欠勤後に、「有休に振り替えてほしい」といわれた場合、応じなければならないのか?

石川 恵
石川 恵 社会保険労務士

院長のためのクリニック労務 Q&A

 

~年次有給休暇編6~

 

Q:欠勤後に、「有休に振り替えてほしい」といわれた場合、応じなければならないのか?

A:振り替えるかどうかは院長の判断によります。

 

事後申請の有休を認める義務はない

 有休が労働者の時季指定権、使用者の時季変更権を認めていることから、有休は事前申請が原則であると判断できます。スタッフから「病気で休んだ日を有休に充ててほしい」という要望が出ることはめずらしくありませんが、このように有休を事後に申請された場合、時季変更権の行使(年次有給休暇編3参照)ができませんので、「事後請求の有休は必ずしも認める必要はない」とされています。

 ただし、事業所として慣行的に事後請求の有休が認められていた場合には、注意が必要です。明文化はされていないものの、例えば風邪で休んだ場合の事後請求が当然のように認められているような場合です。全員が真摯に仕事をしている組織であれば問題ありません。しかし、もし寝坊や怠慢で欠勤するような人がいた場合、慣行的に事後請求が認められていると、そのような欠勤に対しても事後に有休扱いにしなければならなくなる可能性が残ります。

 

事後請求の場合のルールーは、就業規則に記載

    そのため、仮に病欠などの欠勤を有休に振り替えることが制度化されている事業場では、就業規則にその旨を規定しなければならないとされています(昭23.12.25 基収4281号)。

 

事後申請に関する就業規則記載事項

・何日後までに申請があった有休を認めるのか
・事後申請を認める場合の理由(急病などやむを得ない場合に限る、など)
・事後申請の方法(急病を証明できる診断書の添付など)

 

 また、忙しくてスタッフが有休をあまり取れないため、病欠くらいは有休で消化させてあげたいという院長もいます。そのため、公平さを欠くことがないようにルールを定めておくとよいでしょう。明確な基準がないまま、あるときは認めて、あるときは認めないということになると、「なぜ認められないのか」がわからずスタッフの不平・不満につながる可能性があります。

 

 

 

協力し合って有休を取得する組織風土を

 

    事後請求を認めることで、「休んでもお給料は減らないから大丈夫」「月曜日はしんどいから休んで有休にしてもらおう」と考えるスタッフが出てくる可能性があります。そのようなスタッフが有休を多く消化し、他の人が有休を取れていないような状態になると、まじめに努力しているスタッフの意欲が低下してしまいます。有休以外のところできちんと評価されていればよいのですが、病欠を理由に事後請求の有休を100%取得している人も、まじめに頑張ってやむを得ず有休が取れない状態になっている人も「平等」に扱ってしまっては、頑張っている人が「報われない」と感じて退職するリスクが高まります。

 そのような事態を防ぐために、組織風土を醸成する必要があります。有休の取得方法について、クリニックとして共通認識を図っておくとよいでしょう。経営者がそこに目を向け、不公平にならないようきちんと配慮していることが伝わることがポイントです。例えば、そのようなクリニックとしての行動指針をまとめたルールブック(資料3)を作るのも効果的な方法です。

 

資料3 ルールブック(小手帳)への記載例

①有休の取得に当たっては、1週間前までに所定の用紙を提出して申請をお願いします。
②スタッフの欠員が出たときなど、繁忙期の場合は取得日を変更することがあります。
③例年の状況では、下記の時期が繁忙期になりますので、なるべく避けるようにしましょう。
 【繁忙期:年末年始、花粉症の時期】
④有休を取った翌日は、「お休みをいただきまして、ありがとうございました」と全員に感謝の気持ちを伝えましょう(遅刻、早退の場合も同様です)。自分が休みを取っている間には、周りの方が協力して助けてくれています。そのことを忘れず、感謝の気持ちを行動に表しましょう。

 

まとめ

1.有休は事前申請が原則。

2.事後申請を認める場合は、就業規則などでルールを定めておく必要がある。

3.有休の取得方法について、お互いに協力し合って取るなど、クリニックとして共通認識を図ることが大切。

 

書籍「院長のためのクリニック労務Q&A」(小社刊)より

 

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