川崎沼田クリニック

沼田真一先生 インタビュー

先生
沼田真一 院長

患者さんの自由な想像を促すメッセージ《こころ、こんにちは。》

神奈川県川崎市は、全国20の政令指定都市のなかで最も狭い面積ながら、144万人を超える人口数は、常に上位に位置する。多摩川を境に東京都と隣接することから都市化のスピードは速く、横浜市とは異なる文化圏が形成された。昼夜間わず人通りが絶えない駅周辺の商業地域、丘陵部に広がる閑静な新興住宅街、東京湾岸の大規模な重工業地帯と多面な顔を持つのも特徴といえる。また、平成9年、東京港アクアラインの開通により千葉県(木更津市)との大動脈が整備され、交流人口や産業振興の活性化を生んだ。

必療内科・精神科を標榜する『川崎沼田クリエック』は、平成25年4月に、川崎駅から徒歩2分の商業地に建つテナントビル4階に開業した。

■開業を意識されたのはいつからですか。

研修医の頃から、将来は開業医にと考えていましたし、病院の同僚たちにも伝えていました。前職(医療法人社団學風会さいとうクリニック)に移る際も、予め開業することを条件にしました。

■川崎は、当初からの候補地だったのですか。

川崎には10年以上住んでおり、知人も多いですし、地の利という意味では候補地の一つでした。それを前提に、日本医業総研から薦められた物件での開業となりました。

■日本医業総研の開業サポートを受けることになったきっかけは何でしょうか。

ある新聞社が主催する開業セミナーに参加したときに、日本医業総研に興味を持ったのがきっかけです。他のコンサル会社を知らなかったわけではありませんが、開業への意識の高まりとイメージが合致したところでタイミング良く出会ったのが医業総研でした。開業準備を医師のカだけで行うのは不可能でしょう。多くの関係業者さんの協力も不可欠ですし、業者選定にも客観的な判断が必要になります。当然、お金の問題も絡んできます。医業総研との最初の面談で、そうしたことに、丁寧に対応してくれるのではないかと感じるものがありました。

■先輩開業医へも、相談されましたか。

ベテラン開業医からは、アドバイスも苦労話も聞かされました。しかし、人の心理として、誰しも自分のやってきたことを正当化したいものです。「開業当初は大変だ」、「地域に根付くには3年はかかった」といった苦労話は、実は後悔や正義感の表れで、客観性がありません。正直なところ、今の時代の開業戦略の立て方とは違うなと感じました。

医師をおだてない、医業総研のコンサル

■医院経営塾に参加された印象は、いかがでしたか。

全体的に、こなれているなという印象です。経営の素人を相手に、よく噛み砕かれた内容で、地に足の着いたものです。それでいて、経営ノウハウを習得するというより、開業のカがあるかどうかを試されるセミナーのようにも感じました。

■その試されるということについて、もう少し、具体的にお聞かせください。

悪しき習慣とでもいうか、医師は他人から持ち上げられることに慣れていて、無意識にそれを期待している部分もあります。ところが、医院経営塾の講師陣は、まず参加医師をおだてませんし、開業への過剰な期待も抱かせません。逆に、医師に開業への志を問いかけ、クリアすべき課題を次々にぶつけてくる。参加医師にとって眉をひそめるような指摘もありますが、それを謙虚に受け入れられるようでなければ、開業医には向かないということだと私は解釈しました。医院経営塾は、開業のための「踏み絵」ともいえますね。

■医業総研のコンサルティングの評価はどうでしょう?

基本は医院経営塾と同様に、安易に医師を喜ばせるような言動をしないのが魅力です。また、ある経営課題に対して、コンサルの視点、会計事務所の視点、患者さんの視点など多面的な視点から答えを導き出してくれます。経営者から見たら、逆説的なものもあるのですが、そうした多様な視点が経営にもっとも大切なのだと実感しますし、これまで医師とばかり付き合ってきた者にとっては新鮮に感じます。

診察室だけが診療の場ではない

■内装を見ると、上質感の一方で、装飾や演出が非常に控えめな印象を受けるのは意図してのことですか。

こだわりとしては、あえて、特定の色をつけなかったことです。空間的な主張を避け、装飾品どころか、時計すら設置していません。窓面は、ブラインド越しに自然光を採り入れ、患者さんが、落ち着いて自分を見つめ、自由な発想ができる空聞を意識しました。

■《こころ、こんにちは。》のキャッチフレーズが印象的ですね。

広義な意味での診療コンセプトをコピー化したもので、患者さんへの呼びかけでもあります。でも、患者さんには、あえてその意味を説明しません。こうしたキーワードは、自由に想像できる言葉に留めておくことが重要だと考えます。広告効果という一面もありますが、医師のカウンセリングと同様に、さまざまなファクターで患者さんの想像力を引き立てることが重要です。これは、空間作りにも共通しますが、診察室だけが診療の場ではありません。《こころ、こんにちは。》に何かを感じていただけたところから、無形の診療がスタートしていると考えます。

落語のメソッドは医療にも通じる

■落語に造詣が深いと伺いましたが。

以前、真打ちを招いた落語講座に通った時期がありますが、私にとっては趣味と同時に、医療にも通じる興味探い研究材料でもあります。笑いというのは、噺家が演じる人物像や情景に観客が何を想像するかの結果です。この感覚は、観客の属性や生活環境によって異なるものです。演目に演者自身の個性をどこまで出すかといった工夫もするわけですが、それでも笑いを取れなければ、演者は素直に負けを認めなければならない。この潔さや謙虚さが好きですね。とかく医師は自分が実践している診療が正しいと思い込みがちですが、噺家に倣ってもっと柔軟に、謙虚な姿勢で患者さんと向き合うべきだと考えます。特に私が扱う患者さんの特徴は、訴えや表現に個別性が高いことです。同じ疾患名が疑われても、患者さんの想像力を引き出すカウンセリングはそれぞれに異なるわけです。

■開業成功への手応えのようなものは感じられますか。

開業から日が浅いので、まだ手探りの部分があります。医業総研にも引き続きサポートしてもらっていますが、数字的にはほぼ計画通りです。手応えとまでは言えませんが、都内の西麻布にあった前職のクリニックで診てきた患者さんが、わざわざ川崎まで足を運んでくれたのは嬉しい誤算です。一定の時聞はかかるでしょうが、私たちの医療への取り組みが浸透すれば、何とかなるでしょう。

■開業医になることの心構えとして大切なことは、何だとお考えですか。

クリニック開業の環境が厳しくなっていることは事実ですが、それでも一般的な事業に比べれば、成功率は高い業種といえます。でも、立地条件と診療科がマッチすれば、ある程度事業が成り立ってしまうのはどうだろうかと疑問に感じます。医師が患者さんの声、職員の声に気付かずに、自分の診療方針をゴリ押しするだけでは、持続性や成長性は望めないように思われます。こうした視点も、医院経営塾で学んだことの一つかもしれませんね。

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