2023年7月4日

大阪市の最南部に位置する住吉区。古代摂津国住吉郡の名は万葉集にも登場するほどの歴史をもち、豪族たちが主導する住吉津として発展した。住吉大神を祀った国内屈指の大社、住吉大社をはじめ、由緒ある史跡が数多く残され、往時の面影を残す古い町並みとともに保存活動が進められている。また、住吉津は仏教伝来を導いたシルクロードの窓口とされるほか、遣唐使、遣隋使が出航した国際港として大きな役割を果たした。

清水勇人先生が住吉区の中央部、JR我孫子町駅徒歩5分のビルに「しみず整形外科」を開設したのは、2019年10月。つまり、これまでの約3年半の歩みのほとんどの期間はコロナ禍にあったことになる。整形外科には不利な対人接触を避ける風潮にありながらも、同院は立ち上げ直後から盛況し、今なお変わらぬ成長曲線を描いている。その強みは肩関節疾患に対する治療業績に表れている。清水先生だけでなく、理学療法士によるリハビリにもその高い専門性が発揮されており、効果を実感した患者さんからの口コミ来院者があとを絶たない。

清水勇人先生、そして理学療法士を代表して木村悠人さんの両氏から話をうかがった。

 

受けたい医療とやりたい治療の乖離

手術をやりたくて整形外科に進まれるのが医師の普通の考えだと思いますが、以前清水先生は手術が好きではなかったと話しておられましたね。

整形外科医にとって手術は確かに大きな武器で、高度な手技によって劇的に回復する患者さんは多くおられます。ただ、病院勤務医時代、患者さんが求めていることと、医師がやりたい医療にやや齟齬があるのではないかと感じていました。患者さんは最初から手術を受けたくて病院に来ているわけではありません。ところが、医者は手術をしたがるのです。何といっても外科医たる花形手技ですから。それに比べると外来はいかにも地味です。でも本当に患者さんが欲しているのは外来の質、つまり効果を極限まで追求した保存療法ではないかとずっと思ってきました。

つまり、自院開業では保存療法に高い専門性を発揮しようと考えられたのですね。

整形外科で扱う領域は全身に及びますが、私の強みを活かすという意味では肩関節疾患を中心的に診ていきたいと考えました。他の医療機関を受診して取れなかった痛みが、当院の治療ですぐに効果が実感できたと言われることが一番嬉しいですし、そこに整形外科医療の醍醐味も感じています。

整形外科医のなかでも、肩のスペシャリストと呼べるのは、ごく少数だと見聞きしたことがあります。先生は、大阪ショルダーチーム(http://ost.samp.co.jp/greeting/)のメンバーとしても研鑽されてきたわけですが、肩に対する強みという部分をもう少し具体的にお聞かせください。

 一般的なレントゲン検査では捕捉できない腱板損傷や関節内病変についてエコーを用いて診断の精度を高めています。治療については関節各部位の関節内注射、脊髄神経由来の痛みに対する神経根ブロック、そしてサイレントマニピュレーションやエコーガイド下石灰除去術などの特殊治療も実施しています。エコーを使うことで、痛覚部位にピンポイントでアプローチでき、治療業績も確実に高まったと実感しています。

エコーが検査・治療の主戦力になっているというわけですね。

そう思っています。肩でいうと、普通はレントゲンを撮って、さらに詳しく調べようとするとMRI検査ということになるわけですが、患者さんにとっては時間もかかりますし、経済的な負担も少なくありません。私はそこをエコーに代替させたわけです。ただMRIと違ってエコーはやはり使い手の技量が成否を大きく左右します。MRIでは1+1=2と確実になりますが、エコーでは3や4にもなり得ます。つまり、術者によって診断は大きく変わってくるのです。それだけに意のままに使い熟すのはすごく難しいのですが、高い技術力を備えれば、万能のMRIにも決して引けを取らないと思っています。高額な機器はなくても、この手技で勝負できる自信はあります。

 

治療の精度を99%まで追求する

 肩関節の強い痛みを五十肩という俗名で括ってしまうことがよくありますが、実はそこに多様な疾患が内包されていることを一般の人はあまり知りません。先生のお考えはどうでしょうか。

 的確な診断をつけ治療方針を決めるのが専門医の責務ですから、私は五十肩という言葉は一切使いません。一般の方が五十肩と言われるのはいいのですが、私たち医師が使うのは恥ずかしいことだと思っています。例えていえば、動物園で飼育員さんにサルやゾウの種類を訊いた時に、「それは哺乳類です」と答えることと一緒なのです。相手の知りたいことはそこではないでしょう。

患者さん目線でクリニックのホームページを観たときに、「不要な検査・治療はしません」という言葉に、心強さを感じました。

 検査はかなり少ない方ではないかと思っています。医療にかかることの患者さんの負担を軽減することも大事だと考え、検査だけでなく通院回数も少なくて済むように心掛けています。リハビリも同じ考えで、集患や収益性を考えれば物理療法は有効なのでしょうが、治療においてはそこまで有効ではないと考え、当院では基本的には行っていません。週1回の通院でADL、QOLを回復させるもっとも効果的な方法を考え提案しています。

エコーを用いてのブロック注射を行う先生が大分増えてきたように感じられますが、そうした医師への指導なども行っているのですか。

開業前はよく講演会などをしていましたが、現在は多忙の合間を縫って呼ばれれば行くという感じでしょうか。整形外科でのエコー診断・治療を体得し臨床に導入したのは、大阪では私がかなり早い方だったんじゃないかと思います。いまは若い先生たちを中心にやり始めているようですが、私が見る限り、キチンとできている医師は少ないと思います。

それは経験数の違いということでしょうか。

どれだけ考えるかではないでしょうか。私のよく行っている手技の一つに、肩峰下滑液包内への注射がありますが、これは教科書にも載っているような、きわめてオーソドックスな治療法です。しかし、その手技にはとても奥深さがあります。その深さに気づかないままでは、治療は不完全なものになってしまいます。100%の精度は得られなくても、70%のものをいかに99%にまで高めるか、私はこれまでずっとそこに向けて努力を重ねてきました。指導者に教えられてきたわけではなく、一人で試行錯誤を繰り返し、考え抜いた末にやっと現在の手技にたどり着きました。こうして悩み抜いた手技は、習熟度も自信も他とは違うという多少の自負があります。

痛みに対するアプローチを決める際に、ペインクリニックとは違う整形外科ならではの視点はありますか。

前提として治療の目的が違います。ペインクリニックは痛みを取ることだけが目的ですので、その原因を探れる人は少ないと思います。整形外科医は全身の運動器の根本を学んできています。肩でいえば、腱板が切れた後の数年後、数十年後にどのような要路をたどっていくのかを推察したうえで、ベストと思えるアプローチを考えて提案しています。要するに痛みの原因と、将来的な予後までを考えて治療しているかどうかの違いという話です。

ちなみに、リウマチへの対応はどうされていますか。

開業から4年目となって、肩に強いクリニックのイメージが定着したように思います。ですからリウマチについては、ご相談いただければちゃんと治療しますが、積極的な集患はしていません。リウマチ治療も薬の開発が進んでかなり治療法が確立されましたから、あとは薬剤を調整しつつ、間質性肺炎などの合併症、メトトレキサート治療中の汎血球減少などを見逃さない管理が大事になります。そう考えると、当院での継続的な治療よりも責任ある紹介が大切になると考えました。大阪急性期・総合医療センターや大阪公立大学医学部附属病院などとは合併症や他の疾患も含めて連携を図ることができています。

保存療法を希望される患者さんに対して、先生の診断で手術を選択すべきと思われるケースではどのような説明をされていますか。

初診患者さんと、長い間通院されている方とでは、意識して対応を変えているところがあります。受けたい医療を選ぶのは患者さんなのだという前提において、初診の場合は保存と手術、それぞれの方法を説明したうえで、あなたの場合は早めの手術をおすすめしますと。一方継続的に診てきた患者さんに同じ説明をしたのでは、これまでの保存療法が無駄だったのではないかという落胆を与えかねませんので、いきなり手術を切り出すような言い方はできませんよね。そこでよく言うのが、肩関節外科医のなかで手術派と保存派がいれば、僕は保存派の一番隅っこにいますと。その僕が手術と言ったときは考えてよね、といった軽いジャブを打っておきます。通院の長い患者さんのほとんどは、最後は先生が決めてくれとおっしゃるので、徐々に手術に誘導するようにしています。

 

〝治りたい〟患者さんに真剣に向き合う

先生の専門性に期待して、セカンドオピニオンを希望される患者さんもいるのではないですか。

いらっしゃいますね。正直なところ、歓迎はしませんが(笑)。治療をしてほしい、というのなら分かるんです。治療をするということは、私を医師として信頼しているからです。でも、セカンドオピニオンで、ただ専門医の意見を聞きたい、知識が欲しいというだけの目的で相談されても正直なところ気持ちのスイッチが入りません。医師なんて者は、患者さんから治して欲しいと託されて、初めて何とかしてみせるという感情が湧くものです。

紹介されて来られる患者さんもいらっしゃいますよね。

すごく多いですよ。他の診療科からの紹介はもちろんあるのですが、総合病院からもかなり多くの方が紹介されてきます。

病院からですか!?

そうなんです。おかしいでしょ? 私もそれは違うんじゃないかと思いますもん。そのためか、何でも治せるものと期待されて来られる方もいるのですが、普通に考えれば、クリニックの規模・設備・人数で治せない疾患はいっぱいあります。肩に関しては強みを発揮できますが、何でもと相談されるのは少し困りものです。

開業当初より広域からの集患ができていましたが、現在さらにそのエリアは広まりましたか。

どうでしょうか。少しは広がっているかもしれませんが、メインは関西全域ですね。和歌山は阪和線利用で来られるので案外多くおられます。兵庫、京都など遠方からお越しの方の症状は、ほぼ100%肩関節の痛みですね。逆に腰痛で来られても消炎・鎮痛といったどこでも受けられる治療しかできませんので多少気が憚れます。

最近ようやく5類感染症に移行した新型コロナですが、人との接触にナーバスな状態が長らく続きました。まず患者さんの身体に触れることからスタートする整形外科は不利な一面があったと思われますが、経営数値を見る限りコロナの影響は感じられませんね。

開業からこれまでのほとんどがコロナ禍でしたから、逆にそうでない普通の状態を知りません。院内の感染対策はもちろんしましたが、それでも接触を躊躇うような方に来ていただこうと考えるのはこちらがストレスになりますので、言葉は悪いですが無視することにしました。経営数値は、そうしたなかでも当院の治療を受けたいという患者さんだけにお集まりいただいた結果です。それが「痛み」に対する需要ということだと思いますし、当院がしっかりと患者さんの満足のいく治療を行なえたことの証明だと思っています。

 

病院勤務では得られなかった充実感

医師と近い距離で認め合える

それでは理学療法士の木村悠人さんからも話をうかがいたいと思います。木村さんは2020年の入職ですから、ほぼ創業メンバーの一人といえるわけですが、病院勤務を辞めて当院へ転職されたきっかけからお聞かせください。

(木村さん)まったく知らない医療機関ではなく、清水先生を始めリハビリのメンバーが長吉総合病院で一緒に勤務してきたことの安心感がありました。なによりも、トップに立つ清水先生の診療に対する考え方がわかっていましたので、飛び込んでみても面白そうだと感じたのが一番でしょうか。

病院とは違う、クリニックならではのやりがいは感じられますか。

当院での勤務の大きな特徴は、院長との距離の近さです。病院医師のなかには、リハビリが実際なんの目的で、なにをしているのかを分かっておらず、マッサージでもしているのだろうと勘違いされている人がたまにいるんです。また概念的に、医師が上でPTが下、という立ち位置ができてしまっているようにも感じます。でも当院では、院長が痛みを止め、リハビリが固さを取るといった役割について、双方が信頼し、認め合えるフラットな関係性ができています。そこで患者さんが良くなることを肌で感じられることが、そのまま仕事のやりがいにつながっています。前職の病院でも肩関節疾患の患者さんは多かったのですが、清水先生の治療にはレベルの違いが感じられます。そこを深く勉強できていることが一番でしょうか。

慢性疾患と急性症状では異なるのでしょうが、リハビリで「患者さんを、いつまでに、こうしたい」という時間軸の目標設定はあるのですか。

病院の入院治療の管理とはシステムが違いますが、一応運動器リハの算定日数は150日以内と決められてはいます。どこをゴールに置くのかは個人差がありますが、当院で扱うことの多い肩関節の痛みはぶり返すことがあります。患者さんには最初にリハビリを解説して要望を聞き、そのうえで再発の可能性と疑われる際の注意点もお伝えしています。

肩の痛みのぶり返しの〝波〟には、当然個人差があるわけですよね。

(清水先生)あります。一方で再発しない方もおられるわけですが、私がその機微を把握するのは、通常の診察時間内では結構難しいのです。ただ、少し悪くなりかけた段階でも、木村さんたちPTがリハビリ中にその波を感じ取ってくれています。最後の判断は私がするわけですが、私よりもPTの方が感じとれるちょっとした変化がありますので、彼らを信頼したうえで、話し合って治療方針を決めています。

そうなると、高い治療技術を提供するだけでなく、患者さんとのコミュニケーションレベルでのPTの責任も重いですね。

(木村さん)患者さんには毎回のリハビリの前後に声をかけるようにしています。どこがどの程度改善されたかも細かくお伝えするようにしています。1回1回は小さな変化かもしれませんが、確実にゴールに向かっている過程を丁寧に説明することで患者満足度が高められているのではないかと思っています。

 クリニックの批評が即座にネットに書き込まれる時代です。ネット検索で来られる患者さんもいらっしゃると思われますが、これほどまでに「しみず整形外科」が選ばれる理由をどうお考えですか。

(清水先生)実際にキチンと治しているからじゃないですか。正確な統計をとっているわけではありませんが、患者さんの大勢は当院で治療を受けた方からの、いわゆる本当の口コミです。兵庫県の患者さんなども、最初はお一人で来院され、そのうちに患者さんの身内も含め周囲の方々が集まってきています。ホームページは開設していますが、リスティングなどの広告はやっていませんし、あまりウェブでの集患の実感はありません。ネットで評判の高いクリニックは当院より他に沢山あります。当院の場合、患者さんに対してしっかりやれることと、やっても効果が期待できないことを明確にしていますので、治療効果の得られないものや無駄な検査を頼まれても、はっきりとお断りしています。そういう人のなかには腹を立てて批判的な書き込みをされる人もいるでしょう。ネガティブな情報ほど伝播が早いものですが、そこはまったく気にしていませんし、そのような人には来ていただかなくて結構です。それでも当院の治療を受けたいと思う患者さんだけにお越しいただければいいのだと思っています。口コミを恐れて患者さんに媚びるようなことは、当院では一切しません。
 

リハを担当する木村さんの立場から見て、当院の成功要因をどのようにお考えですか。

(木村さん)リハビリの最初に痛みの具合はどうですかとお尋ねするわけですが、夜も眠れないほどという痛みを訴える患者さんについては、清水先生の注射で一旦苦痛を和らげてあげるところから私たちPTの仕事がスタートします。そこが確実にできているのは、清水先生の技術が前提になっていると感じます。

しみず整形外科への転職は木村さんにとって正解でしたか。

(清水先生)そりゃ正解じゃなかったらまずいでしょう。まあ、65点ぐらいだと書いておいて(笑)。
 (木村さん)120点……、いや200点と書いてください。理学療法士としての視点や手技、患者さんとの接し方が本当に変わったという実感があります。良き仲間たちと一緒に、毎日の仕事が充実しています。肩の次に自分の専門である赤外線の研究もやらせていただき文句なしの職場環境です。

クリニック経営にはまだまだ伸びしろがありそうですね。

(清水先生)普通に判断すれば、もっと広い場所に移転してリハも拡張しPTを確保すれば売上は上がるでしょう。事業成績だけを追いかける考えもあるのでしょうが、私の開業の目的は病院ではできなかった外来医療の質へのこだわりです。そう考えると、現在毎日170人前後の患者さんが来院されていて、これくらいが丁度いいと思います。経営は二の次、三の次です。一番大切なことは、提供する医療の質だと考えていますので、無理な増患対策という考えはありません。

私ども日本医業総研について、開業支援は山下明宏が、開業後の税務・会計業務は小池隆久が担当させていただいておりますが、当社グループのサポート全般についての忌憚のない評価をお願いします。

当初は都市部ではなく、田舎でのんびりやりたかったんです。でも、担当の山下さんに相談したら「ダメです。そんなところでは採算が取れません」と反対されました。ほかに数社のコンサルタントの話も聞いていたのですが、真っ向から反対したのは山下さんだけでした。「マジかよ……」と思ったものの、そこまで言うのなら、この人にお願いしようと(笑)。苦労の末にこの物件を紹介いただいたのですが、それまで住吉区がどこにあるのかも知りませんでしたし、我孫子町駅にも降りたことがありませんでした。土地勘も地の利もないところでどうなるのかと思ったのですが、好調な立ち上がりのまま現在を迎えていることは精微なデータの裏付けと山下さんの確かな目利きだと思っています。また、日本医業総研の特徴は、医業に特化した税理士法人をバックボーンに持つことです。開業をゴールとせずに、そこからの継続的なフォローが重要です。現在、会計部門の小池さんに毎月訪問いただいていますが税の相談のみならず経営全般についてのアドバイスをいただいています。彼もまた頼りになるコンサルタントです。日本医業総研の選択は正解でした。

医療法人社団 しみず整形外科

◎院長プロフィール

理事長・院長 清水勇人 先生

日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定リウマチ医
Johnson & Johnson認定肩関節外科医
大阪市立大学 肩関節グループ(大阪ショルダーチーム)所属

2010年 奈良県立医科大学 卒業 奈良県立三室病院(初期研修)
2012年 石切生喜病院 整形外科
2013年 大阪市立総合医療センター 整形外科
2014年 大阪市立大学附属病院 整形外科
2015年 長吉総合病院 整形外科
2018年 長吉総合病院 整形外科 リハビリテーション科部長
2019年 しみず整形外科 開設

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◎理学療法士 プロフィール

理学療法士 木村悠人 氏

日本赤外線学会 入会予定

2015年 畿央大学 卒業  長吉総合病院 入職(握力ならびに赤外線の基礎研究)
2020年 しみず整形外科 入職

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