2011年8月15日

独立を成功に導く開業指南 事例に基づく人材育成 第2回

コマの原理にみる組織の活性化

元気のある診療所を創るには経営理念の確立と目標の共有、良き人材教育が不可欠

開業前からスタッフ像を明確化

筆者は開業後に行う患者の来院動機調査を、その組織の人材育成がうまくいっているかを知るためのバロメーターにしている。
スタッフがいきいきと働いている印象の強い診療所ほど、来院動機のなかに占める口コミの割合が多いからだ。
ここで昨年、内科の診療所を開業したT院長の事例を紹介する。開業当初200人ほどであった1カ月当たりの新患数が、
半年後には300人を超えた。患者の来院動機を見ると、開院初月は約15%であった口コミ率が、半年後には約30%となっていた。
まさに口コミが原動力になって新患数が増えるという、理想的なパターンである。
私は1年近くT院長の開業コンサルティングにかかわり、そのなかで強い印象を受けたことがある。
それは、ご自身がどのような医療を提供したいのか、そのためにはどのようなサービスを実施するべきか、
そして、それを実現するにはスタッフはどうあるべきかのお考えを、開業準備の比較的早い段階からしっかりとおもちになられていた点である。
私の経験則では、「どのような医療とサービスを提供したいのか」をお考えの先生は多いのだが、理想とするスタッフ像を
この時点で明確にしておられる方は意外と少ない。
要するにT院長は、ご自身の理想の医療を提供していくために自院のスタッフが重要な役割を担うこと、
その組織を活性化させることが院長としての重要な責務であることを知っておられたのである。

経営理念を「軸」に開業する

当社が勤務医の方々を対象に行っている勉強会「勤務医のための医院経営塾」のなかで、筆者は活性化した組織を
「速く回転しているコマ」にたとえて説明している。
コマを速く回転させるためには3つの条件がある。1つ目は回転軸がしっかりしていること、2つ目は回転方向が同じであること、
そして3つ目は回転力が高いことである。この条件が揃った時に、コマは最も速く回転する。
これを組織に置き換えると、回転軸は「経営理念」であり、院長がどのような医療やサービスを提供したいのかを明確にしていることである。
回転方向は「目標」であり、スタッフが1つの目標に向かってチームワークを発揮していることである。
回転力は「人材の質」であり、良い採用と教育がセットで行われていることである。
元気がある診療所は、この3つの要素が高いレベルで実現できている組織である場合が多い。そして、その推進役が院長自身なのである。
特に「経営理念」を明確に打ち出すことは、人材育成だけに留まらず、開業準備のすべての工程において「軸」となるものである。
次号では、この「経営理念」をさらに掘り下げ、人材育成のなかでの「経営理念」の重要性を説明したい。

植村智之 うえむら・ともゆき

株式会社日本医業総研東京本社シニアマネジャー。過去300件の医院開業を成功に導いた同社の創業メンバー。
自身も50件以上の開業に関与し、そのすべてが軌道に乗っている。
スタッフのモチベーションアップ研修、労務トラブル解決対策などに定評がある

 

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