おおうえこどもクリニック

大植慎也先生 インタビュー

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在宅医療を実践する小児科クリニックの確立をめざして

おおうえこどもクリニック
院長 大植慎也 先生

 

 大阪府の南西部、大阪都心のベッドタウンとして開発が進んだ和泉市で2014年12月に開設された「おおうえこどもクリニック」。大植慎也院長は、大学病院をはじめとする中核病院で先進医療に取り組み、クリニックを開業するにあたっては3診の外来体制を整えるとともに、小児科としては前例の少ない在宅医療をとりいれることで、勤務医時代では成しえなかった充実した地域小児医療を実現しています。

クリニック外観

クリニックの開業ではどのような医療を目指さましたか。

勤務医時代は、主に新生児医療に取り組み、とくに大学病院では、急性期医療に特化した先進医療を実践してきました。急性期医療とはいえ疾患が長期化するケースもあります。多くは1年以内の通院で寛解するのですが、慢性化した障がいに対しては先進医療をもってしても恩恵を受けられないケースがあります。
また、このような状況では、些細な症状、訴えであったとしても外来対応に追われるクリニックが介入できないのが現状で、通院すら困難な患者さんが不自由な思いをして急性期医療を最優先する病院を受診されるか、次回受診まで我慢をされているというのが現状です。
一医師の立場からいかに弱者を支援できるのか。慢性疾患に対する適切な医療提供を模索するなかでわたしが思ったことは、直接的な対症療法はできなくても交わす会話のなかで症状を軽減させことができるのではということ、疾患に向きあう考え方や視点を変えていただくことで、精神的な負担を和らげることができるのではないかということが開業の起点となりました。

開業に際して、コンサルタントに期待されたサポート内容はなんでしょうか。

 自身の実力や仕事の完成度を高めるためには、同調する仲間だけではなく、他の専門性をもつ方や異なる意見を述べてくれ人の存在が重要だと考えていました。それは医療業界だけではなく、あらゆる分野にも共通することだと思います。
コンサルタントしていただくことは、わたしが描く開業のイメージを異なる視点から評価していただくことで、わたしにとっても客観性がもてることにつながります。ときには他分野の方からのダメ出しも必要だとも思っています。
 開業の意思を固めた当初は、勤務先と取引のあった企業にコンサルを依頼していたのですが、担当者がわたしのあらゆる考えに即座に賛同してくれるのですが、何か物足りなさを感じていました。たとえば開業物件の候補が複数あったのですが、すべてについて「その物件でいいんじゃないですか」といわれました。早く開業をさせ、自社の商品を納めたいだけではないかという疑心暗鬼にも陥ってしまいました。

医業総研を選ばれたのはどうしてですか。

 大学の同期でもある友人の森先生(こどもクリニック森 森保彦院長)が2013年に小児科クリニックを開業し成功されていたこともあって、いろいろと相談にものっていただいていたのですが、現在のコンサルタントに対する不安を相談したところ、森先生の開業をサポートした日本医業総研を紹介していただき、担当コンサルタントの山下さんにお会いすることになりました。
山下さんは初対面から信頼できそうだという印象を受け、わたしの考えを取り入れる場合でも、直ぐに同調することもなく、熟考したうえで慎重に言葉を選んで相談にのってくれました。
たとえば開業物件については、以前からわたしが目をつけていたものでしたが、山下さんはエリアの綿密なマーケティングを実施したうえで、初期投資、ランニングコスト、獲得可能な患者数などから数値的な根拠を示し「この物件なら十分に成功がみこめます」との判断をいただきました。開業後も、会計面のサポート、運営や人事などの相談に応じてもらっています。

事業計画で出された損益分岐となる患者数は?

 山下さんから提示された損益分岐となる1日の患者数は約40人でした。在宅医療を実施することは決まっていましたが、事業計画上は外来のみでの採算を前提とすることにしました。幸いにも順調な立ち上がりをみせ、開業初月には損益分岐点をクリアし、現在も1日40~60人台を維持しているうえで、多い日で100人以上の患者さんが訪れてくれています。患者さんが増えるのは喜ばしいことと感謝しつつも、患児やご家族との会話時間を大切にする医療スタイルを貫くために3診体制のなかで、ギリギリ実践していることが、ぜいたくな悩みだと思いつつも今後の課題だとも考えています。

在宅医療への取り組みについてお聞かせください。

 地域に根差した医療提供をコンセプトに開業をされる方が多いと思いますが、地域医療というテーマを掘り下げて考えたとき、クリックの外来であっても専門性を発揮し、通院が困難な患者さんにも通院と同等の医療を提供したいという結論を導きだしました。
 とはいえわたし一人の力で外来にくわえて在宅までを行うのは不可能です。同じ小児科医でもある妻が副院長としてサポートしてくれたうえに、私の同期の友人医師にも参加していただいたことで実現することができました。
 在宅医療では、子どもの場合、疾患の治療と同時にその背景を注視しなければなりません。そのためにはご家族との対話が重要になります。ご家族からは、子どもさんの症状や日常生活を聞くだけではなく、会話時の表情や雰囲気から、言葉に表れない“行間”を読み解くことがたいせつですが、身体表現性障害など原因が明らかでない症状では、とくに生活環境が大きく影響しているケースもあります。
学校でのいじめ、両親の不和、ネグレクト、経済的貧困などのほか、虐待という最悪のケースも考えられます。在宅医療では、子どもを取り巻くすべての環境からアセスメントし、必要に応じて保健所や学校などとの連絡を密に行い、行政機関を交えたカンファレンスによって情報共有を図っていかなくてはなりません。

現在、どれくらいの患者さんに在宅対応をしているのですか。

 現在、訪問診療をしている子どもは18人います。その他に少数ですが高齢者宅にも訪問を行っています。往診の約7割はご家族からの要請を受けたものですが、3割は地域の訪問看護ステーションやヘルパーなどからの要請で行っています。現在では医業収入の約25%を占めるまでに成長してきました。

発達障害が疑われるケースについては、どのようにお考えでしょうか。

 発達に問題があるのではというご家族からの相談は増えています。一般的に約5%の子どもに発達障害があるといわれていますが、相談にこられるのは子どもが学童期に入ってからというケースが大半です。
発達障害は1歳半健診でも判断がつくといわれていますが、3歳半の集団健診でさえ判断がスルーされているのが現実です。発達障害は、短時間の診察では診断が困難なことや精神科領域も含めた障害であることから、小児科医としては消極的になってしまうということがあると思います。他の疾患と同様に、発達障害も早期に医療介入が行われることによって症状は確実に改善されるのですが……。
現在の乳幼児健診のありかたそのものをみつめなおす必要性があると感じています。

クリニックとしての将来像についてのお考えは。

在宅医療に取り組んでいると、患児とは別に母親などご家族のメンタルにも接することになります。ご家族から伝わってくるのは、終わりのみえない介護生活からくる将来への不安や、介護に時間を費やすことで生じる社会との接点の希薄化にともなう焦燥感です。その方々は介護うつにかかる可能性もあります。そんなご家族に対していかに日常の負荷を軽減していただき、社会との接点を取り戻せるかが社会的な課題といえます。
個別のご家族だけでは負担になることでも、たとえば介護の悩みを共有する10人の方々が集まってお互いの患児の子どもについてともに考えることで、一人ひとりの負担は大きく軽減されると思います。また、ともに支えあう新しいスタイルの通所介護施設を開設し、介護をしながら職員としての報酬もえられるという行政としての仕組みがあってもいいのではないかとも思います。報酬の多寡の問題ではありません。また、営利を追求する事業モデルでもありません。介護をするご家族を人材化することで社会に参画している意識を高めることができ、生きがいややりがいにもつながるのではないかと考えています。

おおうえこどもクリニック
院長 大植慎也

診療科目
小児科

〒594-0031
大阪府和泉市伏見町3-3-8
TEL 0725-50-5535 FAX 0725-50-5536

院長プロフィール

医学博士
日本小児科学会専門医
日本周産期新生児学会専門医(新生児学)
新生児蘇生法専門コースインストラクター
エピペン資格医

1993年 大阪医科大学卒業
   大阪医科大学附属病院小児科入局
1995年 大阪医科大学大学院 小児科学 入学
1999年 大阪医科大学大学院 小児科学 卒業
2000年 清恵会病院 小児科勤務
2001年 八王子小児病院(現東京都立医療センター)新生児科勤務
2002年 大阪府済生会吹田病院 小児科及びNICU勤務
2004年 大阪医科大学 小児科及びNICU勤務
2013年 東海大学病院 小児科 講師
2014年 おおうえこどもクリニック 開院

 

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