2011年8月15日

独立を成功に導く開業指南 事例に基づく人材育成 第10回

コミュニケーションの場の醸成と活用

短時間でもコツコツと「朝礼」を積み重ねていけば、組織全体に良い効果をもたらす

コミュニケーションは組織の“血流”

日々、欠かさずに朝礼を行っている診療所は少ないと思われるが、
筆者はたとえ1〜2分の短い時間でも必ず実施することを院長におすすめしている。
開院前の忙しい時間帯にわざわざ時間をとって朝礼を行う意義は十分にあると、私は考えている。
院長が考える理想の診療所像を、院長からの講話を通じてスタッフ全員が共有していくための場として有効であると同時に、
院長とスタッフ間のコミュニケーションを円滑にするための場という側面もあるからだ。
院長は、自院の経営理念や目指す目標を策定するだけではなく、スタッフ全員に深く浸透させなければならない。
2010年1月に日本航空のCEOに就任した稲森和夫氏は、自著のなかでリーダーの資質をこう述べている。
「部下に明確な目標を与え、それを達成する方法を部下に知らしめ、達成しなければならないと思わせなければならない」
この言葉の裏には、部下との良質なコミュニケーションなくして目標は達成できないという意味合いがあると、私は解釈している。
人間の体にたとえるなら、院長とスタッフ間のコミュニケーションは人材育成において“血流”のようなものであり、流れが悪いと健康は維持できない。

朝礼と個別面談が相乗効果

朝礼をスタッフとのコミュニケーションの場として有効活用している事例を紹介しよう。
O医院では毎朝、院長がテーマを決めてスピーチを行う。
それに対してスタッフが自分の考え方や感想を毎回、持ち回りで述べていくという進め方である。
テーマは多岐にわたり、好きなテレビ番組など、仕事と直接関係のないことを話す時もあるそうだ。
院長の人としての親密度が増すとともに、各スタッフの考え方についての理解も深まり、
「確実に組織が活性化してきた」と、院長は胸を張る。
また、同院では月1回のペースで全スタッフとの個別面談も実施している。
個別面談は、診療所の運営に関する意見の集約と各人の仕事に対するモチベーションの把握を目的として始めたものだが、
朝礼の効果か、今では各スタッフと本音ベースで話し合える状況にあるという。
院長が考える自院の将来像をスタッフに語ったり、外部研修への参加を提案したりスタッフのスキル向上に対する動機付けでも成果が出てきている。
これらは、院長とスタッフ間の良質なコミュニケーションがベースになければ、一方通行的な話になりがちだ。
コミュニケーションを改善する方法はいくつか考えられるが、シフト制を導入していると全員が一堂に会するのは難しい。
短時間でもコツコツと積み重ねていける朝礼は、漢方薬のようにじわじわと組織全体に良い効果をもたらすのである。

植村智之 うえむら・ともゆき
株式会社日本医業総研東京本社シニアマネジャー。過去300件の医院開業を成功に導いた同社の創業メンバー
自身も50件以上の開業に関与し、そのすべてが軌道に乗っている。スタッフのモチベーションアップ研修、労務トラブル解決対策などに定評がある

 

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