2011年8月15日

独立を成功に導く開業指南 事例に基づく人材育成 第7回

採用手続きの要諦

きちんと法律に則って作成された雇用契約書や就業規則などへの、十分な合意を得て採用すべき

労働者のほうが法的知識が豊富

面接が一通り終了すれば、いよいよ採用手続きに入るが、その前に不採用者への通知についての注意点を述べておく。
本誌8月号でも説明したように、診療所の求人は地域密着型で行うことが多い。
ということは、応募者の多くは地域住民の方々であり、自院が開業するエリアの患者さんになりうる方々でもある。
さらに、その家族や友人が患者さんとして来院する可能性もある。
不採用者への通知は、こうしたことを前提として、心証を損なわないように十分配慮しなければならない。
筆者は、履歴書の返送の際に手紙を添付したり、面接後不採用者にはさらに図書カードなどの粗品を送付するといった対応を
アドバイスしている。
採用手続きの話に移ろう。
最初に認識していただきたいことは、「スタッフを一人でも採用すると、さまざまな法律が伴ってくる」ということである。
労働基準法、労働契約法などの基本的な法律だけではなく、雇用保険法、パートタイム労働法、労働安全衛生法、
最低賃金法、労働者災害補償保険法、育児・介護休業法などの法律に基づいて採用手続きを進めていく必要がある。
これらの法律は基本的に労働者(スタッフ)の権利を守るための色合いが濃いものとなっており、
最近はインターネット上に関連する情報が氾濫しているため、労働者のほうが知識が豊富であるという前提で考えていくべきである。
具体的には自院の雇用契約書、就業規則がこれらの法律上のポイントをきちんと押さえたうえで作成されたものかどうかが重要だ。

職場のルール説明も忘れずに

診療所経営には人事面のトラブルがつきものである。
私の経験則では、この点をいいかげんに処理している診療所ほどトラブルが起こる頻度が高く、
発生したトラブルの傷口が大きくなりやすいという傾向が強い。
しかし、開業する医師の多くは、労務関係の法的知識に実に乏しいと感じられる。開業前の限られた時間のなかで、
多岐にわたる関係法令の条文を熟読することも大変な作業であるため、
現実的には信頼できる社会保険労務士や開業コンサルタントのアドバイスを受けながら就業規則などの作成を進めていくべきだろう。
一方、重要なわりに意外と忘れがちなのが職場のルールづくり。
退職するには何日前に連絡をするのかということから、休暇の申告の仕方、掃除は当番制でやるのか、勤務表は誰が作成するのか、
などの細かい点まで曖昧にしないことが肝要。
採用手続きを行う際に、できればこうした細かい点まで説明し、十分なコンセンサスを取ったうえで雇用契約を締結するように心がけたい。
よい組織は整備された規律のうえに築かれていくものであり、採用手続きがそのスタートラインになると認識すべきである。

植村智之 うえむら・ともゆき
株式会社日本医業総研東京本社シニアマネジャー。過去300件の医院開業を成功に導いた同社の創業メンバー。
自身も50件以上の開業に関与し、そのすべてが軌道に乗っている。スタッフのモチベーションアップ研修、労務トラブル解決対策などに定評がある

 

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