[N整形外科]地域の生活動線を的確に捉えた立地選定が開業を成功に導く

N先生はM医科大学卒業後、K大学整形外科に入局。医局派遣による数ヶ所の総合病院で研鑽を積み、F総合病院の外科部長に就いていた。医局入局から22年。そろそろ独立をと意識し始めた頃、電子カルテの展示会場を視察中に日本医業総研の植村を紹介された。
開業の意志は固まりつつあったものの、具体的なプランには至っておらず、N先生は担当の植村によるヒアリングを重ね、コンセプト立案から立地選定、資金計画等の開業までのプロセスを1つひとつ確認。
いよいよ開業の像が鮮明に見えてきた。

物件探しのポイントは地域の生活動線を見抜く眼力

N先生の自宅は都下M市。過去に勤務してきた病院もその周辺エリアに多い。開業の立地選定にあたり、植村は先生の自宅から近く、土地勘もあり、病診連携の面からもメリットが見込める、M駅周辺エリア、N駅周辺エリア、S市全域での3エリアでマーケット調査をスタートした。
最初に入手した情報はM駅前に営業するパチンコ店の建て替えに伴うテナント募集だった。M市の中心を成す周辺は、住民にとって日常のあらゆる生活ニーズを満たす一大拠点として完結している。ところが、条件交渉に入る段になっても、テナントを受け入れるビルオーナーの意思決定がなかなかされない。長期賃借を前提とした医療施設にとって、テナントを誘致する側の考え方が定まっていないのは不安要素だ。エリアを切り替え、植村が次に調査したのが、M駅に隣接するS駅。
S市の中心的商業地域だ。周辺をリサーチすると、生活動線にある特殊性が見られた。S駅周辺には駅ビルを始め、-通りの施設が整っており、若者を中心に賑わっているが、近くに幹線道路がなく、雑多なイメージが強い。ところが、駅から北へ延びる商店街を、5分ほど歩き交差する県道の向かいに建つ高級百貨店『I』の周辺は、駅前とは全く違う、落ち着いた雰囲気を持っている。
この百貨店周辺は、かつて大規模な米軍の医療施設が存在し、日本への返還後、跡地利用として、住宅施設、商業施設、文化施設、教育施設、公園などが整備されたエリアである。住宅地図を確認すると、そのエリアを中心に北方向へ扇状にベッドタウンが拡がっているのがわかる。
まさに、“扇の要”として生活動線が集約されるのが、このエリアだったのだ。
生活者にとっては、自動車での移動がしにくい駅周辺よりも、この百貨店周辺で所用が満たされれば、はるかに利便性は高い。近隣には幼稚園までを付属に持つ女子大学があることで、風俗営業店などもなく、治安面でも安心な立地だ。事前の周辺の競合診療所調査では、駅から徒歩3分圏内に、2件の整形外科が存在する。地元でのヒアリング調査を行った結果、1件はかなリ老朽化が進み、代わって駅前ロ-タリーに面したテナントビルに入居する整形外科に患者が流入しているのが伺える。
但し、患者がオーバーフロー気味で、時間も長く、患者のストレスも多いことが分かった。勝算を確信した植村は、I百貨店を基点に、ピンポイントでの物件調査に取り掛かった。

経営基盤の安定化を最侵先した賃料交渉

2,3の候補が上がったものの、植村にはどうもしっくりこない。例え賃料が条件をクリアしていても、駐車場や歩道の有無、道路との位置関係、建物の形状などそれぞれに何らかの不満がある。成功例も失敗例も熟知しているコンサルタントにとって、立地選定には一切の妥協が許されない。幾度も現地に足を運ぶなかで、植村の眼に留まったのは、I百貨店から程近いショッピングセンターの
1階、路面店に貼られた空室の文字だった。他のテナントを調べると、医療モールではないものの、内科、歯科、婦人科も入居している。また近隣のビルには耳鼻咽喉科、眼科、調剤薬局なども開業している。このエリアだけで日常の一通りの医療サービスが提供できる。ここであれば新規の開業でも、地域での認知は早期に浸透しそうだ。物件は、全面ガラス張りの間口の広いファサードを有し、明るく開放感に溢れている。またビルの地下には100台を収容する駐車場を備えている。歩行での移動に苦痛を持つ患者も多い整形外科にとって、これらの条件は大きなアドバンテージとなるはずだ。
ところが、1階ということもあり、テナント貨料は想定よりはるかに高い金額を提示された。植村は長期賃貸契約を前提に交渉に挑んだ。診療所を経営するうえで、最も厳しいのは損益分岐点をクリアし、経営基盤の安定を見るまでの開業後1~2年間だ。
そこまでの固定経費は最小限に留めたい。
そこで植村は賃貸年数に応じて賃料を上げるスライド家賃を提案した。数回の交渉を経て、入居からの2年間を、オーナーの希望する賃料の70%程度に抑えることでようやく合意に至った。ほぼ事業計画通りの金額だ。
コンサルティングの開始から約1年後、N整形外科クリニックは開業となった。開業後の実績は順調に推移し、3ヶ月目で既に損益分岐点をクリアしている。コンサルタントにとっても嬉しい誤算だ。

コンサルティング担当者よりConsulting report

・まず候補エリアの生活動線を的確に把握することが重要
・賃料の交渉はただ値引きを依頼するだけではなく、長期的な視野に立ち、柔軟な発想で双方のメリットを見つけ出す

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