2011年8月15日

独立を成功に導く開業指南 事例に基づく人材育成 第1回

「組織をつくる」役割
自院の評判を左右するだけに日々取り組むべきスタッフのマネジメント

多発する人的トラブル

それは、私にとっても衝撃的な光景であった。
開業コンサルティング先の開院初日、多くの患者さんがお見えになり、関係者全員がほっとしていた。
ところが診療終了直後のこと、院長が大きな期待を寄せていたオープニングスタッフのAさんが
「このままでは仕事を続けられない」と言ってきたのだ。
彼女の言い分は「こんなに患者さんが来たら、毎日帰るのが遅くなり家事が疎かになってしまう。
私だけでも定時に帰らせてください」というもの。
開業前の研修でリーダー的存在となり、他のスタッフを先導してくれる姿を見て、院長は期待を膨らませていた。
より多くの患者さんに来院していただきたいという願いをAさんも共有してくれているはずだと思っていただけに、
院長のショックは相当大きかった…
医院開業の現場では、このような人にまつわるトラブルは決して珍しくはない。
つまり、院長の日常業務は診療や資金繰りなどとともに、日々のスタッフのマネジメントが避けて通れないものとなる。

活性化した組織をつくる立場に

当社では、医院開業を志されている勤務医の方々を対象とした経営の勉強会
「勤務医のための医院経営塾」を開催している。経営戦略、資金計画、人事労務、経営管理という4つの
ノウハウを身につけ、開業時には医院経営のセミプロの状態でスタートしていただくことが主旨である。
そのなかで私が講師を務める第3講「人事労務集中講座」が先日行われ、満席となった会場には
勤務医の皆様の本当に真剣な眼差しがあふれていた。
それは第1講、2講の「経営戦略」「資金計画」の時よりもさらに真剣度が増していた印象である。
その講義では、開業するというのは「組織を構成する人」から「組織をつくる人」へ立場が180度変わることであり、
院長の仕事は、活性化した組織をつくり上げていくことであるという話をする。
おそらく多くの勤務医の方々は開業して初めてそんな立場を経験し、試行錯誤を繰り返しながら
自分のスタイルを確立していくことになるだろう。
しかし、それは失敗の要因にもなりやすい。
開業後半年ほどは地域住民へのお披露めの時期であり、この時期の自院の良い情報も悪い情報も
口コミで広がっていくものだ。
スタッフの対応がすべてではないが、患者さんと接する時間は院長よりスタッフのほうが長い場合が多い。
このことからも、医院開業において「組織をつくる」ことがいかに重要かをご理解いただけるであろう。
冒頭でご紹介したAさんの事例は、その作業が一筋縄ではいかないことを表している。
では、どのようにすればうまくいくのか。次回から、口コミを生む人材(人財)選びと教育のポイントについて、
事例を交えながら説明していきたい。

植村智之 うえむら・ともゆき
株式会社日本医業総研東京本社シニアマネジャー。過去300件の医院開業を成功に導いた同社の創業メンバー。
自身も50件以上の開業に関与し、そのすべてが軌道に乗っている。
スタッフのモチベーションアップ研修、労務トラブル解決対策などに定評がある

 

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