うえさかメンタルクリニック

植坂俊郎先生 インタビュー

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対話重視の医療提供

うえさかメンタルクリニック
院長 植坂俊郎 先生

 2013年、東灘区の阪神御影駅から徒歩1分、JR住吉駅、阪急御影駅からも徒歩利用が可能なテナントビルの1Fに心療内科・精神科の「うえさかメンタルクリニック」は開設されました。 
神戸市の東端に位置する同区は、灘区、芦屋市、北区に隣接し、震災ではほぼ全域におよぶ甚大な被害を受けたものの、三宮や梅田など都心部へのアクセスに優れていることからマンション建設などの復興が進み、転入者が急速に増加するとともに、子育て世代も多く「多子高齢」が形成されています。

 

医師人生の起点は、白衣への憧れ

小学生時代から将来は医師にと考えられていたそうですね。

 小学校2年生のときに、ノーベル平和賞受賞者であるアルベルト・シュヴァイツァーの伝記を読み、神学博士、哲学博士にして一流のパイプオルガン奏者ということを知りました。大学では神学の講師職にありながら、30歳から医学を学びだし、38歳で医学博士となったのちに、ガボンの住民を救おうと立ち上がった献身的な奉仕活動をしたことに感銘を受けました。
また、当時小学校に飾られていた絵巻物に描かれた、近代細菌学の開祖として名高いドイツ人医師のロベルト・コッホと、氏が発見した結核菌の顕微鏡画像にみいり、幼心にもシュヴァイツァーとコッホの、ともに白衣を纏った凛とした姿が瞼の裏にやきつきました。医師になりたいと思ったのは、職業へのこだわりよりも白衣への憧れだったように思います。

精神科に進まれた動機は何だったのでしょうか。

 大学時代は、内科か外科、精神科で進路を迷っていましたが、最終的に精神科を選んだのは、身体科のようにエビデンスが主体の対症療法優先の領域ではなく、哲学的と思える奥深さと、「こころを診る」という、いわば捉えどころのない分野のようだと感じたことが理由です。開業したいまでも、「こころを診る」精神科医療への興味は尽きることがありません。

約30年間病院勤務をされてきて、一転、開業に向かわれたきっかけは?

 勤務医としては一定の報酬は保障されていましたし、民間病院では事実上定年がないこともあって、数年前までは開業する気はまったくなかったのですが、念願だった子どもを授かったことがひとつの区切りになったと思います。
病院の勤務医は、もちろん当直もあることから、時間的には家族中心の生活ということはなかなかできませんが、子どもが生まれてからは、家族と過ごす時間を大切にしたい、親子3人の城を自分で築きたいと考えるようになりました。

 

開業と経営のイメージが鮮明化した「医院経営塾」

日本医業総研にコンサルを依頼するキッカケは何だったんでしょう。

 兵庫県保険医協会が主催する医業総研の開業セミナーに夫婦で参加したときに講師だったのが日本医業総研の田中さんでした。セミナーでの田中さんの自信に満ちた弁舌が強烈な印象として残ったとともに、開業も悪くないなと思うようになりました。
また、医業総研の開業実績のなかに、たまたまわたしの柔道部の後輩がサポートを受け、成功していることを知り、一層信頼できるようになり「開業するのならコンサルは医業総研しかないな」と感じました。
 その後、田中さんとの面談を経て、医業総研が主催する「医院経営塾」の全4講を3クール受講し、開業と経営のイメージがかなり鮮明になりました。
 コンサル契約後は、担当コンサルは山下さんに引き継がれました。わたしが開業に抱いていた不安の一つだった資金調達について山下さんに相談し、作成していただいた事業計画を元に紹介していただいた金融機関に申し込んだところ融資の実行が決定され、わたしの不安が杞憂に終わったと同時に、医業総研のきめ細かな対応と実践力に改めて驚かされました。医療総研が、その実績からか、金融機関からも信用されていることが示されたように思いました。
開業物件についても、漠然と神戸市からわたしの故郷の豊岡市までをまたぐ広域をイメージしていたのですが、綿密なマーケット・リサーチを重ねたうえで、山下さんがピンポイントで自宅からも近い開業物件を探しだしてきてくれました。
また、開業に際して山下さんが算出された損益分岐患者数は、1日20人強というものでしたが、開業からの上昇カーブは緩やかに推移したものの、山下さんからは熱心なアドバイスをいただき、わたしが診療に集中できる体制を維持しながらも現在は損益分岐をクリアできるようになりました。
とはいえ、事前の診療圏調査では、1日30人以上の集患がみこめるエリアだけに増患対策等について、引き続き適切なアドバイスをいただき、山下さんとの二人三脚を続けていきたいと思っています。

患者さんとのかかわりは“ボランティア面談”から

診療スタイルの特徴をお聞かせください。

 わたしの治療方針は軽症の段階での患者さんとの対話を重視することです。薬物療法については、精神療法を補うという位置づけで短期間・最小限にとどめたいというのが基本の考えです。
 そのためにも初診の患者さんとは2時間程度を費やしてじっくりと話をうかがうのが理想だと思っていますが、一般の診察時間内にひとりの患者さんに2時間もかけることはできません。そこでわたしは“ボランティア面談”と称して、昼間の休憩時間や診察が終了する19:00以降に無料面談を行うことにしています。
“ボランティア面談”でも問診票は書いていただくのですが、正式な治療ではありませんから電子カルテは立ち上げず、紙カルテに必要な情報を記入していきます。“ボランティア面談”では、患者さんの愁訴に耳を傾けて診断をみたて、治療方法を説明します。面談することで、相互の理解が深まり、一般治療がスムーズにいくことになります。なかには、2時間の面談だけで落ち着きをとりもどし、そのまま帰られる方もいますが、患者さんが一時的にでも回復していただければそれでよしとしています。“ボランティア面談”ばかり増えてしまっても困りますが(笑)。

現在の患者さんの疾患の傾向はどうなっていますか?

 適応障害、全般性不安障害、混合性不安抑うつ障害などの神経症性障害が中心です。時代を反映してか、職場での人間関係や人事異動等にともなう仕事への適応、過労によるストレス等が主な原因と考えられます。こうした方々はご自身の意思で受診される方が大半です。
また、他科のクリニックからの紹介患者さんとして比較的多いのが、同じF4圏(IDC-10)の身体表現性障害です。症状は頭痛、吐き気・嘔吐、腹痛、下痢・便秘などの個別性がみられますが、治療としては支持的な助言を中心とした精神療法を行っています。
2015年の12月から、職員を対象としたストレスチェックの実施が一定規模以上の事業所に義務づけられたこともあり、今後は働く方々のメンタルヘルスへの対応もクリニックにとっての課題のひとつだと思っています。

神経症圏における薬物療法についての考えはどうですか。

 症状を重症化させないためにも薬の力は必要になると思いますが、多剤多量の処方は避けていますし、ベンゾジアゼピン系の薬物にはやや抵抗感があります。
そこで神経症の患者さんにわたしが処方するのは、主に抗不安薬のセディール(タンドスピロン)、非定型抗精神病薬のスルピリド(ドグマチール)、頓服で少量のメイラックス(ロフラゼプ酸エチル)、そして睡眠鎮静剤のルネスタ(エスゾピクロン)といった比較的穏やかな薬を3剤以内で組みあわせ、最小限の容量からスタートすることにしています。処方量についても多くは3日~5日程度の短期間分とし、回復の具合をみて少しずつ調整を図ることにしています。

思春期の患者さんへの対応はどうされていますか。

 思春期の患者さんも増えています。わたし自身は児童思春期の専門医ではありませんが、相談には必ず応じています。ご両親の同意の下でこれまでに10人以上の未成年の患者さんを診てきました。若い方からは不思議と会話の波長があうと思われているようです。思春期の方には精神療法にあわせ、少量の抗不安薬を服用していただくことで改善が認められています。

急性症状などで、集中的な治療が必要なケースではどのように対応しておられますか。

 精神科はまだまだ一般の方々に正確な理解がおよんでいないこともあり、早期でクリニックを訪れることにも抵抗感をおもちのようにも思われます。そのため開業する際に重視したのは、重度の症状が疑われる患者さんに備えた安定的な入院施設の確保でした。
とはいえ、わたしが勤務していた大阪とは違い、落下傘開業した神戸市では知り合い医師も少なく入院施設の確保は手探り状態でした。開業後も毎週土曜日に地元の病院を巡り、現在は、兵庫区の湊川病院、西宮市の仁明会病院、神戸市の県立光風病院に引き受けていただけることになりました。

 

在院期間の短縮化における精神科クリニックの役割

飾られている「愛する心」の書が印象的ですね。

 なかなか達筆でしょう。この書は、以前に勤務していた病院で受けもっていた統合失調症の女性患者さんが筆をとられたものです。病院では、恒例行事として書道大会が開催されていたのですが、そこで書道4段の腕前をもつ彼女のこの「愛する心」が金賞を受賞しました。シンプルな4文字のなかに、生きること、そしてその根底にある家族の絆、あらゆる人に捧げる愛情が感じられ、わたしの経営理念にも重なりあうことから、開業を機に彼女に会ってお願いし、記念の作品をいただき飾ることにしました。

今後の精神科クリニックの方向についてお話しいただけますか。

 近年とくに統合失調症が軽症化の傾向を示していることもありますが、精神科における在院期間の短縮化は時代の趨勢だと思います。わたし自身、勤務医時代に10年以上の長期入院患者さんの退院促進に努力してきましたが、長期入院の問題は疾患の重症度ではなく、退院後の受け皿にあると考えていました。長期入院者の方の場合は、入院当時からの家族構成も様変わりしていることも多く、ご家族の受け入れがスムーズにはいかないという現状があることから、退院するとしたら、単身生活の場の確保が必要となります。
 そのためにはグループホームなどの社会復帰施設としての住まいの確保が求められます。その運営を支えるのは、医療と福祉、行政サービスを含めた地域社会資源の活用と連携にほかなりません。くわえて在宅生活における医療の中枢を担うのはクリニックと訪問看護だと思っています。
とくにクリニックには、予防への地域指導や早期介入を可能にするための正しい精神科医療の啓発活動が求められていると思います。また、慢性疾患患者さんに継続的なケアをすることによる入院に至らないための再発防止が重要です。わたし自身は将来的な展開として、退院患者さんを支援する一貫としてのデイ・サービス機能をもつことを目標にしています。

 

うえさかメンタルクリニック
院長 植坂俊郎 先生

診療科目
心療内科・精神科

〒658-0046
神戸市東灘区御影本町4丁目10番14-2号 沢ノ井マンション1階
TEL 078-857-7085

院長プロフィール


医学博士
精神保健指定医
日本精神神経学会認定 精神科専門医
日本医師会認定 産業医
精神保健福祉士
介護支援専門員

1978年 大阪医科大学卒業
1984年 大阪医科大学大学院修了
1984年 大阪医科大学神経精神医学教室入局
1984年 美原病院勤務
1985年 上野芝病院勤務
以後、赤穂仁泉病院、藍野花園病院、藍野病院、青葉丘病院に勤務
2013年 うえさかメンタルクリニック開院

 

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