開業3年目での「成功」に止まることなく法人化後のさらなる「成長」を目指す

奥村 匡敏 先生

おくむらクリニック
院長

地域ニーズに応えた精神科と老年内科、往診の3本柱

わたしは、小学生の頃から自分が不器用だという自覚と運動が苦手という意識があり、子どもながら自分の将来像に不安を感じていました。その克服のために、勉強に励むようになりました。 また、当時のわたしは、確固たる動機があったわけでもなく、ただ漠然と「将来は医師になる」という考えをもっていました。奈良県立医科大学に入学したのも、わたしとしては自然の成り行きでした。 医学部卒業後は実家のある和歌山へ戻り、和歌山県立医科大学附属病院で臨床研修を受けることになりました。同院での外科や内科、救急等を経験できたのは、精神科医を目指していたわたしにとっては、医師としての視野を大きく広げることにもなりました。 その後、楓こころのホスピタル、国保日高総合病院、和歌山県立医科大学勤務を経て、平成25年8月、「おくむらクリック」を開院することになりました。 勤務医時代に同じ医局の医師仲間と、「これからは老年精神医学だろう」という話題が出たことがあり、そのことが認知症を中心にした開業後の診療へ結びついています。 精神科と老年内科を標榜したのは、精神科を中心にしつつも高齢者に多い合併症に対応するクリニックをアピールするとともに、精神疾患をもつ患者さんやご家族等にとって受診しやすく、治療を継続しやすい印象を持っていただけるのでは、という思いをこめたものです。また当院では、在宅の患者さんやご家族からのニーズが高い往診サービスを行っています。

okumura_ph02

「市井で望まれる」クリニックを日本医業総研との共同作業で実現

開業しようという考えは、「医師になる」と思っていたことの延長線にあったと思います。それが具体化しはじめたのは、和歌山県立医科大学で再び勤務するようになってからです。  しかし開業を目指すといっても、経営に関するノウハウ等はありませんでした。「開業するには多額の資金が必要だ」という程度の知識しかないなかで最初に相談したのが、和歌山県医師信用組合でした。信用組合からは、開業するには、まずコンサルタントのサポートが必要ではないかとアドバイスをいただき、コンサルタント業界の一覧を見せていただきました。そのなかで目にとまったのが、医療分野に特化していると感じられた日本医業総研です。その後、日本医業総研と連絡を取り、平成23年末に面談の機会を持ちました。 面談後は、誰に相談することもせず、1人で開業について考え続ける日々を過ごしました。そして面談から約1年後、「大学に退職願を提出したので、開業の準備をはじめたい」と再度、日本医業総研と連絡を取りお会いしました。 開業するにあたっては、独立・開業する以上は大病院と同じことをしたら意味がないという思いから、「大病院の外来では行き届かない、市井で望まれている医療を実現したい」という方針を打ち出しました。 その一つが往診です。精神科領域での往診へのニーズは常にありましたが、それに応える医師は少ないのが現実でした。わたし自身、勤務医時代には往診の経験がありませんでしたが、特に認知症関連の患者さんやご家族には、往診のニーズが高いと感じていたことから、開業後の大きな柱として往診を取り入れることにしました。 立地選定にあたっては、わたしの出身地でもあり、勤務医として長年過ごした和歌山での開業を希望しました。実際の物件探しは日本医業総研にすべてお任せすることにしました。日本医業総研からは、いくつかの候補物件を提案していただき、最終的にはバスや電車の便がいい、現在の和歌山市内で開業することになりました。また、決定にあたってのもう一つの決め手となったのは、市内とはいえ、移動手段がマイカー主体となっているため、駐車スペースの確保が大きなポイントになりました。 この他、日本医業総研には資金調達や事業計画の立案、各書類作成等の実務をすべてお預けすることで、わたし自身は、提供する医療サービスの検討に集中でき、プランニングと実行という分担ができたということが、大きなメリットになりました。その結果、開業は一気呵成に進めることができ、平成25年の夏に開院へこぎつけることができました。 開業の1ヶ月目は赤字でしたが、2ヶ月目には損益分岐点をクリアでき、経営は黒字に転換しました。この8月で3年目を迎える現在は、外来患者数が月間458名、往診件数は月間約100件と、患者数・往診件数とも着実に増加しています。 わたしなりに日本医業総研とのかかわりが有益だったことと、開業の「成功」を実感しています。

予想以上に大きかった認知症関連ニーズと往診の需要

当院の患者さんは高齢者が多く、認知症関連の方が全患者数の半分ほどを占めています。これは、それだけ認知症に悩まれている方が多いということだと思っています。 認知症を患う方の場合、避けて通れないのがBPSDの症状です。入院施設を持たないクリニックでは、アルツハイマー型認知症のBPSDに対しては中核症状に適応する治療薬を処方することにしていますが、基本的には精神科をもつ大学・総合病院や市内の病院へ紹介を出し、退院後は当院が切れ目なく在宅ケアを行う連携を取っています。 当院の特長のひとつでもある往診の忙しさは、想像以上でした。いまは13時から16時まで往診をしていますが、1日5件を回ればいっぱいで、昼食は車中のおにぎりですませることも少なくありません。それでも往診を続けるのは、認知症に限らず、精神科の治療には、患者さんの安心できる場で話をすることと在宅での服薬管理や精神療法を行うことが大切だと思うからです。 また、開業当初から地域のケアマネジャーさんや訪問看護の方からの連絡が多くありました。ケアマネジャーさんたちは自ら積極的に動き、認知症の診察ができて往診にも応えられる医師として紹介してくださっています。これもまた、望ましい地域連携の姿であり、経営面を支える増患にもつながっていると思います。

「成功」に止まることなくさらなる前進に向けて

この9月には、医業総研のアドバイスもあって医療法人への移行が予定されています。 開業について一定の成功を収めることができたその背景には、地域医療のニーズに応えた老年内科の診療科目、認知症や精神疾患に求めている往診の実現等が奏功したと考えています。 開院してからの生活に不満はありません。多くの患者さんたちと密に接することができるなど、大学にいたら難しかったことも実現できています。難をいえば、時間は慢性的に不足気味で、まとまった休息がとれないのが贅沢な悩みといえばいえるかもしれません。 とはいえ、常に新しいアクションは起こしていきたいと考えています。遠隔診療の可能性を考えポケットドクターに登録しましたし、今後は、患者さんや関係者の方々のニーズに応えられる医療スタッフの増員も考えています。 スタッフの採用プラン等は日本医業総研の山田さんと相談して客観的な判断をいただきながら、現実に即した実行をしていきたいと思っています。 いずれにせよ「ここまででいいかな」と思ったら成長はそこまでです。 それに何事も一番というのが重要なことだと思いますから、今後は地域高齢者医療の支えとなるクリニックとして、日本医業総研のサポートを核に一層の成功へと歩んで行きたいと思っています。

Clinic Data

Consulting reportコンサルティング担当者より

お問い合わせ