失敗しない医療モール開業のために 知っておきたい基本の基

医療モールを取り巻く社会背景

 

 クリニックの開業形態を考える際に、選択肢の一つとなるのが医療モールでの開業です。

 医療モールの開設が広く認められるようになったのは2000年頃からとされています。医療モール自体には医療法等の定義がないため、正確な推進整備状況は把握されていませんが、開設数は全国で千カ所を超えるとされ、現在もなお新設されています。

 私どもでも、これまで数多くの医療モールを組成してきましたが、本稿では、先生方が医療モールでの開業を検討されるにあたり、事前に知っていただきたいポイントを解説していきます。

 

 医療モールとは、建物全体や限定された区画に複数の医療機能を有するテナントがユニットとして集合し、統合したシステムと定義づけることができます。本来このテナントは一般クリニックに限定するものではありません。地域の包括的な支援・サービスという視点に立てば、訪問看護事業所、介護保険適用事業所(訪問介護事業所、在宅介護支援事業所等)、通所リハビリテーションなどの事業体も考えられますし、フィットネスクラブを誘致できれば、予防医療の実践にも可能性が広がります。それでも、多くの医療モールは複数診療科のクリニック+調剤薬局で、規模も全5ユニット前後というのが現実です。これは、調剤薬局が医療モールの開設事業者となっているケースが多いことを示しています。利用者の観点からも、同フロア、あるいは同建物内に調剤薬局があることで利便性は高くなりますし、入居するクリニックにとっても集患上のメリットになります。

 

 ビルオーナーやディベロッパーにとって、クリニックは長期の入居と安定的な賃料収入が見込める優良顧客といえ、同時に医療機関という社会公器のもつ良質なイメージから不動産自体の付加価値も高めることになります。つまり、医療モールには不動産の流動化事業という側面もあるわけです。

 そうしたことからか、現在ではレジデンスへの併設や商業施設内の併設、オフィスへの併設など、多様なスタイルの医療モールが企画されるようになりました。

 ただし、医療モールのシステムは、各テナントが独立した事業体であることが前提で運営されています。受付や待合の共同利用、電子カルテサーバーの共有、医療機器の共同所有など責任分担が困難と考えられることは原則的に禁じられています。

 

 

医療モール開業のメリット

 

①期待される高い認知性と利便性

医療モールは市街・郊外にかかわらず、生活動線が考慮された住民が集まりやすい立地に開設されるのが定石です。さらに、合同広告や集合看板の設置などの広報効果で高い認知性が期待できます。また、医療テナントが共同利用できる駐車場・駐輪場を備えた物件であれば利用者の利便性はさらに高くなります。

ショッピングセンターなどに併設された医療モールでは、長い待ち時間もあまり苦にならないという声がよく聞かれます。

 

②紹介連携が容易

高齢者など、複数の疾患を合併している患者さんには、ワンストップで提供される医療サービスは通院の煩わしさが軽減します。クリニックにとっても専門外の疾患についての相談や、紹介連携が容易になるほか、薬の併用禁忌など患者さんに有益な情報も共有できます。

 

③クリニックに適した設備仕様

一般的なテナントビルでの開業で、しばしば問題になるのが、給排水の引き込みや、電気容量、耐荷荷重といった設備・構造上の不備や、バリアフリーなどの医療機関に不可欠な仕様です。医療モールでは、既存の建物であっても医療機関を想定して設備を適正化していることが前提です。給排水設備や電気設備の改修工事は、決して安価ではなく、事業計画にも大きく影響を及ぼします。

 

医療モール開業の注意点

 

①他の診療科クリニックとの診療範囲の調整

専門外の疾患であっても、花粉症などの軽症患者さんや慢性疾患患者さんへの対応は可能ですし、医療モール運営事業者がテナントの扱う疾患をルール化することはできません。相互交流不和を生じさせないために、運営事業者立会いのもとで他科の先生との方針一致を図りたいものです。

 

②医療モールに実績のある事業者が開設・運営に介入しているか

「医療ビル計画」の広告を見て契約したものの、他のフロアが埋まらないことに業を煮やしたビルオーナーが飲食店を誘致してしまい、解約を余儀なくされたケースがあります。医療モールの開設・運営に実績をもつ事業者は、診療科を想定したうえで区画を埋められる根拠をもって組成に当たりますし、ビルオーナーとの合意形成も適正に図られています。

すべてのクリニックが同時に開業を迎えることは現実的には困難ですが、誘致と運営に責任をもてる事業者であることが重要になります。

 

③診療圏分析の裏付け確認

不動産仲介業者のクリニックテナントの募集広告では、「〇〇科に最適」といった表現をよく見かけますが、疑わしいと思える情報が少なくありません。医療モールでは基本的な診療圏調査に基づく募集診療科が示されていることが一般的ですが、入居の意思決定の前に、その確度の裏付けを十分に確認することが大切です。ここでも、医療モール開設に実績のある事業者かどうかが試されることになります。

 

④医療モール≠低い賃料

医療モールは前提として保険診療によるクリニック経営を意識した賃料単価設定がなされていますが、一般的なテナントビルと比べ必ずしも安価というわけではありません。むしろ、高めの賃料であっても、それを十分カバーできるメリットが享受できるかが検討の対象になります。

 

 

~株式会社日本医業総研 発行物 2ndStage Vol.9 CONSULTING EYE コンサルティングの視点 より~

 

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