地域医療のゲートを担う広域な内科診療と、病院に比肩する専門性をもった感染症への医療提供で若い現役世代患者さんの獲得に成功

佐藤昭裕 先生 インタビュー

KARADA内科クリニック
院長

出身大学での初期研修後、総合診療科に入局された理由からお聞かせください。

学生のころは血液内科に、研修医になってからは整形外科に興味がありました。元々救命救急医療への関心から医師を目指したこともあって、整形外科で多発外傷に取り組むことも考えましたが、むしろ救急外来における高水準な感染対策や患者さんを全身から評価し適切な治療につなげることに私自身の適性が感じられ、まずは内科を広域に診る総合診療科に進みました。

東京医科大学病院から五島中央病院に出張され、そこで感染症を学ばれたということでしょうか。

大学院で微生物を研究していて、感染症についても3年目から取り組んでいました。サハラ以南のアフリカで罹患者の多いマラリアを例にとると、強い遺伝形式の鎌状赤血球によりマラリアに感染しても死に至らない人が多くいます。本来異常ヘモグロビン症自体が疾患なのですが、マラリアに対しては有効なんです。住む環境によって疾患の種類も変わってきますが、人間の身体はそれに対応できるように進化し続けているわけです。私の医学的な興味の根本はそこにあったように思います。大学時代に血液内科に進もうかと悩んだのも、いま考えれば感染症への興味の延長だったのだろうと思います。五島中央病院の勤務は当時の微生物の教授からの紹介でしたが、一般内科を中心に診ながら、感染症対策室も兼任していました。

そうした環境下でHIVも学ばれたんですね。

総合診療科でのHIVは「見つける」ことまでが仕事でしたが、感染者が増えてきたこともあって感染症科で診断から治療まで包括的に診ることになりました。日本のみならず、世界的なプロブレムでもありますし、私自身どんどんのめり込んでいったという感じです。

大学病院や附属茨城医療センターでは、感染制御部・感染症科の管理職にあったわけですが、自院開業というのは目標としてあったのでしょうか。

正直なところ、開業はまったく考えていませんでした。ただ、大学での教育や研究、病院での臨床、学会での活動などからレールに乗った自分自身の未来像が少し見えてきたとき、自分にしかできない仕事をしてみたいという気持ちはどこかにあったのだと思います。それと、それまで私の考えや仕事に何も口を出さなかった父が、意外なことに私の開業を望んでいたのを知ったこともきっかけの一つになったのだと思います。私自身を取り巻くいろいろなタイミングが重なったということでしょうか。

弊社、日本医業総研との出会いは「医院経営塾」への参加がきっかけでしたね。

開業セミナーを受講しようと探していたときに、友人医師から勧められたのが「医院経営塾」でした。まだ漠然としていた開業イメージでしたが、準備段階で何が必要なのか、同時に何が不安要素なのかに気づけたように思います。そのまま日本医業総研とコンサル契約をし、植村さん、加藤さんの開業サポートを受けることになりましたが、彼らの支援がなければ今回の開業は成し得ませんでした。開業後の運営フォローは引き続き加藤さんに、税務・会計は涌嶋さん(税理士法人日本医業総研)にお願いしています。

開業でどのような医療を提供しようとお考えですか。

病院では、感染症医は患者さんへの医療提供だけでなく、同僚医師からも重宝されました。「Doctor’s doctor」ともいわれる所以ですね。でも、大学病院を出ればもっと違う医療を実現できるのはないかという可能性もずっと考えていました。感染症の専門医自体が少ないということもありますが、開業医となるとさらに少数です。HIV患者さんは働いている世代が中心的ですが、大学病院の外来受付は9:00~15:00に制約されていますから、通院するには仕事を休むか、土曜日を犠牲にするしかありません。クリニックであれば仕事帰りなど時間的に余裕をもって受診することができます。総合内科で幅広い疾患に、感染症内科でより専門性の高い医療を提供できることを強みとしていきたいと思います。

開業エリアとして、当初は新宿、渋谷、池袋なども候補だったようですね。

HIVへの対応を考えたとき、ある程度複数路線が乗り入れるターミナル駅で、競合医療機関が少ないエリアを想定していました。結果的に五反田での開業になり、前勤務先の東京医科大学とはやや離れましたが、NTT東日本関東病院や昭和大学病院等とはすでに連携が図られています。また荏原病院や虎の門病院に勤務するかつての同僚から病院では扱わない自費の患者さんを紹介いただいたことで、経営は順調に立ち上がっています。

現在の患者層は先生の想定通りでしょうか。

若い現役世代が多いのは想定の範囲ですが、もう少し高齢者が来てくれてもいいかなとは思っています。男女比率は概ね半々で、性感染症の検査でも半数に迫る約4割が女性です。この比率について当院の女性スタッフは、婦人科のように分娩台に乗る必要がなく性感染症検査への抵抗感が少ないのではないかと分析していますが、保険診療による検査が中心であることも理由としては考えられます。

クリニックの内装デザインは佐藤先生のこだわりでしょうか、都会的なリラックス感があります。

私のこだわりというより、広告業界出身の当院の伊藤事務長をはじめセンスに優れた友人が多く、彼らのアドバイスに従ったものです。ナチュラルなウッドをベース素材に待合室は人が集まる広場をイメージしました。受付カウンターの背面から天井にかけての曲線は樹木を、間接照明は木漏れ日を意識しました。広場だけに床を人工芝にしようという意見もありましたが、いくら何でもやり過ぎだろうと(笑)、床の一部にグリーンを配色し観葉植物で演出しています。

内装もそうですが、ホームページもセンスがよく、利用者に有益な情報が見やすく良いバランスで表現されている印象を受けました。

クリニックがテナントビルの10Fで、前面道路からの視認性も良くないことから、ホームページでの集患を重要視し戦略を練りました。サイト内の基本的なテキストや医療に関する記述は私がまとめましたが、サイトの見せ方は伊藤事務長を中心に構築しました。内科と感染症内科、下方医師が中心的に診る皮膚科を標榜するなかで、内科を入口にしたサイト内の動線設計。とくに、医療従事者と一般の方の理解に差がある感染症や性病検査についてネガティヴに捉えられないように配慮してもらいました。実際、来院動機では約95%の方がホームページの閲覧者です。若い人が多いということもあるのでしょうが、アプローチとしては一定以上に成功していると思っています。

開業から約2カ月で、すでに損益分岐点をクリアされています。今後ますます成長すると思われますが、クリニックの将来像をどのようにお考えでしょうか。

思い描いた通りの医療提供ができているなかで、現在の患者数や経営数値には一定の手応えを感じています。感染症の専門医がその強みを最大限に発揮できるクリニック開業は前例が少ないだけに、当院は新たな医療モデルへの挑戦という一面もありました。このまま成長を続ける先に医療法人化、さらに分院展開も可能性としては考えられます。ただ、当院の事業スタイルをそのまま踏襲した分院とするのか、あるいは特定の専門機能に特化したサービスを提供するのかは悩みどころです。いずれにせよ、挑戦の手を緩めず進化していきたいと思っています。

KARADA内科クリニック
院長 佐藤昭裕 先生

院長プロフィール

医学博士
日本感染症学会専門医
日本内科学会認定医
日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医
日本感染症学会推薦ICD
日本エイズ学会認定医
日本医師会認定産業医
臨床研修指導医
身体障害者福祉法指定医

2008年 東京医科大学 卒業
2008年 東京医科大学病院 初期臨床研修
2010年 東京医科大学病院 総合診療科
2012年 長崎県五島中央病院 内科
(感染症対策室兼任)
2013年 東京医科大学病院 感染制御部・感染症科 助教
(渡航者医療センター 兼任)
2018年 東京医科大学茨城医療センター 感染制御部部長・感染症科科長 講師
東京医科大学病院 感染制御部副部長・感染症科医局長
(東京医科大学茨城医療センター 感染制御部部長兼任)
2019年 KARADA内科クリニック 開設

Clinic Data

KARADA内科クリニック

感染症内科 内科 皮膚科

東京都品川区西五反田1-2-8 FUNDES五反田10F

TEL: 03-3495-0192

https://karada-naika.com/

お問い合わせ