子どもの体の内面を知り尽くした小児外科の視点と、連続性をもった密な地域連携でお子様やご家族とともに歩んでいくクリニックでありたい。

小森広嗣 先生 インタビュー

小森こどもクリニック
院長

小児外科は専門医の数自体少なく、小森先生のような指導医となると、国内にわずか300人程度だとうかがっています。先生が一般的な外科や小児科ではなく、あえて少数派の小児外科を選ばれた理由からお聞かせください。

大学時代にたまたま受けた小児外科の講義ですね。小児外科の基本は、「本来あるべきものをつくる」ことにあります。生まれつき肛門のない子に肛門を造設する、腸や食道が機能してなければ正常につなげてあげる。子どもが生きていくために必要な身体機能のベースをつくって、その後の成長をフォローしていくという医療に初めて触れて、「すごいことをやってるな」と感じました。その時点で、診療科の選択は小児外科と決めていました。

一般的な外科治療と小児を診ることの大きな違いは何でしょうか。

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現在の外科治療を代表する「がん」であれば完全切除が手術の目的です。もちろん術後の再建もありますが、基本はとったら終わりなんですね。一方、小児外科の場合は、欠損した部位をつくる治療です。さらにつくった後、機能を正常に回復させなければ治療は完結しません。肛門の造設を例にあげれば、術後に本人が身体の一部として肛門の感覚をつかみ、スムーズに排泄させるための肛門括約筋を鍛えるトレーニングが大事になります。子どもは成長しながら学び、生きる能力を身につけていくものです。小児外科医の役割は術後も5年、10年という単位で子どもに寄り添い、継続的にフォローしていくことにあると私は考えます。一般的な外科との違いをあげるとしたら、「とる」ことが目的ではなく、「つくる」ことが治療の出発点だということがいえます。

小児外科の分野では、「こどもはおとなのミニチュアではない」ということをよく言われますね。

実際に全然違うので、大人の医療の常識は通用しません。子どもの心身は発育の途上にあって、リアルタイムに機能が変化しますから、どのタイミングでどうアプローチするのがベストな選択なのかを個別に判断することが重要になります。これは外科領域だけでなく、泌尿生殖器など整形外科と脳神経外科を除くすべての領域に共通するものです。

新生児から思春期、つまり生まれてから大人の身体が形成されるまでを網羅し、しかも疾患には個別性がありますから、幅広くかつ深い医療領域ということになりますね。

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本当に広くて深いですね。そして深く突き詰めるほど治療の壁にぶち当たります。大人の場合は、「0」か「1」かの2つのデータで示せるエビデンスが確立されていますが、子どもの場合は連続的な変化をアナログでとらえなければなりません。たとえば現在の評価が30点だとしたら、その子の成長発達の過程や家庭環境、親御さんの考え方なども踏まえて、30点に今何を加えることが適切な選択なのかを考えます。小児外科といっても手術は一つの方法論でしかありません。その子の将来像を想像しながら今やるべきことの答えを導き出す、それを考えるのも小児科の面白さです。

治療の手技だけでなく、想像力も必要ということですか。

小児外科医療の先達たちは、治療に一定の目安はあっても、子どもの個別性に対して何がベストなのかを常に考えなければならないことを説き実践されてきました。「なるほどなー」と思いつつ最初は定石どおりの治療しかできていませんでしたが、研鑽を積み経験値があがってくると、自分なりに治療のゴールが定められるようになります。子どもの治療の最終目標は、しっかりと一人立ちし一人前の大人に育ててあげることです。そのハンデを低減させつつ、成長プロセスをプランニングするのが小児外科医です。その考えは、東京都立小児総合医療センター(以下、小児医療センター)で勤務してきたことの学びですが、病院でもクリニックでも基本は変わらないのではないかと思っています。

一般的な小児科クリニックは内科的な視点から診療をするイメージがあります。クリニック外来で小児外科の専門性をどう強みとして発揮されていきますか。

小児医療センター勤務における子どもの急性症状の場合、心筋炎・髄膜炎・脳炎などは内科で、虫垂炎・腸重積・腸閉塞などお腹の中に関わる疾患を外科が診てきました。外科の外来でも、クリニックで対応可能な症状は少なくありません。
私自身は開業医としての勉強は実践を重ねながら深めていきたいですし、地域医療につても諸先輩方にご指導いただきながら少しずつ学んで行きたいと思っていますが、それを実現するためにも、身近なかかりつけ医として受診のハードルを下げ、子どもの体の内面を知り尽くしている小児外科医の強みを発揮しなければならないと思っています。

治療方針の親御さんへの説明で、特に意識していらっしゃることは何でしょうか。

根負けせずに、粘り強く指導にあたることですね。たとえば、便秘で苦しむ子どもはとても多いんです。一般的に下剤や座薬、浣腸などが処方されますが、皆さん、長期間薬を使い続けることに抵抗感があるようで、自己判断で治療が中断されてしまうことが度々起こります。そこで親御さんに、「お子さんにとっての自立って何でしょうか?」と伺うようにしています。その答えが治療の目標になります。まず目標を共有したうえで治療プランを立てて、「今は浣腸を徹底的にやっていきましょう」と指導し続けることです。私たちはこれまで10年、20年という単位で浣腸を併用しながらトレーニングを積み、自立させていく現場を目の当たりにしてきましたから、半年や1年の浣腸など全然問題ないわけです。当院にも開業時から通院している便秘症の子どもがいますが、2カ月足らずの継続治療で本人が楽になっただけでなく、子どもの排便の悩みから解放されたお母さんの表情が明るくなりました。お母さんの治療への理解は、子どもにパラダイムシフトを起こさせる源にもなるわけです。

患者である子どもとのコミュニケーションで気をつけているところは?

同じ目線に立つということですね。ときに、理解して欲しいという気持ちのあまり、やや厳しい口調になることもありますが、仲間やパートナーとしての視点で接していれば必ず上手くいきます。
小児だけでなく、思春期の子も数多く診てきました。以前、小児医療センターで中学生の女の子が入院していたのですが、手術が嫌ですぐに夜逃げしちゃう……(笑)。少し精神的に不安定な時期でもあったのですが、私は毎晩のように病棟を訪ねて理解を深め合ってきました。その子は現在、看護大学で学んでいます。今もクリニックに来てくれているのですが、今となっては当時の手術のことなどお笑い話です。私との信頼関係が、彼女を医療者の道へと導くきっかけとなったのであれば医師冥利ですが、自分なりのスタンスで疾患を受容し、闘病での気づきを糧に頑張っていこうとする子が多いのは本当に嬉しいものです。

子育てに不安を持つお母さんも多いですよね。

小児医療センターに勤務していたときは、お母さんの不安には1時間かけてでも徹底的に話し込んできました。お母さんの言葉に傾聴し、お母さんの過ごす日常をイメージしてその空間に入ることで苦痛を理解し丁寧に言語化していきます。そこから解決への突破口を切り開いていくわけですが、なかには間違った思い込みにとらわれている方もいらっしゃいます。それでも最初から否定はしません。1回でダメなら、2回、そして3回と段階を踏んで方向を変えるようにします。
ただ、クリニックで今後患者さんが増えていくと、そこまで時間を割くことは現実的に不可能です。子育て経験をもつ看護師などと協働し、チームでカバーする体制を整えたいと考えています。

ところで、小森先生は開業コンサルに先立ち、弊社主催の医院経営塾にも参加されました。受講されての印象をお聞かせください。

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医院経営についてまったく未知なところから基礎を学ぶという点で参加して良かったと思っています。実際に自分で電卓をたたいて数値的な根拠を知ることで経営のリアルを疑似体験することができました。ただ、計算は結構間違えましたけど(笑)。
それと、受講中にスタッフの皆さんと1対1で接することができたのがその後のコンサルやフォローへの安心感につながっていると感じています。現在開業後のフォローをしていただいている加藤さんも医院経営塾で面識をもちましたし、税務・会計顧問をお願いしている涌嶋さんからは受講の場で、「領収書はどう処理したらいいか」「損益分岐点って?」など細やかな個別レクチャーを受けることができました。この医院経営塾でのコミュニケーションから信頼関係が醸成されてきたように思います。これから開業をしようとする医師には必須の講座だと思います。

開業立地については、相当こだわりがあったようですね。

結果として、開業物件は自宅と小児医療センターと狭い三角形の位置関係にあります。最初からこだわりありきというわけではなく、物件決定までの紆余曲折のなかで、「失敗は許されない」「自宅の近くで家族との生活も大切にしたい」「小児医療センターに近い方が連携を図りやすい」「つくづく国分寺が好きで、ワクワクしテンションも高まる」と要件が整理されていきました。日本医業総研の植村さんとも徹底的に条件を擦り合わせ、鋭い切り口で提案いただいたのがこの物件でした。植村さんは国分寺エリアの特性を十分把握されているだけに、生活動線との位置関係も理にかなっていて、賃料も低く交渉していただきました。私はほぼ直感で開業するのならこの物件だと決めました。

最後に、先生ご自身、あるいはクリニックについてどんな将来像を描かれていますか。

正直なとこと、経営者の自覚はまだありません。開業して改めて感じるのは、スタッフやコンサルタントの皆さん総出で無事に立ち上げていただいたことへの感謝です。
毎週水曜日に小児医療センターでの勤務を続けることで密な連携を図りながらも、目線は常に地域に置きたい。そして、地域で子どもたちの健康を守りつつ、小児科医療に少しでも独自性を発揮できたらいいですね。今はまだその出発点に立ったに過ぎません。私自身が成長するためにも、医師として、経営者としてまだまだ勉強しなければならないと感じています。

小森こどもクリニック
院長 小森広嗣先生

院長プロフィール

医学博士
日本小児外科学会 専門医・指導医
日本外科学会 専門医・指導医
1998年 慶應義塾大学大学医学部卒業
1998年 横須賀米海軍病院インターン
1999年 三井記念病院 外科医員
2003年 慶應義塾大学病院 小児外科助手
2007年 東京都立清瀬小児病院 外科医員
2008年 慶應義塾大学医学部 医学博士取得
2010年 東京都立小児総合医療センター 外科医員
2013年 東京都立小児総合医療センター 外科医長
2017年 医療法人社団あんず会 八幡ファミリークリニック 小児科院長
2018年 小森こどもクリニック 開設

Clinic Data

小森こどもクリニック

小児科 小児外科

東京都国分寺市本多2-3-3

TEL: 042-322-5585

http://komori-kodomo.com/

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