医療事務の基礎知識(9)

皆さんこんにちは。今回は項目がたくさんある医学管理料の中から、特定疾患療養管理料の算定について、一般的なことと、特に気を付ける注意点を分かりやすくお伝えします。

 

医学管理料には似たような名称や、似たような内容のものが複数ありますので、どんな時にどの項目を算定したらよいのか、何となくは分かっているつもりでも実際には「これって当院で算定してもいいの?」と迷われたり、一つひとつの算定条件を確認してもよく分からないことがあると思います。

そんな医学管理料の中でも、一番よく算定されていると思われるのが「特定疾患療養管理料」です。診療科を問わず、算定要件を満たせばどの診療科でも算定することが可能な管理料の一つですので、知っている方も多いとは思いますが、それでも解釈を誤ってしまったり、よく理解されていない部分もあると思いますので、あまり知られていないところにも踏み込んで解説させていただきます。

 

まずは一般的なことから

■算定要件

この管理料は、診療所と200床未満の病院で、生活習慣病等の厚生労働大臣が定めている対象疾患を主病とする患者さんに対して、プライマリケア機能を担う、かかりつけ医師が治療の計画に基づき、服薬、運動、栄養等の療養上の指導・管理を行った場合に、暦月で2回まで算定することができます。

 

点数は、1回につき 

診療所の場合 225点
許可病床数が100床未満の病院の場合 (20床以上99床まで) 147点
許可病床数が100床以上200床未満の病院の場合 (100床以上199床まで)   87点

 

【解説】

かかりつけ医師とは、なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療を担う総合的な能力を有する医師のことであり、実際に主病を中心とした療養上必要な治療管理を行っていることが必要です。そのため、実態的に主病に対する治療が当該保険医療機関では行われていない場合は算定できません。

主病とは、当該患者の全身的な医学管理の中心となっている特定疾患をいうものであるため、 対診又は依頼により検査のみを行っている保険医療機関にあっては、やはり算定できません。

また、地域のかかりつけ医師が計画的に療養上の管理 を行うことを評価したものであることから診療所と200床未満の病院で算定できるものであり、200床以上の病院では算定できません。

 

 

 

 

 

■対象患者

厚生労働大臣が定めている対象疾患が主病である患者さんです。

ポイントは対象疾患が「主病であること」です。その疾患をメインに治療管理を行っていることが大切であり、対象疾患でかかっていたとしても主病でなければ減点されてしまうことがあります。そのためレセプトにも主病であることが分かるようにしておかなければなりません。主病は複数あっても構いませんので、必ず分かるようにしておいてください。

 

■対象疾患

厚生労働大臣が定めている疾患であり、 具体的には、結核、癌、甲状腺疾患から、高血圧症、脂質異常症、糖尿病等の生活習慣病、心筋梗塞、不整脈、心不全等の循環器疾患、脳卒中、慢性閉塞性肺疾患、喘息、胃炎、胃潰瘍、慢性肝炎、慢性膵炎など多岐に渡ります。詳しくは点数表等でご確認ください。

 

■分かりやすくいうと

普段からかかりつけの医療機関で、計画的に治療管理を行っているかかりつけの担当医師が治療に当たり、日常生活での食事や運動、睡眠または嗜好品など生活習慣に対して気をつけることを、患者さんごとに分かりやすく指導及び管理したときに算定できる点数です。

病気の治療というのは、医療機関に通院しているだけではよくならないこともありますし、処方された薬を飲んでいるだけでもよくならないことはあると思います。病気の原因にはいろいろな要素があると思いますが、中でも生活習慣病といわれているものは、その名の通り日常の生活習慣を気をつけることがとても大切ですので、患者さんが実践できるように、患者さんの個別性に合わせた現実的な分かりやすい指導が求められます。ポイントは、日常生活内で気を付けることによって、その病気を悪くしないようにすることですので、電子カルテの例文をそのまま伝えたり、カルテに記載することは望ましくありません。

たとえば「1日の塩分量は6g以下で」という場合は、「調味料はなるべく減塩のものを使用して、麺類の汁は残すように」などと、具体的にそして実践しやすいように伝えることが大切です。

 

ご注意ください

■1ヶ月経過後

初診料を算定した日から1ヶ月のあいだは、指導管理を行っても初診料に含まれるので特定疾患療養管理料は算定できません。また、入院中も算定はできませんし、退院日から1ヶ月間も算定はできない決まりになっています。退院後については、「自院を退院後」と記載されていますので、他院での入院歴は気にされなくても大丈夫です。

この1ヶ月とは、1ヶ月後の1日前までと解釈します。例えば高血圧症が主病で12月10日が初診だった場合は、翌月の1月9日までが1ヶ月となりますので、この間は特定疾患療養管理料は算定できません。1月10日から算定できます。(基本的には、1ヶ月後の同じ日から算定できると解釈しますが、月の末日の場合は例外もあります。31日が初診の場合は、翌月の末日に算定可能です)

 

■初診料を算定した日から数えます

この1ヶ月で、もう1つ気を付ける大切なことがあります。それは、対象の傷病名が付いた日から1ヶ月経過後ではなく、初診料を算定した日から1ヶ月経過後から算定可能ということです。以前には、「対象病名が付いた日から1ヶ月は算定不可」という時代もありましたので、いまだに間違えていらっしゃる方を見かけることもありますが、現在は、「初診料を算定した日から1ヶ月経過後から算定可能」となっていますので損をされている可能性があります。いま一度ご確認ください。

 

 

 

■例題で確認

たとえば、12月5日に感冒で初診だった患者さんについて、その後12月10日に高血圧症が主病として付いたとします。感冒もまだ治療継続中のため10日は再診です。このとき、いつから特定疾患療養管理料が算定できるかですが、前に述べた通り、「初診料を算定した日から1ヶ月経過後」ですから、12月5日から数えて1ヶ月は1月4日です。1ヶ月後の同じ日、1月5日から特定疾患療養管理料は算定できます。対象病名が付いた12月10日から1ヶ月後の1月10日からではありませんのでご留意ください。

 

■こんなこともあります

もう1つ例題です。たとえば、12月5日に腰痛症での初診患者さんで、さらに治療継続中の1月20日に高血圧症が主病として付いたとします。このときは、対象病名である高血圧症が付いた1月20日から特定疾患療養管理料が算定できます。1月20日は、初診料を算定した12月5日から既に1ヶ月は経過していますので、このような場合は対象病名が付いたその日から管理料が算定できることになります。損をしないように覚えておかれるとよいでしょう。

 

■点数表の記載にも注意が必要です

点数表には、通知の(3)に「初診から1ヶ月経過した日が休日である場合は、その休日の直前の休日でない日に特定疾患療養管理料の「注1」に掲げる要件を満たせば、1日前であっても特定疾患療養管理料を算定でき る」とありますが、ここで気を付けることがあります。

これに当てはめて例題です。要件は満たしているとして、例えば12月1日が初診だった場合は、1月1日には特定疾患療養管理料の算定が可能になります。ですが、1月1日は休日になりますので、その1日前の12月31日に特定疾患療養管理料が算定できると解釈できます。しかし、これでは減点されてしまいます。理由は…、初診料と同じ月の算定は認められませんのでご留意ください。

 

■「胃炎」での算定に注意!

「胃炎」「急性胃炎」「慢性胃炎」、これらはどれも点数表等の「特定疾患療養管理料の対象疾病表」に対象疾患として載っていますし、電子カルテ上でも対象疾病として設定されています。

しかし、急性胃炎で特定疾患療養管理料を算定すると、審査上は減点されます。

特定疾患療養管理料の趣旨は、「主病となる特定の疾病の治療管理を長期にわたって計画的に行った場合に算定する」というものですから、一部の疾病を除いては急性疾患では算定できないという解釈になります。

慢性胃炎でも減点される場合があります。

これは、薬を処方するための病名ではないのか、というところがポイントであり、内視鏡等できちんと胃の確認ができる医療機関であるか否かが分かれ目になります。

また、急性も慢性も付けずに、ただ「胃炎」とした場合も同様です。胃の保護剤として処方薬のための傷病名であると判断された場合には特定疾患療養管理料は認められませんのでご留意ください。

 

 

■コロナ禍での特例措置

コロナ禍で通院を控えられる患者さんもいることと思います。そんな中、電話再診にて処方をされることもあると思いますが、このときにも日常生活についての指導・管理を行えば特定疾患療養管理料147点が算定できます。(診療所でも200未満の病院でも、一律に147点です)

本来、電話再診時には特定疾患療養管理料は算定できないと決められていますが、コロナ禍での特例措置で、算定要件を満たしていることと、今までにも指導管理を行っていた患者に限り、暦月に1回だけ147点の算定が認められています。

正式名称は、「慢性疾患の診療(新型コロナウイルス感染症・診療報酬上臨時的取扱) 147点」です。

 

■小児科で6歳未満でも算定可

小児科で6歳未満の患者に通常はまるめ算定をしている場合でも、電話再診にて指導管理を行った場合には、電話再診料と特例措置の特定疾患療養管理料 147点が算定できます。

 

一般的によく算定されている特定疾患療養管理料について、いかがでしょうか。知っていることももちろん多いとは思いますが、1つでも新しい情報が提供できていたら幸いです。損をしないように、そして正しく算定してください。

 


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