開業に医師としての居場所を求める

稲葉基之 先生 インタビュー

大和駅前皮フ科スキンケアクリニック
院長

(編集部)開業が今年(2017年)の4月で約3カ月が経過しましたが、立ち上がりは思いのほか良さそうですね。

(稲葉院長)開業告知はごく一般的なもので、ホームページも特別凝ったものではありませんから、立ち上がりの良さは、開業物件に依るところところが大きいでしょうね。早くからこの物件に目を付けて動いてくれた担当コンサルタントの親泊さんおかげです(笑)。

当初、都内阿佐ヶ谷に候補物件があったのですが、2年前に開業された友人(医療法人社団桜上会 はせがわ泌尿器科皮フ科クリニック 長谷川了院長)から、「医者が見て良いと思う物件は案外ハズレが多い」と言われてまして…(笑)。やはりそこはプロの目で見てもらうべきだということで、長谷川先生の開業をサポートした日本医業総研を紹介されました。

大和市は出身地でもあるので候補地の一つだったわけですが、駅前テナントビルの空き物件が現地のリサーチをしていた親泊さんの目にとまり、すぐに診療圏調査にかかってもらいました。

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日本医業総研の親泊(しんぱく)と撮影

医院経営塾にもご参加されたわけですが、日本医業総研にはどのような印象を持たれましたか。

医院経営塾では自分で手を動かして経営の感覚を身につけていきますので、一歩通行の座学と違って記憶にとどまりやすいですね。それと、他の診療科の違いはあれ開業を目指す同年代の受講者がいましたので、そこから刺激を受けました。

医業総研の場合、コンサルは有料でしかも安くはない(笑)。でも、有料だから気兼ねなく頼めることもありますし、実際に夜間の電話相談などにも気持ちよく対応してくれました。事業計画の策定では、良い方向へ外しても、計画値より悪くは絶対にさせない、つまり黒字経営を約束することにとことんシビアです。これが医業総研に実績につながっているのでしょう。このシビアさを医師が理解できていないと、他者からの意見を自分の都合の良いように解釈してしまいます。

当初設定された損益分岐点だと、1日の来院患者数は40人弱でしたね。

診療圏分析では一次・二次診療圏での獲得可能とされる患者数が約40人でしたので、逆にそこから初期投資額や人員体制等を計画していきました。医業総研の事業計画は、地元に居住する人の数のみカウントして、通勤利用者などの不確実な期待値は一切盛り込みません。もちろん競合の存在も加味して経営が成り立つ数ですから、まずは早期に確実に損益分岐点をクリアすることを意識すれば、あとは時間をかけて積み上がっていくはずだと考えました。

ところで、医師という職業は子どものころから意識されていたのですか。

それが医学部に進むという発想は全然ありませんでした。父が建築業を営み、兄も土地家屋調査士として事務所を構えていたので、将来は漠然と建築関連に進むのかなと考えていました。ところが、浪人中に医歯薬系のスパルタ教育で有名な予備校で学んだことから、医学部志望の友人たちとの会話から刺激を受け、医学部への方向転換となりました。焦ったのは何の心の準備もなかった母親でしょう(笑)。

先生のプロフィールを拝見すると、研修後はまず放射線科に入局されたんですね。

スーパーローテートで一番分かりにくかったのが放射線科でした。当然のことですが、画像では精微な読影術が求められますし、病巣の見落としによる医療事故は即訴訟にもつながりかねません。万が一裁判にでもなれば、画像は動かぬ証拠だけに、言い逃れもできません。読影そのものは経験を積むことで一定レベルまでは上達するのですが、身体内部の異変をどのように描写しストーリー化するのかはセンスが問われる診療科です。

その後に勤務された港南台病院で内科に転科され、日本医科大学から皮膚科に転じられたわけですね。

放射線科一本で一生を終えようとは思っていませんでしたし、かといってどの診療領域を専門にするのかは決めかねていました。ただ、放射線科の場合、疑われる診断を下すことができても、直接治療的なアプローチで結果にコミットすることができません。例えば脳外科医であれば、自らMRI画像を読んで診断を見立て、自ら手術を執刀することで患者さんに最後まで寄り添うことができるわけです。そこに限界を感じた私は、画像診断の技術は医療ツールの一つとして位置づけ、紹介いただいた港南台病院に転職して一般内科に進みました。

港南台病院は全84床の中規模病院で、主に急性期を脱した患者さんのケアや生活習慣病等の慢性疾患のほか、緩和ケア、終末期医療にも力を入れている病院です。私は内科に入局したわけですが、関連老健施設の施設長と知り合ったのが現在の皮膚科へのきっかけとなりました。施設長は皮膚科の名医であると同時に、聡明なる人格者でした。私は内科領域を手伝いながら施設長の下で皮膚科を学び、専門医として日本医科大学付属病院の皮膚科に入局しました。

先生の診療コンセプトをお聞かせください。

私自身がこだわるのは勤務医時代からもそうなのですが、医師としての自分の見立てや考えをキチンと患者さんに伝え理解していただくということです。皮膚科の場合、例えばステロイド外用剤を塗布するだけで回復する症状が多々あります。実際に、診断にあまり自信がなくても確認できる症状だけで薬を処方することは可能です。しかし、あくまでも確かな診断があっての治療でなければ患者本位とはいえないし、患者さんの理解が乏しいことから勝手な判断で治療を中断し、さらに症状の悪化を招く悪循環を生じさせてしまいます。

そこで当院では、「にきび」「しみ・小じわ」「イボ」「湿疹」などについてオリジナルのイラストを用いて一人ひとりの患者さんに状態を描いて説明し持ち帰っていただいています。話を聞いただけでは忘れてしまいますし、イラストであれば自宅に帰ってご家族に説明することもできます。疾患への理解を深めることで、根気のいる薬物療法も持続することができるのではないかと思っています。

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大和駅目の前のテナントという立地

直近月の数字を見ると、大体1日に70~80、多い日では90人の患者さんが来院されています。つまり、すでに事業計画の倍の数というということになりますね。

約75%が大和市内の患者さんですから、それだけのニーズがあったにもかかわらず、地域として応えられていなかったともいえます。医療機能上クリニックで対応できることには限界がありますから、手術が必要と思われる患者さんは病院に紹介を出していますし、逆に「巻き爪」など私自身の治療実績の多い症状は、多くの紹介をいただくようになりました。そうした小さな連携も奏功して3カ月経った現在のカルテナンバー(新患数)がすでに2,600番を超えています。新患がコンスタントに積み上がっての数値ですから、ピークはまだまだ先にあると思っています。

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しかしそうなると、先生の診療スタイルで果たしてすべての患者さんに対応できるのかという問題が現実的に生じますよね。

現在、平日は基本的な診察に費やし、処置は土曜日に集中させています。しかも、4カ月先の11月まで予約が入っている状況です。処置が遅くなることで離反してしまう患者さんが出てくる可能性もありますが、そこは割り切って考えるようにしています。それよりも無理な残業続きでスタッフが疲弊してしまうことの方が心配です。小さなクリニックですが、スタッフの支えがなければとても運営できないことは、開業してつくづく実感するところですから。

開業したことで医師としての日常や精神面での変化はありましたか。

狭いながらも自分の部屋(院長室)がある(笑)。外来対応ということだけでいえば病院以上の忙しさですが、すべて自分の意思で時間をコントロールすることができます。大きな組織のなかで拘束されての義務感ではなく、自由な時間の組み立てのなかで自分の目指す医療を実現できることが勤務医との最大の違いです。

私にとってクリニック開業は必ずしも経済的な成功を目指すものではなく、自分の居場所を見つける選択肢でした。一生の居場所を見つけられた安心感、そこで診療できる日々に大きな充実感があります。

 

大和駅前皮フ科スキンケアクリニック
院長 稲葉基之 先生

診療科目
皮膚科 アレルギー科 小児皮膚科 美容皮膚科

〒658-0046
神奈川県大和市大和東1-3-15 大和ミラービル5F
TEL 046-240-1438

https://yamatoekimae-hifuka.com/

院長プロフィール

日本皮膚科学会 学会認定専門医
日本性感染症学会 学会認定医

2003年 東海大学医学部医学科 卒業
2003年 昭和大学藤が丘病院 初期研修
2005年 昭和大学北部病院 放射線科 入局
2006年 港南台病院 内科 入局
2008年 日本医科大学付属病院 皮膚科 助教
2009年 日本医科大学千葉北総病院 皮膚科 助教
2011年 日本医科大学付属病院 皮膚科 助教
2013年 日本医科大学多摩永山病院 皮膚科 助教
2014年 日本医科大学千葉北総病院 皮膚科 助教
2017年 大和駅前皮フ科スキンクリニック 開設

 

Clinic Data

大和駅前皮フ科スキンケアクリニック

皮膚科 アレルギー科 小児皮膚科 美容皮膚科

神奈川県大和市 大和東1-3-15大和ミラービル5F

TEL: 046-240-1438

https://yamatoekimae-hifuka.com/

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