。

ペインクリニックへ舵を取るきっかけは、私のメンターが取り組んでいたこと、そして、私自身が大学院で「痛みのメカニズム」を研究テーマにしたことです。痛みは曖昧で個人的な体験ですが、それだからこそ個別のオーダーメードの治療が奏功する事への喜びがありました。

■医院経営塾の第一期生

-開業を考えるようになったのはいつ頃でしょうか。

ぼんやりとですが7~8年くらい前からでしょうか。病院勤務医としてペインクリニックに取り組んでましたが、患者さんに負担が大きい入院から、外来でもやれることは色々ある、そして診療所でも痛みのプロとしてできることも沢山あるんじゃないかと考えるようになったんですね。

-開業準備はごく短期でなされた?!

いえ、先月の開業まで約2年ですか。随分と長い助走でした(笑)。

-医業総研とはどんな出会いでしたか。

知り合いの税理士さんからの紹介です。開業を考えるのであれば、専門の良いところがあると伺って。

-印象は如何でしたか。

良かったです。担当の山下さんのイメージも良かった。診療圏調査など、やはり専門家に任せたほうが良いことが沢山あると認識はしていましたから。開業をサポートする色んな業者さんがいますが、私は専業のコンサル会社が良いと思っていましたし、迷いはありませんでした。そもそも私は医業総研が開催している「医院経営塾」の第一期生なんです。開業とはどんなことか、何をどう考えて、どんな準備、手を打っておくのか。4回の講座で考えるべきことをクリアにして貰いました。

■職員のベクトルを合わせる

-今の課題は。

まずは一日でも早く損益分岐点をクリアすること。そのためにもスタートしたばかりのチーム(7名のスタッフ)のまとめ。私を筆頭に、チームのベクトルを一つにまとめ、キチンとした方向性を持たせることが目前の課題です。

-ご家族は開業に賛成でしたか。

ええ。もちろん苦労は掛けているのでしょうが、気持ちよく仕事に送り出してくれますし、支えて貰っています。ただ、子供(長女)が、「パパ、今日の患者さんは何人?」と聞いてくる。嬉しいのと、お尻を叩かれているような(笑)。

-最後に開業を考える後輩諸氏にアドバイスお願いします。

何にも増して、開業の理念を明確にすること。これも医院経営塾で教わったんですが。自分自身の推進力にもなるし、スタッフとも共有し、経営の支えになります。開業後、本当に実感していることです。

-ありがとうございます。

※受付カウンターの中央は、医院経営塾で学び、起草したクリニックの理念

<<さかうえクリニック>>
診療科目…ペインクリニック内科、リハビリテーション科、麻酔科
住所…兵庫県西宮市和上町1-6 日本生命ビル1F
TEL…0798-38-8388 begin_of_the_skype_highlighting            0798-38-8388      end_of_the_skype_highlighting
URL…http://www.sakaueclinic.jp/

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第3回 女性医師開業のススメ
ご主人の全面サポートが成功の鍵
『医療』と『経営』を夫婦でワークシェア

男性医師が開業をする場合でも、ご家族の理解は欠かせない要件の一つです。言わば内助の功として、奥様が裏方に、あるいは看護師や内部スタッフのまとめ役として、運営をサポートするクリニックは数多くあります。

翻って、女性医師の場合はどうでしょうか。

今回ご紹介するF先生は、平成9年に医師免許取得後、出身大学の内科に入局。その後、複数の地域基幹病院で、糖尿病を中心とした内科診療に当たってきました。ご実家が開業医ということも影響してか、勤務医時代から、開業志向を強く持たれており、日本医業総研にも会員登録をされていました。一方家庭では、サラリーマンのご主人と、入園前の女児(開業当時)を育てる母親でもあります。

医師になって10年近くが経ち、いよいよ念願の開業を決意。F先生が思い描いてきたクリニック像を実現するために相談した相手はご主人でした。夫婦で構想を巡らせ、事業コンセプトを立案。立地の選定は、ご主人自ら本業の合間に多数の候補地を回り検討を重ねました。最終的に決定した場所は、S県の既存路線に開業する新駅に直結した大型複合施設でのテナント開業。ご主人が施設の事業者に直接出向き、新しい街づくりにおける医療機関の必要性を説得。入居に関する条件交渉をまとめられました。弊社主催の医院経営塾にもご夫婦で参加され、スタッフの採用面接にも立ち会うなど、まさに二人三脚の開業準備を経て、平成20年10月、内科・糖尿病内科を標榜する、K内科を開業しました。

院長が医療に専念できることのメリットは殊の外大きいものです。開業後はご主人が事務長的な立場で、経営面の管理や人事をサポートすることで、F先生はクリニックの目指す機能の充実を図ることができました。地域の診診連携、病診連携の整備に取り組む他、医師人脈を活かして専門医と提携し、定期的に循環器や血液内科等の診療を行うようにしました。また、指導室を設けて毎週4回、管理栄養士による栄養指導を実施しています。ホームページ内に開設した管理栄養士によるコラムも好評で、こういった細やかなコミュニケーションの積み重ねが地域住民に、より身近なクリニックとして認知されたようです。

これもご主人の指導でしょうか、スタッフが自発的に院内の患者向け説明ツールを作成するなどの日常の対応も院長の負担を軽減することに繋がります。

こうして、F先生が開業当初に掲げたコンセプトである『街のかかりつけ医として信頼され、一人ひとりの患者さんにオーダーメイド医療の実践を』も徐々に形成され、現在では1日に70~80人の患者さんを受け入れるまでになりました。

F先生ほどに、ご主人の支援を享受できるのは、稀なケースかも知れません。しかし、健全な経営を基盤とした医療サービスの充実という意味では、その役割を分担するのは合理的ですし、ご主人の余剰時間の中でワークシェアできるのであれば、極めて有効な手段だと思われます。何より、ご夫婦という信頼関係が大きいことはいうまでもありません。

F先生は、地域の医療ニーズに応える次なる展開として、クリニックの分院化も視野におかれているご様子。先生ご夫妻の二人三脚の体制があれば、きっとその構想も実現化することでしょう。

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Report
増患対策集中講座開催しました

12月5日、東京国際フォーラムにて、日本医業総研主催の『増患対策集中講座』が開催されました。第一部では《患者の求める医療サービス》をテーマに、患者支援団体「いいなステーション」の代表、和田ちひろ氏が講演。ご自身の体験と、患者の視点から求める医療サービスのあり方に加え、プロのマーケッターとしての理論体系に基づくクリニックの評価や指摘に、受講された先生方も熱心なに耳を傾け、新たな気づきを得られたようです。

第二部は弊社シニアマネージャー、植村智之による《差別化できる院内体制の作り方》。コンサル事例を基に、開業理念の浸透、スタッフの意識改革と風土創りの重要性を解説しました。両講演共に、クリニック全体のクオリティ向上に主眼が置かれたもので、講演終了後も先生方から活発な質疑が寄せられました。

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勤務医のための医院経営塾 Part8
第3講 『人事労務集中講座I』

この第三講は、2部構成で、第1部は社会保険労務士から労働基準法を中心とした人事労務の基礎知識について、第2部は理想とするスタッフをどのように採用し育成するかについて紹介させていただきます。

第1部では、まずスタッフの採用に関連する法律の種類と内容をご説明します。最近、スタッフが労働基準法に関する豊富な知識を持っているケースが増え、それに対応するために経営者として最低限身につけておくべき法的知識をご紹介します。また、特にスタッフとの間で問題が生じやすい「勤務時間」、「残業代」の考え方について、実際に先生方が考えておられるクリニックの診療時間を基に、勤務時間を算定していただきます(図表参照)。

最近の開業事例でも院長とスタッフとの間の認識の違いで問題になりそうなことがありましたが、診療時間として患者さんに掲示している時間帯と、実際にスタッフの方に勤務していただく時間には差が出てきます。この差を採用時に正確に確認しておかないと、後になって、「そんな時間には出勤できません」、「○時以降は残業できません」といった苦情が出ることになります。例えば、朝9時から診療開始としていても、実際には、掃除や電子カルテの立ち上げ作業など診療体制を整えるために遅くても15分から30分前にはスタッフに出勤していただく必要があります。これらの時間も含めて勤務時間にカウントされ、給与の支払い義務も生じてきます。一日8時間以内という法定労働時間を守ろうとすると意外に診療時間が短いなとか、スタッフの人員体制を整えるのが難しそうだなという認識をお持ちになる先生方が多いようです。

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