指導医の影響と、先達に学び追求し続けた手技
大学卒業後の研修先に川崎市立川崎病院を選ばれたのですね。
(南雲先生)私の卒業年度が、スーパーローテートが始まる1年前という、初期研修制度の過渡期だったこと。それと、大学で下積みを重ね、長く残って論文の業績を上げることより、外の病院の厳しい環境で研鑽し、臨床能力を高めたいと思っての判断です。
消化器内科という進路は、早くから決められていたのですか
川崎病院での研修中に、慶應大学から来られていた食道がんの内視鏡治療で知られる大森泰先生(現、立川病院 内視鏡科部長事務代行)の診療を見学させていただく機会があり、その見事な手技に惹かれました。最新の医学は、知識として知っているか、いないかというための勉強をし続けるしかありませんが、研鑽を積んだ手技は、確実に医師としての武器になります。加えて、子どものころから、ゲームのコントローラーの扱いが特技でしたから(笑)、それで消化器へという流れです。
東大宮総合病院勤務の時代に、ESDの第一人者とされているNTT東関東病院の大圃研先生の元で勉強されたということでしたね。
週1日の見学を5年間くらい続けたでしょうか。我々の間では大圃流と称されるほど、他とは違う特殊で綺麗な手技を用いていて、勉強になりました。
確か、大圃先生は独学で技術を磨かれたと聞いたことがあります。
そういうタイプの先生です。いまは教え子もたくさんいて、年1回、目黒雅叙園で大圃会というのを開催しています。医師だけでなく、企業の方も多く参加されます。元々、私の1年先輩が大圃先生に弟子入りしていて、いわば私は第二世代、全体で5~6人程度いた弟子の一人でした。
勤務医時代から将来的な開業という意識はあったのですか。
消化器内科を選んだときから、開業は将来ビジョンに入っていたと思います。そのためにも、どこに勤務し、どんな医療に取り組んできたかが大事だと考えてきました。
当社、日本医業総研は、南雲先生も手伝ってこられた亀田京橋クリニックの岸本誠司院長からのご紹介でしたね。他の開業コンサル会社とは比較されなかったのでしたか。
そこはもう岸本先生の紹介でしたから。私は一般社会での経営のことなど素人同然で、業者さんから簡単に騙されそうだったのですが、医業総研と付き合いのある亀田グループからの紹介なら、悪いようにはしないだろうと(笑)。
病院勤務ではできなかったこと、自院開業でかなえたかった医療はありますか。
病院には消化器内科だけでも多くの医師が在席していますから、私が個人的に実現したいスタイルを押し通すことなどできません。使用する機器、処方箋、補助スタッフも当てはまります。自院開業によって、私一人の責任で、理想の診療環境を作ろうと思いました。カメラにしても癖があるのです。病院だと機種によって挿入しにくいものもあるのですが、今回導入した使い慣れた機種だと2~3分で挿入ができ、大腸ポリープを削除しても20分以内で終えることができます。患者さんへの説明が約10分とすると、30分で1枠ということになりますね。それで、午後だけで7~8件診ることが可能なわけです。先週の土曜日は、10件実施しました。
先生は消化器だけでなく総合内科専門医でもあるわけですが、住宅地での開業で、内科の領域を広げずに、内視鏡に特化されることは当初からのコンセプトだったのですか。
必ずしもそういうわけではなかったのです。東大宮総合病院などの勤務では消化器にとどまらず、内科全般に対応してきましたので、開業では「内科+消化器内科」をイメージしていました。ところが、2019年に亀田総合病院に転職し、消化器内科オンリーで5~6年もやっていたので、一般内科の最新情報にすっかり疎くなってしまいました。一方で、術者・指導者として内視鏡の腕には自信がつきましたので、他院との差別化という意味で「内視鏡」を全面に打ち出すことにしました。
未経験の方や過去に不快な思いをされてきた方など、内視鏡にややマイナスイメージをもつようなケースもあると思われます。患者さんとのコミュニケーションでは、どのような点を大切にしていますか。
やはり、ある程度の信頼関係がないと、万が一不具合が生じたときに、問題に発展しやすいという感じはありますので、丁寧な説明には心がけています。患者さんも、最初からフレンドリーに接した方がいい方と、逆にへりくだるように下手に出た方がいいと思われる方などなどさまざまですので、それぞれの個性を見て、私から歩み寄るという感じでしょうか。
CTも導入されたのですね。
CTは消化器系の臓器全般に対応しますが、がんの有無や浸潤を心配される方には、1回撮ってあげれば安心されます。
ピンポイントの立地選定
開業立地ですが、元々木更津を第一候補とされていたのですか。
担当コンサルタントの小畑さんからは、君津市も候補にとアドバイスされましたが、私は木更津市、それも駅前立地ではなく、駅からはバス便利用のこの住宅地を一番立地に考えました。当院との敷地続きに大型スーパーの「ODOYA」があるのですが、小畑さんにはピンポイントで「ODOYA」の場所がいいと申し伝えました。視認性に優れ、近接するヤックドラッグの駐車場も共用できるなど、私には理想に近い物件でした。
地域の日々の生活動線から、クリニックの存在が自然に目に入るということですね。開業前の内覧会の様子はいかがでしたか。
300人ほどの方々にお集まりいただき、本当に盛り上がったのですが、肝心の私が体調不良を起こし、ほとんどクリニックのベッドで横になっていました。当日、小畑さんが居てくれなかったら、本当にヤバい状況でした。
(小畑吉弘/日本医業総研)私もこれまで100件以上の内覧会に立ち会ってきましたが、院長不在というのは初めての体験でした(笑)。
内覧会に300人以上が来られたというのは、まさに地域からの期待の表れだと思います。実際、開業2カ月目の売上が損益分岐どころか、1年後の事業計画値を超えています。この立ち上がりの成功要因を、先生はどのように分析されていますか。
告知は折込チラシと地元紙への掲載、ポスティング程度で、特別な広告はしていませんが、内視鏡を受けられるクリニックが他にないこと、それとやはり場所じゃないですか。
患者さんの層や来院の動機はいかがでしょうか。
40~50代の比較的若い層が多いですね。高齢の方は、元々かかりつけの先生がいらっしゃるでしょうし、慢性疾患の処方だけを望まれる場合は、「当院は内視鏡専門なので」と、やんわりとお断りするようにしています。男女比では、女性患者さんが男性の1.5倍ほどでしょうか。来院動機としては、開業当初はチラシ効果でしたが、最近はGoogle検索が圧倒的に多く、初診の方はそのままWeb予約という流れになっています。
今回の開業をサポートさせていただいた、弊社の小畑について、忌憚のない評価をお聞かせください。
お世話になったということの一言です。クリニック開業には多種多様な業者さんがかかわってくるわけですが、医療機器メーカー、卸業者、内装業者など、チームとして実にうまくまとめていただいたという感じです。建物オーナーが友好的だったこともありますが、賃料交渉や基本設備の整備なども細部にわたって小畑さんの助言が活かされました。
院長プロフィール
院長 南雲大暢 先生
日本内科学会認定総合内科専門医
日本消化器病学会認定消化器病専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会認定消化器内視鏡専門医・指導医
日本肝臓学会認定肝臓専門医
日本消化管学会認定胃腸科専門医・指導医
日本東洋医学会認定漢方専門医
2003年 東京慈恵会医科大学医学部 卒業
川崎市立川崎病院 初期研修医
2005年 東京医療センター 消化器科 後期研修医
2008年 東京医療センター 消化器科 医員
2011年 東大宮総合病院 消化器内科 医員
2014年 行田総合病院 消化器内科 医長
2019年 亀田総合病院 消化器内科 部長
2025年 南雲内視鏡クリニック木更津 開設