医局員時代から研鑽を積んだ関節リウマチへのアプローチ
先生が診療科に整形外科を選ばれたきっかけからお聞かせください。
学生時代の臨床実習と初期臨床研修の際に経験したことが整形外科を選んだきっかけです。整形外科的な疾患は、外傷など急性期患者さんも多いのですが、変形性膝関節症などの慢性疾患に対しても、適切な治療・手術によって寛解される方が多くいます。「よくなりました。ありがとうございます!」と笑顔で言って帰られる患者さんの姿を見て整形外科医を志しました。
先生の業績を拝見すると、関節リウマチに関する学会発表がはっきりと見て取れます。病院ではリウマチ医療にも取り組んでこられたのですか。
整形外科に進むにしても、患者さんを全人的に診ていきたいと考えていました。大阪公立大学整形外科に入局後、関節リウマチの分野で、臨床研究・基礎研究を並行して取り組んでいたリウマチ外科グループの指導医に感銘を受け、門戸を開いていただきました。大阪公立大学整形外科のリウマチグループでは多くの臨床研究のテーマがあり、私自身も数多くの学会発表を経験させていただきました。
関節リウマチ治療も、炎症性疾患に用いられる生物学的製剤の投与で有効性が期待できるようになりましたが、患者さんの個別性や経済的な負担など、治療のチョイスには十分な考慮が必要ですね。
近年関節リウマチに対する薬物治療の進歩と治療目標:Treat to Target(T2T)の確立により疾患活動性のコントロールは著明に改善され関節破壊を予防できる時代になっています。患者さんごとに症状は多岐にわたり、経済状態も異なります。そうした面で難しい分野ではありますが、医師が患者さんの病態を正しく評価し、適切な治療ができれば、大きな効果が期待できます。その判断が非常に大事だと思っています。
リウマチ医療の経験数や、専門医としてのセンスということでしょうか?
経験ももちろん大事だとは思いますが、日々進歩する治療薬に関する情報を収集し常に学ぶ姿勢をもつことが大事だと考えています。学会の会場や研究会においてリウマチ内科の先生方と意見を交換する機会が多くありました。新たな知見を得る機会が多く、非常に刺激的であり、やりがいを感じていました。
治療法の進歩や先生方の取り組みがあって、関節リウマチにおける関節破壊の進行が制御され良好な予後が得られるようになりましたね。
近年、関節超音波検査(関節エコー)がリウマチ性疾患の診療において幅広く普及してきています。診断だけではなく治療効果判定、疾患活動性の評価に有用性が高い検査であり、私も日常診療で積極的に関節エコーを用いています。私が勤務医時代にリウマチ外科の上司が関節エコーに非常に力を入れていて、その下で研鑽を積んだことが私にとっての武器になっていると感じています。
関節リウマチの再燃の予防について、患者さんにどのように説明されていますか。
関節リウマチの治療目標は寛解の達成と維持と考えられています。
関節リウマチには3種類の寛解があると言われており、炎症がほぼ消失した状態の「臨床的寛解」、レントゲン検査上で関節破壊の進行がおさえられた状態の「構造的寛解」、身体機能の低下がない状態の「機能的寛解」です。このような寛解の達成には患者さんとの信頼関係を構築した上で、服薬指導を行い患者さんとともに治療目標を目指すことが大事であると考えています。
患者さん一人ひとりの症状に最適な治療を提案
早くから、開業というお考えはあったのですか。
ゆくゆくは地域に寄り添い地域住民の方々の健康増進の一翼を担えたら、というのは医学部に入学した当初から思っていました。
クリニックの診療方針、そこで発揮される先生の強みをお聞かせください。
これは大規模な病院ではなかなかできなかったことですが、患者さん一人ひとりの悩み、辛さ、不安にじっくりと傾聴し、個別に最適な治療を提案できること。早期診断、早期医療介入の重要性を説明し、患者さんに納得いただく医療を提供するのが私のスタイルであり、強みだと思っています。すべては対話ですね。コミュニケーションの大切さはスタッフにも浸透していますので、患者さんには誰にでも相談しやすい、通院しやすいクリニックでありたいと思っています。
弊社日本医業総研については、医局の同期の先生のご紹介とお聞きしました。
先ほど申し上げた通り、私は学会発表や他科の先生とのつながりが正直楽しく、臨床研究も続けていたいという思いもあって、開業に踏み切れませんでした。大阪公立大学整形外科医局の同期の先生が先に開業され、地域住民の方からの信頼を得て精力的に仕事をされているのを伺っていました。私の開業意思がいよいよ具体的になった段階で相談しました。ほかにも医局の後輩の多くが日本医業総研のコンサルタント、山下明宏さんのコンサルを受けたということを知り、山下明宏さん指名で同社に依頼しました。
現在の「整形外科」と「リウマチ科」の患者さんの割合はいかがでしょうか。
いまのところは、9割以上が整形外科でしょうか。高齢者に限らず、30代、40代の方も結構おられます。
スポーツ整形にも対応されていますね。
スポーツ外傷の患者さんは、まず私が診察して、MRI検査が必要な場合は連携先の病院に、手術の場合は基幹病院に紹介しています。当院はリハビリに非常に力を入れていますので、機能障害の回復は当院で行うことになります。
再生医療PRP療法も行っているのですね。
開業前の2年間、再生医療の専門クリニックで非常勤医師として勤務いたしました。その時の経験を活かし効果が期待できる患者さんの中で再生医療を希望される場合は検討するようにしています。
「痛み」の訴えにはどのように対応されていますか。
まず、痛みの原因を徹底的に調べ、それぞれに最適なアプローチ法を探り出しています。当院ではエコーガイド下ブロック注射を行っており、有効な手段の一つといえますが、足底腱膜炎や腱付着部障害の患者さんも多く、その場合、体外衝撃波治療が非常に高い効果を示しています。
現在の患者さんの来院動機はいかがでしょうか。
ホームページと家族・知人からの紹介が半々位でしょうか。あまり目立たない住宅街にありながらも、幹線道路が近くを通り、駐車場も15台分確保されているので、思いのほか遠方から来院いただいている印象です。
人間性と意識の高さを基準にしたスタッフ採用
スタッフはどういう基準・視点で選考されましたか。
第一にコミュニケーション能力。これは医療従事者の必須のスキルとして重視しました。それと、自分の中でやりたいことの明確なビジョンを持っている人です。そういう方には、一緒にクリニックを作っていこうと、こちらから積極的に声を掛けました。
整形外科に必要不可欠な理学療法士はいかがですか。
開業時に2名の理学療法士を常勤採用しましたが、二人とも経験豊富で、後輩の指導にも当たってきただけに非常に心強く思っています。来月に一人、9月にも常勤理学療法士を増員する予定です。技術はもちろん、皆志の高い人ばかりです。
整形外科では、受付、看護師、理学療法士など他職種の連携で運営されますが、スキルを高めるための勉強会などはされていますか。
関節リウマチのほか、骨粗鬆症の治療も日々新しくなってきていますので、定期的に情報をアップデートできるような勉強会を薬品メーカーも招いて実施しています。リハビリ部門では、各疾患のスペシャリストの医師を招いての知識のアップデートと患者さんへのフィードバックに関しての勉強会を行う予定です。
やや緩やかな立ち上がりでしたが、経営も予定通り軌道に乗りました。これまでの経営・運営について、どのように評価されていますか。
住宅地での開業だけに、当院の存在自体を知らない方が、まだ多くいらっしゃると思います。ですから、現在の経営数値は、来院いただいている方の口コミだけで、少しずつ広がってきたのかなという認識です。
確かに立地は駅近ではありませんし、地域の生活動線に面しているわけでもありませんね。
駅近、医療モール、商業施設に近接といった高い視認性や来院動線が明確な近年のクリニック開業地の傾向とは逆の、とてもレアなケースだと思います。それでも私が実現したかったのは、生まれ育った土地での開業だったのです。開業地の考えは人それぞれだと思いますが、開業を希望する先生から立地の相談を受けた際には、日本医業総研の山下さんに相談するよう伝えるつもりです。
山下さんは当院の経営状況をどのようにとらえていますか。
(山下明宏/日本医業総研)人口自体は多いエリアですので、潜在需要のポテンシャルは間違いなく高いはずです。内覧会にも約600人の方々にお越しいただきました。すごい数だと思います。あとは万代先生のおっしゃる通り、住宅地という環境でしょうね。地域からの完全な認知までには、もう少し時間がかかるかなと思って見ています。
(万代先生)この地域は古くから住む高齢者が多い一方で、子育て世帯の数が急増しています。そうした世代の方々も多く来られますが、認知度を高めるだけでなく、信頼されるクリニックでなければならないと思っています。
今回の開業サポートは弊社コンサルタントの山下が担当させていただきました。サポート内容は、先生のご要望・ご期待にかなうものでしたか。
あくまでも勝手な私見ですが、コンサルティング業の方は、開業をゴールとするのが普通のように思われます。開業で手を離し、それ以後のことにはかかわらないというイメージです。山下さんは、「これはこうあるべき」という指摘がシビアで、無駄なことは絶対にダメだと指摘してくれました。開業後の姿が見えているのでしょう、とても親身になってアドバイスをしていただいたとうのが実感です。紹介者の方も同じようなことを言っておられたのですが、開業後も経営者目線に立って一緒に成功を目指そうと気にかけていただけるのがありがたいと思っています。後輩からの開業相談を受けたら、「山下さんなら大丈夫!」とアドバイスします(笑)。
院長プロフィール
院長 万代幸司 先生
日本専門医機構 認定整形外科医
日本リウマチ学会 専門医
日本整形外科学会 認定リハビリテーション医
日本整形外科学会 認定リウマチ医
日本リウマチ学会 認定ソノグラファー
ロコモアドバイスドクター
日本スポーツ協会 公認スポーツドクター
2009年 金沢医科大学医学部 卒業
大阪公立大学整形外科 入局
白浜はまゆう病院 整形外科
馬場記念病院 整形外科
大阪市立総合医療センター整形外科 医長
大阪公立大学病院 整形外科 病院講師
大阪社会医療センター整形外科 医長
大阪公立大学病院 整形外科 助教
大阪府済生会中津病院 整形外科
奥村病院 副院長 整形外科部長
リペアセルクリニック大阪院(非常勤)