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コンサル事例

B内科 地主側の都合で開業が遅れるハプニング - プレハブの仮診療所を開設、2ヶ月間を凌ぐ

コンビニを取り壊し補強工事によりクリニックを建てるプランが浮上

A市は近年、山地の開発が進められ、急速に宅地が造成。団地やマンション、一戸建て住宅の建設が増え、ベッドタウンとして急速に発展してきた。A市の中小民間病院であるM病院に長年勤務し、患者から人気のあったB先生は退職を決意し、内科クリニック開業による独立を目指していた。T病院近くのコンビニエンスストア駐車場横にある立地が、遊休地として空いていたため、B先生は当該地を借りて、新しくクリニックを建設したいと熱望された。
相談を受けた猪川は、B先生に代わって地主との交渉を開始。コンビニの経営者が当該立地の地主であり「OK」は貰ったものの、
そのコンビニを建てた時の工務店を使って欲しいとの要望だった。その工務店はA市で建売の住宅を数多く手がけ、信頼できる会社であったことから、条件を受け入れることとした。
当該立地の眼前には大きな団地が屹立し、周囲にも住宅が密集。住宅地や団地の入り口部分に位置し、多くの住民が通らざるを得ない場所にあったため、動線を考えるとこれ以上の好物件は見つけにくい。また当該立地の裏手にはM病院が在るが、B先生はM病院のエース格の医師で外来だけでなくオペも担当しており、患者からの信頼度は高かった。
”地の利”を考慮すると、M病院の近くで開業することが有利であることは間違いない。多くの好条件が重なり、B先生はこの地でのクリニック開設を強く希望していたのだ。
ただ工務店との話し合いの中で、先方は「地主は高齢なので近々、息子さんが継がれる予定だが、コンビニの施設が老朽化しているため建て替えねばならない。コンビニも少し広いスペースに新しく造りたいとの意向があるため、駐車場と隣の遊休地に新しいコンビニを建設し、クリニックは現存のコンビニを取り壊して、その跡地に造られてはどうか?」と、プランの変更を提案された。
反対する強い理由も無く、B先生の退職時期に合わせて新しいクリニックがオープン出来るように、新しいコンビニもクリニック開業前に完成させ、旧コンビニの商品を迅速に移行させる段取りで、頑張りましょうと言うことで合意に至った。

8坪のスペースに必要最低限の機能を整備
変則的な開業スタイルでのスタート

スケジュール通りに計画が進めば、何の問題もない開業であった。ところが地主は息子がコンビニを継ぐと一方的に思い込んでいたようだが、息子と父親との間の意思疎通が十分ではなく、息子は最初の約束を翻して「俺はコンビニを継ぐつもりはない!」と、突然言い出したのだ。
B先生や猪川は全くあずかり知らない話である。
当初は半年から8ヶ月位のスケジュールでクリニックを建てる予定だったが、地主親子の意見のくい違いで
--新しく造るコンビニの着工時期が未知数→コンビニの商品の移転が出来ない→クリニックの着工も遅れる--
という事態を招いてしまった。

最終的には息子が折れてコンビニを継ぐことになるのだが、この結果、開業時期が約2ヶ月間遅れることになったのだ。B先生にとっては、全く不可抗力のトラブル発生としか言いようが無い結果となった。2ヶ月の空白期間が出来たため、その間、無収入となり、経済的損失は計り知れない。
B先生はM病院には半年前から開業の意思を示し、筋を通した上で辞める意向を伝えていたが、病院にとってはエース格の医師に抜けられるのは“痛手”であり、何度も返事を引き延ばしてきた経緯がある。それでも意志を貫いたB先生としては、今さらM病院側に頭を下げて「2ケ月間勤務を継続したい」とは頼み難い事情があった。
猪川は交渉窓□である工務店に対して、地主の「家庭の事情」で開業が遅れることの責任を問うたが、工務店も言を左右にするばかりで、らちが明かない。
そこで両者が対処策を十分に協議した結果、猪川は地主が別に所有していた駐車場に、プレハブ建ての仮診療所を建てることを提案した。その費用は工務店に「負担してくれ!」と交渉。全額とはいかなかったが、折半と言う形でコンセンサスを得た。
仮診療所は8坪しかなく、診療室が一つ、受付のカウンターが一つ入るだけのスペースだ。待合も2席だけ、薬剤は調剤薬局が宅配で対応するという、変則的な開業スタイルだ。ただ診療所として最低限必要な機能は整備した。

保健所には、まず仮診療所で開設届を出し、2ヶ月後に廃止届を出す。その後、新しい診療所で開設届を提出するという複雑な手続きを踏んだ。
保険医療機関の認可は遡及届けを出して、継続する手順だ。

仮診療所が思いもよらぬ大盛況
現在は1日100名を超える外来患者数

驚いたのは仮診療所にも関わらず、最初の1ヶ月間は1日平均60人の外来患者が来たことだ。
その月は60万点以上の診療報酬が確保出来、大盛況の出足だった。やはりM病院で人気の医師が新規開業したという情報を聞いて、多くの患者が押し寄せたのだ。
8坪しかなく待合も2名しか待機出来ないので、次々と来院する患者をさばくのが大変だった。ただ猪川は新しいクリニックが開設されてから、成功する手ごたえを「掴む」ことが出来た。地主親子の調整がついて、2カ月後にはようやく旧コンビニ跡地に新規改装で、B内科クリニックをオープンすることが出来た。
開業の初期投資は約6000万円。今年で開業7年目だが外来患者は1日100人を超え、外来診療の合間の午後1時から夕方まで在宅医療を実施しているため、B院長は“八面六雷”の忙しさだ。
スタッフは看護師3名、受付1名はパート。検査技師も1名雇用し、B院長は出来る限り診療に専念出来る体制を取っている。
”怪我の功名”ではないけれど、結果的に仮診療所の開設がプレ開業期間として、地域住民への広報と診療所経営の手順を把握する良い機会を生み出し、功を奏したと言えそうだ。

コンサルタントの目

●アクシデントによる開業遅れには「最善の策」を探る
●トラブルが起きた時は「責任の所在」を明確にし、主張すべきことは「主張」する
●長年勤務していた病院の近くで開業するのは有利

 

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