医療事務の基礎知識(16)

皆さんこんにちは。今回は、手術料の項目の中から、創傷処理について解説します。

創傷処理とは、切創・刺創・割創または挫創に対して、切除、結紮または縫合(ステープラーによる縫合を含む)を行ったときに算定する項目で、区分は50の手術になります。

 

■点数を選ぶポイント

①患者の年齢

②筋肉、臓器に何らかの処理を行ったか(筋肉、臓器に達するもの)、行っていないか(筋肉、臓器に達しないもの)

③傷の長径

創傷処理は、この順番で当てはまる点数を1つ選びます。この選んだ点数を所定点数といいます。

この所定点数に、真皮縫合加算(460点)と、デブリードマン加算(100点)という2つの加算項目がありますので、実際に行われた場合であって、それぞれの要件に当てはまれば加算ができます。これらを合計した点数が算定点数になります。

 

■患者の年齢

患者の年齢が、6歳以上と6歳未満(5歳まで)では、見る(選ぶ)項目が異なります。

6歳以上の場合は、「K000 創傷処理」から選びます。

6歳未満(5歳まで)の場合は、「K000-2小児創傷処理(6歳未満)」の中から点数を選んでください。

 

創傷処理は7通り、小児創傷処理は8通りに点数が細分化されており、傷の長径と筋肉・臓器に達するものかどうかによって異なっています。

ここでの「筋肉、臓器に達するもの」とは、単に創傷の深さを指すものではなく、筋肉、臓器に何らかの処理(切除や縫合等)を行った場合のことをいいます。また、手指については指を曲げる筋肉や腱は手のひらや前腕にあり、指にはないため、「筋肉、臓器に達する」ことはないと思われますが、実際に筋肉、臓器に達する処理を行われた場合には、レセプトにその旨の症状詳記をお願いします。

 

■K000 創傷処理の点数

  1 筋肉、臓器に達するもの(長径5センチメートル未満)  1,250点

  2 筋肉、臓器に達するもの(長径5センチメートル以上10センチメートル未満)  1,680点

  3 筋肉、臓器に達するもの(長径10センチメートル以上)

        イ 頭頸部のもの(長径20センチメートル以上のものに限る)  8,600点

        ロ その他のもの  2,400点

  4 筋肉、臓器に達しないもの(長径5センチメートル未満)  470点

  5 筋肉、臓器に達しないもの(長径5センチメートル以上10センチメートル未満)  850点

  6 筋肉、臓器に達しないもの(長径10センチメートル以上)  1,320点

 

■K000-2 小児創傷処理(6歳未満)の点数

  1 筋肉、臓器に達するもの(長径2.5センチメートル未満)  1,250点

  2 筋肉、臓器に達するもの(長径2.5センチメートル以上5センチメートル未満)  1,400点

  3 筋肉、臓器に達するもの(長径5センチメートル以上10センチメートル未満)  2,220点

  4 筋肉、臓器に達するもの(長径10センチメートル以上)  3,430点

  5 筋肉、臓器に達しないもの(長径2.5センチメートル未満)  450点

  6 筋肉、臓器に達しないもの(長径2.5センチメートル以上5センチメートル未 満)  500点

  7 筋肉、臓器に達しないもの(長径5センチメートル以上10センチメートル未満)  950点

  8 筋肉、臓器に達しないもの(長径10センチメートル以上)  1,740点

 

■真皮縫合加算

皮膚は表面から、「表皮」「真皮」「皮下組織」の3つに分かれています。真皮縫合とはその名の通り真皮の部分を縫い合わせる方法のことで、傷あとを目立たなくすることが最大の利点のようです。創傷処理のときに真皮縫合を伴う縫合閉鎖を行った場合には、露出部に限り所定点数に460点を加算することができます。

露出部とは、頭部、顔面、頸部、上肢にあっては肘関節以下、下肢にあっては膝関節以下の部分をいいます。わかりやすくいうと、半袖、半ズボンを着用した状態でも肌が露出している部分が露出部です。しかし、露出部であっても真皮縫合加算が認められない部位もありますのでご留意ください。

 

【真皮縫合加算が認められない部位】  手掌(手のひら)、指、趾、眼瞼(まぶた)

    ※ 耳介部、手背、足背、足底部や踵は認められます。

 

 

■デブリードマン加算

汚染された挫創に対してデブリードマンを行った場合は、当初の1回に限り所定点数に100点を加算できます。通常麻酔下で行われる程度のものを行った場合に限られていることと、傷病名にご留意ください。

 

■創傷処理・小児創傷処理算定の注意事項

・ 創傷とは傷のことですが、一般的に「創」とは開放性損傷を意味し、「傷」とは非開放性損傷を意味するようです

     ので、創傷処理を算定する場合は傷病名に注意が必要です。例えば切り傷の場合、「切創」「切傷」どちらも使わ

     れますが、創傷処理を算定する場合は「切創」でないと減点される可能性があります。

     縫う必要があるキズは「創」、縫わなくてもよいキズが「傷」と覚えておかれるとよいでしょう。

・ 創傷が数か所あり、これを個々に縫合する場合は、近接した創傷についてはそれらの長さを合計して1つの創傷と

  して取り扱い、離れた部位であればそれぞれ別々に算定できます。

・ 6歳未満の場合は、切創、刺創、割創または挫創に対して、ボンドまたはテープにより創傷処理を行った場合でも、

     筋肉、臓器に達しない創傷に対してであって、切除、結紮または縫合と医療上同等の創傷処理を行った場合には、

     小児創傷処理での算定が認められています。

・ 露出部だから真皮縫合加算ができるのではなく、実際に行ったときに露出部であれば加算してください。そして、

     いくら露出部であっても、医学的に真皮縫合は行わない部位もあるようですので、審査側でこのような判断をされ

     た場合には減点されてしまう可能性もあります。

 

■手術後の傷の処置

手術後の傷の処置は、40処置の項目の「創傷処置」で算定します。手術後の患者に対する創傷処置は、1日に何回処置を行っても1日につき所定点数を1回しか算定できません。また、手術当日は算定できませんのでご留意ください。

複数の部位の手術後の創傷処置については、それぞれの部位の処置面積を合算し、その合算した広さに該当する点数を1つ選んで算定します。

 

■創傷処置と創傷処理の違い

傷に対して、消毒や軟膏等を塗布した場合は、40処置の項目「創傷処置」で算定します。傷に対して、切除、結紮または縫合を行った場合は、50手術の項目の「創傷処理」で算定します。また、処置のときにはイソジンなどの消毒薬も算定できますが、手術のときには消毒薬は算定できません。処置の「創傷処置」と、手術の「創傷処理」。1文字の違いですが大きな違いがありますので、間違えないようにしてくださいね。

 

 


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