地域に根ざした泌尿器科を患者様にとどけたい

長谷川 了 先生

はせがわ泌尿器科皮フ科クリニック
院長

人と環境に恵まれたことに感謝

医師として開業というセカンドステージに至ったことを考えたとき、わたしは生まれた環境と人との出会いに恵まれていたと思っています。 わたしの実家は薬剤師の父が調剤薬局を営み、祖父も開業医といった医療と関係の深い環境で育ち、物心ついた頃から自然の成り行きとして、将来は同じように医療と関わりのある仕事に就くのかなあと肌で感じていました。 進学でも惑うこともなく日本大学の医学部に入学しました。専門診療科の選択については、外科志向があったものの、入部したバスケットボール部で親しくなった先輩が泌尿器科を専攻していたことからポリクリで泌尿器科を垣間見ることができ、内科・外科双方の領域をひとりの担当医が担う奥行きの深い診療科ということを知り、泌尿器科を選択しました。 医学部卒業後は、川口市立医療センターで初期研修を終え、日本大学医学部泌尿器科学系泌尿器科学分野に入局、それと同時期に同大学大学院医学研究科博士課程を経て、虎の門病院に勤務。1年後、医局の人事異動で東松山市立市民病院(以下、市民病院)に勤務することになりました。 埼玉県東松山市は、県のほぼ中央にあり、地域区分では西部地域の北端に位置します。また、池袋へ東武東上線のTJライナーで45分というアクセス環境から東京のベッドタウンとなっています。そのため近郊からの労働人口の流入により住民の年齢層は広く、また高齢社会を反映して高齢患者さんも多いエリアです。

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開業を決意させた日本医業総研との出会い

市民病院での勤務は多忙を極めました。その理由は、東松山地域には泌尿器科の常勤医が少ないことから、入院や手術が可能な病院は事実上、市民病院しかなかったということに起因していました。そのため、外来患者さんの待ち時間は1〜2時間が常態化していました。 やがてわたしは、東松山で泌尿器科のクリニックを開業できたら、患者さんが必要とする治療をもっと適切に行うことができるのではないだろうか。常勤医の少ない東松山の人にもっと気軽に専門的な医療を提供したいという思いが膨らみはじめました。 そんななかで、以前から親交のあった大学の先輩で、すでに泌尿器科のクリニックを開業されていたS先生に開業のことを雑談のなかで話していたことから、日本医業総研を紹介されることになりました。紹介されてお会いしたコンサルタントの親泊さんとのファーストコンタクトでは、漠然としたままのわたしの決意や要望に熱心に耳を傾けてくれたうえで、事業やビジネスということよりも、「開業への心構え」や自分自身の今後の「ライフプラン」という基本的な考え方が必要だということをアドバイスしてくれました。 また、東京都内で開業する場合、東松山の基幹となる駅前で開業した場合、駅前ではない場所で開業する場合のそれぞれのメリットやデメリット、開業に当たって想定すべき患者層や患者数、立地条件など、開業に必要な判断材料となる要件について具体的な数字を出して提案していただきました。 それにくわえて、勧められた「医院経営塾」を受講するにつれ、徐々に医師としてのセカンドステージに乗り出すイメージが具体化されてきたように思われました。勤務医時代は臨床一筋に打ち込み、基本的に数字や人事のことなどに直接触れることのなかったわたしにとっては、「医院経営塾」を受講することで、より真剣味が増し、身が引き締まる思いでした。

患者さん目線がクリニックのコンセプト

開業に際しては、日本医業総研から示された詳細なマーケティング調査を踏まえた経営戦略をじっくりと検討し、「よしっ」という気持ちで、当地での開業を決めました。 開業地は、東松山駅につながる幹線道路沿いにあり、車両によるアクセスに優れていました。また、バスや車が市民の移動手段となっていることから、市民病院で担当していた患者さんたちも循環バスや自家用車で来院していただけるということも計画に組み込むことができました。 また、開業後も週に一度、クリニックの休診日に市民病院で泌尿器科の非常勤医として勤務することにもなり、簡単な手術については、わたしが市民病院に紹介状を書き、わたしの担当日に執刀医として手術を行っています。もちろん、紹介先は患者さんのご希望を最優先しますし、市民病院でも他の医師に執刀をお願いしても良いのですが、患者さんの症状について一番理解しているわたしが執刀することで患者さんにも安心していただけているようです。このことは、広域エリア内にある病診連携として機能していると思っています。 クリニックの設計に際しては、アットホームな感じにしたいとの思いから、明るくて親しみやすい雰囲気の内装にしました。設備面については、泌尿器科の検査には必須の広めなトイレなど最新のものを設置しています。また、診療所の前には先ほどもお話したように、地域のアクセス特性をいかすべく、広い駐車場を確保することにしました。 皮膚科を標榜するにあたっては、市民病院の皮膚科担当医に指導をしていただき、皮膚科治療に備えることができました。

開業から今後を見据えて

開業の告知は、ホームページの開設、広域での新聞折込み、エリアを絞っての戸別ポスティングといった活動にとどめましたが、開業前2日間の内覧会では予想を上回る方々が訪れる盛況振りから、改めて、クリニックでの泌尿器科のニーズの高さが感じられ、不安のないスタートを切ることができました。 経営面では、開業初月から親泊さんから提示されていた損益分岐点となる1日患者数40名をクリアすることができ、現在も維持できています。とはいっても、経営に関しては、これからが本番です。患者数ということでいえば、駐車場が一杯になることもありますが、診察のキャパシティ自体は十分に残されていると感じており、増患対策にも力を入れていきたいと考えています。 スタッフは、現在、常勤の看護師が1人、受付スタッフ3人で運営していますが、今後は増員も検討しています。そのためにも地域の皆さんに、ひとりでも多く周知されるよう努力していきたいと思っています。口コミが何よりも大切だと思っていますから、より多くの方々に、「こんな近くに専門クリニックがあるんだ」「泌尿器や皮膚の疾患なら『はせがわ泌尿器科皮フ科クリニック』」といっていただけるよう、親泊さんとも相談しながら新たな広報展開や増患対策をしていきたいと考えています。

継続的な成功を目指して

この地域では、わたしが開業する以前は、泌尿器科クリニックが少なかったため内科、外科のクリニックで泌尿器疾患を受診されることが多くみうけられました。最近では逆に、地域の内科開業医の方々からご紹介を受ける機会も増えてきました。また、前述した市民病院にも週1日、非常勤として勤務していることから、開業医は先進医療から取り残されるのではないかという不安感も払拭できています。 開業して一番良かったと思うことは、自分のペースで診察に専念できる喜びを知ったことです。勤務医時代には、大きな組織での人間関係に気遣い、何をするにしてもスケジュールの調整に苦労することも多かったことから、その点については楽になりました。空いた時間には各種学会に参加でき、地区医師会の活動にも積極的に参加しています。また自分で経営することで医療関係だけでない様々な業種の方々と知り合うことも多くなり、人間としての幅が広がったというか、見識も深まりました。 妻は精神科の勤務医です。開業する3ヶ月前に子どもも生まれ、2人して子育てという新しいことにもチャレンジしています。クリニック経営と子育て、充実したセカンドステージの毎日が過ごせています。

Clinic Data

Consulting reportコンサルティング担当者より

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