2011年8月15日

独立を成功に導く開業指南 開業前に知っておきたい人事労務 第2回

求人広告のポイント

目を引く工夫と正確・詳細な労働条件記載が、良い人材確保につながる

「オープニングスタッフ」を強調せよ

患者とスタッフが密接に関わる仕事柄、診療所にとって良い人材の確保は成功のための必須条件である。
求職者の誰もが「環境の良い診療所で働きたい」と考えることから、嘘でもいいから好条件を記載すればよいのか?
もちろん答えは「否」である。
最近は、求人広告の掲載内容から起こるトラブルが多発している。
「求人広告には試用期間中の時給が下がるなんて書いてなかったじゃないですか!」――。
採用後にそんなやりとりをしないために、何より良い人材を確保するために、
目を引く工夫と、正確かつ詳細な労働条件の掲載が重要なのである。
まず、数ある求人広告のなかから選んでもらうために、視覚的にインパクトを与える必要がある。
どんなに良い条件を記載しても、見てもらえなければ意味がない。
新規開業であれば「オープニングスタッフ」の文字を大きく入れるといい。
医療従事者は、いわゆる“お局スタッフ”などとの人間関係で苦労したことが多く、
転職するならスタートが同じ「オープニングスタッフ」として勤務したいと考えている人が少なくない。
筆者の経験でも面接で「求人広告のどこに惹かれて応募したのか?」と尋ねると、
そのことを挙げる人がほとんどである。
また、診療所のオープンを知らせるメリットもある。

軽率な対応がトラブルのもと

次に、労働条件の記載が重要である。正確かつ詳細な内容を記さず、後になって起こるトラブル事例として、
ある院長からこんな相談を受けた。
「勤務時間はまだわからないから、とりあえず診療時間を書いておいた。
そうしたらスタッフが『診療時間前後は、子どもの保育園の送り迎えや家族の食事づくりがあるため働けない』と言い出した。
診療時間前は掃除もしてほしいし、ミーティングもしたい。診療時間終了後も患者さんが来るから、すぐに帰られると困る」
また、別のケースではスタッフから
「夏休みがあると書いてあったのに実際にはなかった!」「社会保険完備と書かれていたのに、なぜ厚生年金に入れてもらえないのか?」
といった苦情を寄せられたこともある。
求人内容と実際の労働条件にミスマッチが生じると、「騙された」と主張してくるのは当然だ。
しかし、院長は「そのくらいいいじゃないか」と軽く考えてしまうため、トラブルに発展する。
良い人材を集めるために安定した基盤をつくりたいのであれば、正確かつ詳細な労働条件の記載が必要になる。
開業前に細かい労働条件を決めることは難しいと思われがちだが、綿密な事業計画のもとで専門家に相談しながら進めれば、
決して不可能ではない。
採用後に無用なトラブルを起こさないように配慮することが、求人広告の最大のポイントだ。

次回は、書類選考と面接時の注意点について説明する。

高橋友恵 たかはし・ともえ
社会保険労務士。株式会社日本医業総研人財コンサルティング部マネージャー。
診療所での人財育成に関するコンサルティングを担当。診療所特有の労務管理業務に携わり、200件以上の関与実績を誇る

 

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