2011年8月15日

独立を成功に導く開業指南 開業前に知っておきたい人事労務 第1回

面接と解雇の関連性

トラブル回避のための最大のカギは面接にあり。採用方針を明確にせよ

トラブルに発展しない解雇はない

「解雇したいスタッフがいるのだけれど、トラブルに発展しないようにするにはどうしたらいいだろうか?」
最近、こんな相談が増えている。
厚生労働省が毎年5月に発表している「個別労働紛争解決制度施行状況」によると、
全国の総合労働相談コーナーに寄せられた総合労働相談件数は約114万件(2009年度)。
このうち最も多いのは「解雇」についてである。
これを裏付けるように、
スタッフが「万一解雇されたら、とりあえず労働局に行ったほうがいいらしい」などとやり取りしている診療所も見られる。
労働局への相談は、コンビニに行くような気軽な感覚なのである。
冒頭の質問に回答するならば、「解雇したい」と思っている時点ですでに何らかのトラブルが起きているのであり、
「トラブルに発展しない解雇」を願うこと自体が無理な相談だ。
そもそも、なぜ解雇したくなるようなスタッフを採用したのかが問題である。
採用しなければ解雇することもなく、トラブルになることもない。
つまり、「面接」の段階で、自院に必要かどうかを見抜くことこそが一番のトラブル回避策と言えるのだ。

面接時に押さえておきたいポイント

私がさまざまな院長に聞いた「解雇したい理由」には、「指示に従わない」「ほかのスタッフとの協調性がない(いじめている)」
「スキルが足りない」などが挙がっている。
そして、面接の短い時間ではそれらを見抜くことができないと言うのだ。
では、面接にはどのような姿勢で臨めばいいのだろうか? ポイントは次の3つである。
①自院の方針を明確にし、ベクトルの向きを定める
②欲しい人物像、信頼できるスタッフ像を明確にする
③院長自身が納得できるまで時間をかける
想像してほしい。面接で、「患者さんに身近に感じてもらえる診療所を一緒につくってほしい」と真剣に方針を伝えている時、
未経験者のAさんは輝く目で話を聞き、十分なスキルを持ったBさんは首をかしげている。
皆さんはどちらのスタッフを採用するだろうか?
聞いている態度から、Aさんを採用する人が多いのではないだろうか。
しかし、③を見落としてはならない。
Aさんは経験がなく育成に時間がかかることを「院長が納得」していなければ、
「いつまでたっても戦力にならない」と、ほどなく「解雇したいスタッフ」と化してしまう。
採用後にミスマッチが生じないようにきちんとした採用計画を立て、院長自身が責任をもって教育していける人材かどうかを見抜くことが重要だ。
見抜けるまでは「何日かけてもいい」という腹積もりで臨んでもらいたい。
次回は、採用の入り口となる求人広告について述べたい。応募者の視点から効果的な求人のポイントを、事例を交えて説明する。

高橋友恵 たかはし・ともえ
株式会社日本医業総研人財コンサルティング部マネージャー。診療所での人財育成に関するコンサルティングを担当。
診療所特有の労務管理業務に携わり、200件以上の関与実績を誇る

 

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