医療事務の基礎知識(24)

皆さんこんにちは。今回は、点数表の見方や解釈のポイントについて解説します。
点数表って、目にする機会はあっても、最初からきちんと読むことはなかなか無いように思いますがいかがですか。業務中は知りたいところだけを見ていることが多いので、そもそもの見方や解釈の仕方を理解していないと、点数表を見てもよく分からなかったり、解釈を誤ってしまうこともあると思います。たまに知りたいことが記載されていないので分からない、なんてこともありますよね。

 

そこで、まずは点数表の基本的な約束ごとを理解することが大切になります。

 

■点数表の構成

点数表は、第1章「基本診療料」と、第2章「特掲診療料」からなり、その中でさらに 第1部 → 第1節 → 第1款 と分かれていきます。

点数が定められている診療行為には必ず区分番号が付いていて、そのあとに名称と点数が記載されています。

そして、区分番号の最初のアルファベットは以下の分類を意味します。

 

A:基本診療料 H:リハビリテーション
B:医学管理等 I:精神科専門療法
C:在宅医療 J:処置
D:検査 K:手術
E:画像診断 L:麻酔
F:投薬 M:放射線治療
G:注射 N:病理診断

 

区分番号と名称のあとに、要件によって点数が異なる場合は、まずはアラビア数字が使われます。その中でも更に細分化される場合には、イロハが使われ、更なる場合は、(1)(2)(3)で分けていきます。

その項目に対して、算定するうえでの注意事項や加算、減算などの要件がある場合には、行を改めて「注」の記載がありますので確認することが大切です。

 

■注の位置も大切

ここでのポイントは、注意事項を意味する「注」の位置です。アラビア数字の真下になり、アラビア数字と同じ位置にある「注」の意味は、アラビア数字で記載されている上記のすべて(または、数字が指定されている場合は指定の数字)に対する注意事項になります。

アラビア数字よりも1文字分、またはイロハよりも1文字分内側にある(字下がりの位置にある)「注」は、その項目または点数に対してのみ係るものと判断します。

 

■通則(共通の規則)

通則とは、共通の規則を意味しますので、「このあとに記載されている全てに共通の規則」と解釈します。ですので、このあとに記載されているそれぞれの項目のところには注意事項として記載されていませんから、知りたいところだけを見ていると気がつかないこともあります。見落とさないようにご留意ください。

また、通則が書かれている位置にも注意してください。どの部分に係る内容かを見分ける意味で大切です。

 

■通知

通知とは、点数のことについての説明や注意事項などのあとに、右矢印 → で書かれている部分です。算定上の解釈が詳しく記載されています。

 

■所定点数の原則

所定点数とは、基本的には各区分番号に定められた基本点数のことであり、原則「注」に定められた加算点数は含まないものです。

ただし、「処置の部の通則5」、「手術の部の通則7、通則8、通則12」など一部には加算や減算を含めた例外的な取り扱いをする場合もありますので注意が必要です。

 

 

■知っておきたい解釈

 

●1日につき

特に規定する場合(J038等)を除き、午前0時~午後12時までの24時間を指します。

「1日につき」の記載がある点滴注射や処置料などは、1日に何回行っても点数は1回しか算定できません。

入院料の場合は、午後10時に入院し、翌日午前10時に退院しても、2日間とカウントします。

外泊の場合は、午前0時~午後12時までの24時間不在の場合を外泊1日とカウントします。

 

●一連につき

治療の対象となる疾患に対して、所期の目的を達するまでに行うひと続きの治療行為のことを指します。

 

●点数表の中で「1日につき」や、「一連につき」などの記載がないものは、原則「1回につき」(1回ごとに)算定できます。

 

●暦月は、カレンダー上の1ヶ月(1日から末日まで)で、暦週は、カレンダー上で日曜から土曜日までの一週間です。

 

●「A又は(若しくは)B」は、「AかBかいずれか一方」という意味であり、「A及び(並びに)B」は、「AとBの両方」との意味になります。

 

■専従と専任
「専従」とは、専ら当該業務に従事することで、その仕事以外はできないということです。従って、他の業務と兼務することは認められません。

「専任」とは、当該業務に責任を持ち、対処することで専従しなくてもよい、と解されます。従って、その当該業務に差し支えない場合は、他の業務と兼務することが認められます。

 

■点数表での注意点

点数表では、「同時算定は不可である」ということが、どちらか一方にしか書かれていないことがありますので、算定の際には両方を確認することが大切です。また、それぞれの項目のところではなく、通則に記載されている場合もありますので、項目の最初から確認しないと判断を誤ってしまう可能性もあります。

自分が知りたいことが、点数表には直接書かれていないこともあります。書いてないことを理解するのは難しいことですが、このようなときには関連する他の内容から判断する場合もあります。また、厚生労働大臣が定める要件等は、点数表の後ろの方に記載されていることもありますので、知りたい項目のところだけを見ていては解決しないこともあると思います。点数表を使いこなせるようになりたいですね。

 

■文章を読む大切さ

外来では算定できませんが、「I 008 入院生活技能訓練療法」は、精神科を標榜している保険医療機関において、経験のある2人以上の従事者が行った場合に限り算定できる」との記載があります。そして、この場合、少なくとも1人は、看護師、准看護師又は作業療法士のいずれかとし他の1人は、精神保健福祉士、公認心理師又は看護補助者のいずれかとすることが必要である。(以下省略)とも書かれています。

ここで疑問が!!

この場合、経験のある看護師と作業療法士の2人で行ったら算定はできません。でも、看護補助者と作業療法士の2人で行った場合は算定できます。

なぜ??

 

一般的に考えると、作業療法士ともう1人の組み合わせの場合、看護補助者は認められるのに、国家資格のある看護師ではダメなんておかしいと思ってしまいませんか。

でも文章では、「Aから1人Bから1人の2人以上で行った場合に算定できる」との記載になりますので、この場合は作業療法士も看護師も同じグループになってしまい算定は認められないということになります。

このことについては私も疑問に思い、以前厚生局に問い合わせをしたことがありますが、「記載にある通りの解釈に誤りはありません」との回答で、「作業療法士と看護師との組み合わせで行われた場合は算定不可になります」とのことでした。理由についても伺ってみましたが、「厚生労働大臣の定めによるものです」とのこと。 (* ̄- ̄)ふ~ん。

 

頭で考えたり思い込みで判断するのではなく、文章を読んで理解する大切さを実感した出来事でした。

 

■まとめ

点数表を見たときに、点数がたくさん書いてあったり細分化されていると、分かりにくいこともあると思います。注がどの項目に係るものなのかによっても解釈が変わってきますし、加算や減算をする際に計算をする順番によっては、算定点数が変わってしまいます。点数表の見方を理解して、正しく算定できるようになることが大切です。

 

また、通常2年に一度行われている「診療報酬改定」が、今年(2022年)もありますので、医療の現場では改定によって生じる変化をしっかりと理解し、日々の業務に反映させる必要があります。点数表を見る機会も増えると思いますので、細かいところまで気をつけながら読み込んで活用したいですね。

 

<参考図書>
■医学通信社 「診療点数早見表【医科】2020年4月現在の診療報酬点数表」

                                                

 


 

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